戦場、被災地での作戦行動中、または訓練中に取るために配給される食糧のことを「戦闘糧食」と呼ぶ。英語では、combat rationといい、日本では略してレーション、また、最近は“ミリメシ”と呼ばれることが多いようだ。
かつては缶詰が中心の“缶メシ”と呼ばれ、隊員の間ではあまり評判の良くなかった陸上自衛隊のミリメシだが、2022年4月に、約10年ぶりに大リニューアルされて、格段においしくなったと話題になっている。そこで、その魅力を一気に紹介しよう。
人気フランス料理店のシェフが実食！
かつての主流だった缶詰は2017年ごろに姿を消し、レトルト食品が中心に。近年は水で発熱する特殊な容器も登場して温かい料理を食べられるようになった。
そして22年のリニューアルではメニューが大幅に増えた。和・洋・中のジャンルを中心に全21種も展開！ 肝心の味はどうなのか、気になるところだ。そこでフランス料理店「ジュー ドゥ マルシェ」の榎本奈緒子シェフに食べてもらい、3段階で評価してもらった。さて、ジャッジは桜マークいくつ？
「どのメニューもクオリティーが高く、感銘を受けました」
【ジュー ドゥ マルシェ 榎本奈緒子】
1976年、神奈川県生まれ。著名シェフの料理書に衝撃を受け、料理人を志す。東京・六本木のフランス料理店で修業したのち渡仏、ミシュランの星付き店数店で計6年半の修業を重ね帰国。都内の数店で料理長を務め独立、2015年に「ジュー ドゥ マルシェ」を開業。最高の料理とワイン、心地よい空間で「特別なひととき」を提供
どこでもこの味が食べられるのは驚き
「お客さんとコミュニケーションを取りたいから」と、カウンターテーブルを設置中の店内で試食を実施。ミリメシの試食を、「とても珍しいものが食べられると思って受けました」と照れながら答えてくれた榎本シェフ。少量ずつ味見しながら、慎重に言葉を選びながら評論してくれました。
ビーフシチュー
具だくさんのビーフシチューに、クラッカー8枚とポテトサラダを合わせて
コクや深みをしっかり感じる味でした。市販のレトルト製品よりレベルが高いのではないでしょうか。牛肉がやわらかく、ニンジンやジャガイモ、大豆などの具材も食べ応え十分。
●榎本シェフの評価：桜３つ
ビーフの確かなコクや深みを感じる
ベーコンポテト
ベーコンの香り漂うジャガイモとシーベリー（注：ユーラシア大陸全域に自生しているオレンジ色のグミ科の植物。栄養バランスに優れ、一般的な食品よりも栄養価が高く「スーパーフード」と呼ばれる）入りのパン、五目チャーハンのセット
ベーコンポテトは食べ応え抜群。ジャガイモがきれいに残り、ベーコンの味や燻蒸香も出ています。五目チャーハンはこれだけ中華の味付けなので、単品で食べるほうがよいかも。
●榎本シェフの評価：桜２つ
パンチがあり食べ応え十分
ボロニアソーセージ
手のひら大のぶ厚いソーセージをメインにチキンライス、ドライアップル入りのパンを添えて
肉厚でインパクトがすごいですね。「肉を食べている」感が味わえるメニューで、ちょっと背徳感のあるジャンクなおいしさです。パンには甘く煮たリンゴが入っていてデザートに近い味です。
●榎本シェフの評価：桜２つ
背徳感のある味にハマる！
ナポリタン
ペンネ入りのトマトソースとチキンライスに半熟風のトロトロ卵ソースが付く
ナポリタンソースはタマネギたっぷりで食べ応えはありますが、独特の甘みや油脂感が気になりました。パスタではなくチキンやご飯を添え、セットの卵ソースと合わせ「オムライス仕立て」にしてはどうでしょうか。
●榎本シェフの評価：桜１つ
パスタよりご飯仕立てが合う？
さばと大豆のトマト煮
サバと大豆がたっぷり入ったトマト煮をメインに、白飯とドライカレーがセット。梅シソふりかけも付属
サバは甘めのサバ缶のような食感と味付けです。ドライカレーはスパイス感が強く出ていて香り高くおいしいです！総合的には完成度が高いメニュー。これが野外でも食べられるのはすごい。
●榎本シェフの評価：桜３つ
香り高いドライカレーが美味！
＜文／浅野陽子 写真（榎本奈緒子）／山田耕司（扶桑社） 写真（料理）／林紘輝（扶桑社）＞）
（MAMOR2022年11月号）
