•  最近、われわれが耳にする報道には、聞き慣れない「ミサイル」が増えている。北朝鮮の列車や海中から発射されるミサイル、ロシアがウクライナ侵攻で使用した新型ミサイル、それに対抗するアメリカ軍から供与された対戦車ミサイルなどなど。

     では、日本の自衛隊はどんなミサイルを所有しているのか?それらを正しく知ることから、ミサイルを理解し日本の防衛を考える糧にしたい。

    ミサイルの名称を見れば目的が分かる

     陸・海・空各自衛隊の所有するミサイルのうち、主な顔ぶれを並べた。自衛隊ではミサイルのことを「誘導弾」と呼ぶ。

     一番大きな誘導弾でも全長6.5メートルほどで、外国の全長20メートル前後の弾道ミサイルに比べれば、圧倒的に小ぶりだ。それぞれの名を見れば、どこからどこに向けて発射されるのかが明確に分かる。

     例えば、地上から地上に向けて発射される誘導弾を「地対地」と表し、地対地誘導弾の略称は「SSM(surface-to-surface missile)」となる。同様に航空機から地上に向けて発射される誘導弾は「空対地」と表し、略称は「ASM(air-to-surface missile)」、艦艇から地上に向けて発射される誘導弾は「艦対地」と表し、略称は「SSM(ship-to-surface missile)」となる。

     目標が艦艇になれば「地対艦」(SSM)、「艦対艦」(SSM)、「空対艦」(ASM)となり、目標が航空機になれば「地対空」(SAM)、「艦対空」(SAM)、「空対空」(AAM)となる。

    陸・海・空各自衛隊の持つ主なミサイルを紹介

    画像: 陸・海・空各自衛隊の持つ主なミサイルを紹介

    1:弾道ミサイル防衛用誘導弾スタンダード・ミサイル(SM-3・海上自衛隊)

    <SPEC>全長6.58メートル、直径0.53メートル、速度マッハ3以上、射程範囲1200キロメートル以上

    2:地対空誘導弾改良ホーク(改善Ⅲ型・陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約5メートル、直径約0.35メートル、重量約600キログラム

    3:12式地対艦誘導弾(陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約5メートル、直径約0.35メートル、重量約700キログラム、射程範囲百数十キロメートル

    4:地対空誘導弾ペトリオット(PAC-3MSE・航空自衛隊)

    <SPEC>全長約5メートル、直径約0.3メートル、重量約400キログラム、速度数マッハ、射程範囲百数十キロメートル

    5:03式中距離地対空誘導弾(陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約4.9メートル、直径約0.32メートル、重量約570キログラム

    6:艦対空誘導弾スタンダード・ミサイル(SM-2・海上自衛隊)

    <SPEC>全長4.72メートル、直径0.34メートル、速度マッハ2以上、射程範囲30キロメートル以上

    7:艦対艦誘導弾ハープーン(海上自衛隊)

    <SPEC>全長4.57メートル(ミサイルを打ち上げる際に必要となる推力を得るために外部に設置されるブースターを含む)、直径0.34メートル、重量667キログラム(ブースター含む)、射程範囲90キロメートル以上

    8:93式空対艦誘導弾(ASM-2・航空自衛隊)

    <SPEC>全長約4メートル、直径約0.4メートル、重量約530キログラム

    9:短距離艦対空誘導弾シー・スパロー(ESSM・海上自衛隊)

    <SPEC>全長3.7メートル、直径0.2メートル、速度マッハ2以上、射程範囲18キロメートル以上

    最も小ぶりな誘導弾は?

    画像: 最も小ぶりな誘導弾は?

    10:99式空対空誘導弾(AAM-4・航空自衛隊)

    <SPEC>全長約3.7メートル、直径約0.2メートル、重量約220キログラム

    11:短距離艦対空誘導弾シー・スパロー(RIM-7・海上自衛隊)

    <SPEC>全長3.66メートル、直径0.2メートル、速度マッハ1以上、射程範囲7キロメートル以上

    12:04式空対空誘導弾(AAM-5・航空自衛隊)

    <SPEC>全長約3.1メートル、直径約0.1メートル、重量約95キログラム

    13:11式短距離地対空誘導弾/基地防空用地対空誘導弾(陸上自衛隊・航空自衛隊)

    <SPEC>全長約2.93メートル、直径約0.16メートル、重量約103キログラム

    14:81式短距離地対空誘導弾(陸上自衛隊・航空自衛隊)

    <SPEC>全長約2.7メートル、直径約0.16メートル、重量約100キログラム

    15:96式多目的誘導弾(陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約2メートル、直径約0.16メートル、重量約60キログラム

    16:79式対舟艇対戦車誘導弾(陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約1.57メートル、直径約0.15メートル、重量約33キログラム、速度約マッハ0.6

    17:91式携帯地対空誘導弾/93式近距離地対空誘導弾(陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約1.43メートル、直径約0.08メートル、重量約11.5キログラム

    18:中距離多目的誘導弾(陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約1.4メートル、直径約0.14メートル、重量約26キログラム

    19:01式軽対戦車誘導弾(陸上自衛隊)

    <SPEC>全長約0.97メートル、直径約0.14メートル、重量約11.4キログラム

    注:ミサイルのイラストは写真などをもとに描き起こしたもので、実物を正確に再現したものではありません。また、模擬弾の色付けをしているものもあります。自衛隊のミサイルデータについては『自衛隊装備年鑑(2021-2022)』を基にしており、射程範囲や重量などの記載がないものも基データに準じています

    <文/MAMOR編集部、イラスト/松岡正記>

    (MAMOR2022年8月号)

    世界のミサイル百科事典

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