自衛隊に採用された後、自衛官となるために必要な教育訓練を受ける者を「自衛官候補生」という。陸上自衛隊の教育隊で「自衛官候補生」(以下、候補生)は、約3カ月の教育期間にどのような訓練を受けるのか。前回の採用試験、入隊式に続き、今回は「基本教練」から「座学」までの流れを、時系列に沿って紹介する。
4月4日 基本教練:キビキビした動きを学ぶ
個人・部隊での基本的な動作を覚えるのが基本教練と呼ばれる訓練。「気をつけ」の号令で行う不動の姿勢をはじめ、休め、右向け右、敬礼など自衛官として必要な動きを厳しく教え込まれる。
4月10日 体力錬成:自衛官生活に必要な体力を付ける訓練
体力の錬成は自衛官としての大事な仕事。特に腕力、腹筋、持久力が鍛えられる。最初は1回もできなかった候補生も、繰り返し訓練し、できるようになるという。
年一回の「体力検定」とは?
陸・海・空の各自衛官は年齢や階級に関係なく年1回必ず「体力検定」を行い、設定された基準を突破しなくてはならない。測定種目は、腕立て伏せ、腹筋、3000メートル走など。
4月15日 小銃の分解・結合:安全に留意して学ぶ
小銃の仕組みを理解し、正確かつ確実に分解・結合ができるようになるための訓練。銃を使う際の危険防止や、使用後の手入れを自分でできるようにするという意味もある。
「小銃の貸与式」で感じる“重み”
教育隊長などから候補生に89式5.56mm小銃を貸与する儀式。候補生は小銃を受け取り、銃に刻印された番号を読み上げる。多くの候補生が、初めて銃を手にするとき、約3.5キログラムの重量より、殺傷力のある装備を手にする“重み”を感じるそう
4月23日 催涙ガス訓練:防護マスクの機能を身をもって体験
防護マスクの機能と正しい着用法を学ぶ訓練。催涙ガス(訓練用・人体に無害)で満たされたテントに入る。テント内でマスクを外すと催涙ガスの刺激で涙や鼻水が止まらない状態になることを体験。
4月23日 野営訓練:体を休める場所を自分の手で作る
陸上自衛官は演習や訓練のため屋外で寝泊まりすることもある。その際は天幕と呼ばれる組み立て式のテントを使用することがある。任務が滞らないよう安全かつ迅速に天幕を張る訓練を行う。
4月27日 掩体(えんたい)構築訓練:ただの穴掘りではない訓練
自分の身を守りながら、射撃や監視ができる穴(掩体)を掘る訓練。自分を守る穴を掘るためのシャベルなどの使い方を学ぶ。訓練で掘った掩体は埋め、何度も作り直す。
5月9日 座学:自衛官として必要な知識を講義で学習
自衛隊の任務や権限などを定めた法律である自衛隊法や、小銃などの火器を取り扱うための法律など、自衛官として必要な知識を学習する座学。教育期間の最後には筆記試験も実施される。
(注)日付は時間の流れを示す仮の日付で、写真はイメージとして2020、21、22年各4月に入隊した隊員の教育訓練の写真を使用
(MAMOR2022年10月号)
<文/臼井総理 撮影/村上淳>