自然災害が発生した際に、被災地でさまざまな支援活動を行う「災害ボランティア」。阪神・淡路大震災で多くの支援者が集まったことから、「ボランティア元年」といわれる1995年以降、大災害が発生すると、被災地の復旧・復興のため、ボランティアが重要な役割を担うようになっている。
災害発生時のボランティアの意義を全国社会福祉協議会の小川耕平氏に聞いた。
【小川耕平】
全国社会福祉協議会 災害福祉支援活動推進室参事。全国組織の職員として平時は災害支援の仕組みづくりを行い、災害時は被災地の活動を支援している
災害ボランティアの支援は長期間にわたって必要
活動内容は、災害の種類や被災地の状況などによって異なる。また、発災からの時間の経過によって、被災地がその時々で必要としていることは変化する。
例えば、被災して間もないころは、がれきの撤去や分別、家の中にたまった泥を出す泥出しなどの活動がメイン。だが、時間がたつにつれて、被災者の困りごとの相談への対処や子どもの学習支援などへと移行していく。このように、ボランティアによる支援は、被災直後だけでなく、長期間にわたって必要とされているのだ。
ところが、ボランティアへの参加希望者は、災害発生後の2~3週間をピークに、徐々に減少していく傾向にあると全国社会福祉協議会は伝える。息の長い支援のため、被災直後だけでなくボランティアが減るころに参加するなど継続した支援を行いたい。
専門スキルを生かした「プロボノ」が復旧の力に
「プロボノ」とは、職業上の専門知識やスキルを生かしたボランティア活動のこと。重機や電動工具を扱えたり、高所作業ができたりする建築技術者などが、NPO活動に参加し被災地で力を発揮している。人力では難しい土砂の撤去や被災した家屋の解体、屋根のブルーシート張り、床板剥がしなどの作業を担っているのだ。
プロボノは東日本大震災以降に注目されるようになり、災害時に活動を積み重ねるなかで、そのノウハウを継承しながら今後も活躍していくことが期待されている。
被災地ではどんなボランティア活動がある?
泥出し
土砂災害や水害などで、屋内や庭に流れ込んだ土砂を撤去する「泥出し」の作業は、スコップで泥をすくって土のう袋に入れ、一輪車で回収場所まで運搬する、というのが一般的な作業の流れだ。
床下にも泥が残っている場合は、床板を剥がし、床下に潜って泥を撤去。水洗いした後に乾燥させ、消毒を行うという作業をする。床材を修復できる専門スキルのある建築技術者が行うことが一般的だ。
家財の搬出・分別
水害の場合、浸水した家から、土砂で汚れた家財を搬出する必要がある。まず、廃棄処分となる家財と、清掃・乾燥などをすれば使用できるものを分別。廃棄処分となる家財は災害廃棄物の仮置場まで運ぶ。分別にあたっては、勝手に廃棄するかどうかを判断せず、家財ごとに家主の意向を確認する必要がある。
家屋の清掃
泥がこびり付いた家屋の壁や柱、床などを清掃。雑巾や高圧洗浄機などを使用して洗浄し、なるべく災害が起こる前と同じ状態に近づけるようにする。また、使用可能な家財も清掃・乾燥した後、屋内に運び入れる。
救援物資の仕分け
全国から被災地に届けられる救援物資を仕分ける作業も、重要なボランティア活動の1つ。食料品や日用品、衣類、下着類、布団・毛布、タオル、ベビー用品、医薬品……といったように、アイテムごとに仕分けをする。救援物資の仕分けは、被災地に届ける前に最寄りの自治体などでも行われることがあるので、現地には行けないという人も参加可能だ。
炊き出しの手伝い
災害の種類にかかわらず、調理器具が使用できなかったり、食材が不足したりして食事がままならなくなった被災者に食事を提供する、炊き出し支援。マスクやエプロンの着用、こまめな手指消毒、検温などの衛生管理をしっかりしながら、調理や配食を行い、温かい食の提供を通して被災者に少しでも元気になってもらうための活動だ。
災害ボランティアセンター運営の手伝い
NPOや災害ボランティアの経験者が災害ボランティアセンターの運営を手伝うこともある。個人ボランティアの受け入れ業務や、ボランティアと被災地の要望とをつなぐ調整作業、資機材の貸し出し、活動報告を受けたうえでの改善点の検討など、災害ボランティアセンターで、ボランティア活動を支援する裏方としての業務をサポートする。
引っ越しの手伝い
自宅を失った被災者が避難所から仮設住宅へ引っ越しする際の手伝いをするボランティア活動もある。事前に被災地のボランティアセンターが、引っ越しをする家の家財の種類や量を確認。転居日に家主の指示のもと、必要な資機材を使った家財の搬出から仮設住宅への運搬、搬入まで全ての作業をカバーする。
(MAMOR2022年9月号)
<文/魚本拓 写真提供/全国社会福祉協議会>