日本には多くの島があるため、自衛隊は主に島に近づき攻撃を仕掛けてくる敵などを想定し、さまざまな防衛対策を講じている。また、遠く離れた場所から日本に向けて発射される各種ミサイルに対しても警戒が必要だ。国防の危機が訪れたとき、領土を守るために自衛隊はミサイルを発射する!
どんな高性能なミサイルも、それを適切に運用してこそ国防の任を果たせるというものだ。最前線でミサイル運用の任務に就く自衛官たちの声に耳を傾けてみた。
ミサイルを扱う隊員間の信頼関係も大事
【木戸良蔵2等陸尉】
熊本・健軍駐屯地に本拠を置く第5地対艦ミサイル連隊第4射撃中隊の射撃小隊長を務める。中隊運用訓練幹部として運用・訓練全般を統括し、中隊長を補佐する役割も担う
「私の隊は12式地対艦誘導弾を装備しています。高度にシステム化された装備ですが、扱うのは隊員です。個々の能力向上が装備の能力発揮にも欠かせませんし、1人では扱えない装備なので、隊員間の信頼関係も重要。私は部下とのコミュニケーションを図りながら、個々の能力を向上させ、信頼関係を高めるためにはどうすべきかを考えています。
アメリカでの実射訓練では、洋上の目標船に対して演習弾を発射、命中させる訓練を行いました。非実射訓練にはない緊張感と、われわれの装備するミサイルの威力を実感できた機会でした」
アメリカ軍とも連携しミサイル迎撃術を磨く
【和田康信3等海佐】
護衛艦『はぐろ』の弾道ミサイル防衛長として艦長を補佐。2009年、護衛艦『みょうこう』でSM-3ミサイルの実射訓練に参加。模擬標的を宇宙空間で迎撃することに成功した
「護衛艦『はぐろ』は2021年3月の就役後、訓練や各種機能の試験を重ねています。本艦は弾道ミサイル防衛で大きな役割を果たすため、アメリカ海軍などと連携し技術を磨いています。特に『まや』型からは新たに共同交戦能力が付与され、護衛艦、潜水艦、航空機、さらには同盟国とも索敵データ(注1)の共有ができるようになりました。
弾道ミサイル防衛でも、アメリカ軍との連携を深めることが大切なのです。ミサイル迎撃には、高度な技術が必要です。情報収集はもちろん、艦としての能力向上に努めたいと考えます」
注1:敵軍の位置や状況、兵力などを調べた資料
経験を積み、積極的な判断や操作が可能に
【小峰寛大2等空尉】
石川・小松基地の第6航空団第303飛行隊でF-15を操縦。国籍不明機などに対するスクランブルのほか、災害発生時には上空からの偵察や情報収集を担当
「現代の戦闘機にミサイルは不可欠です。ミサイルに限らず『武器』を扱う者として、誤った判断・操作によって取り返しのつかない事態に発展することのないよう、日々細心の注意を払って任務に臨んでいます。加えて、操縦技量、知識、判断力を磨き続け、常に最善の対処ができるように備えています。
着任当初は与えられた任務をこなすだけで精いっぱいでしたが、経験を積む中で自分が果たすべき役割や責任をより理解でき、積極的な判断や操作ができるようになり、広い視野を持って任務に就くことができるようになったと感じます」
ミサイルを正しく扱うため発射試験・訓練が行われている
ミサイルは、高度な技術が詰まった精密機器。その取り扱いにも、熟練の技が求められる。自衛隊ではいざ有事となっても有効にミサイルを活用できるよう、日々研究や訓練が行われている。
東京都の新島にある航空装備研究所・新島支所は、国内唯一のミサイル発射試験場であり、ミサイルなどの開発のための試射を行っている。
ただし、部隊での実射訓練となると国内では射撃可能な距離も限られているため、対応できる射場が少ない。そこで、同盟国・アメリカ軍が使うアメリカ国内の射場を使って毎年訓練(注2)を行っている。
注2:アメリカのニューメキシコ州やカリフォルニア州、ワシントン州にある訓練所に、自衛隊の部隊を派遣し、持ち込んだ自衛隊の装備を使って実射訓練を実施している
<文/臼井総理>
(MAMOR2022年8月号)