日本には多くの島があるため、自衛隊は主に島に近づき攻撃を仕掛けてくる敵などを想定し、さまざまな防衛対策を講じている。
また、遠く離れた場所から日本に向けて発射される各種ミサイルに対しても警戒が必要だ。国防の危機が訪れたとき、領土を守るために自衛隊はミサイルを発射する!
「防衛出動」が発令されたとき、自衛隊はミサイルを発射する
自衛隊が持つ各種ミサイルの使用がまず考えられるのは、日本に対する武力攻撃が発生したと認められる場合に、内閣総理大臣によって「防衛出動」が命じられたときだ。ミサイルの発射は、それを扱う部隊、指揮する各司令部の判断に任されることになる。
また、弾道ミサイルなどが日本に飛来する恐れがある場合などに防衛大臣が命令できる「破壊措置命令」が発令された際も、指定された部隊がミサイルやその破片を破壊するための対空ミサイルを発射することができ、海自のイージス艦(目標の捜索から攻撃までの一連の動作を自動的に行う対空ミサイルシステムを搭載した護衛艦)などが活躍する。
具体的にはどのようなシーンでミサイルを撃つのか、紹介しよう。
敵の艦隊が襲ってきたらどうする?
海に囲まれた日本では、敵は海からやってくることが多いと予想される。上陸部隊を乗せた艦船や、日本を攻撃しようとする艦艇が沿岸海域に接近してきた。
陸・海・空から対艦ミサイルで防衛
敵艦が迫り攻撃を仕掛けてきたら、艦艇を迎撃するための「対艦ミサイル」が発射される。この場合の防衛の要となる対艦ミサイルには、陸上から発射するもの、護衛艦から発射するもの、航空機から発射するものがある。
地上から発射する陸自の88式、12式地対艦誘導弾や、海自の護衛艦やミサイル艇に搭載されている90式、17式艦対艦誘導弾やハープーン、空自のF−2に搭載されるASM−3対艦ミサイルなどがこれにあたる。
また、日本の守備部隊を攻撃するためや、日本に侵攻してくる艦隊を護衛・援護するために敵が送り込んできた航空機に対しては、「対空ミサイル」が発射される。
海浜で攻防が始まった場合はどうする?
敵を海上で食い止められず、一部敵部隊の上陸を許してしまった。敵は足掛かりとなる「橋頭堡」を築きつつ、自衛隊の陸上部隊に襲いかかってくる。このように、敵上陸後は「対空」、「対艦」の戦いに加えて陸上部隊同士の交戦も発生する。
上陸部隊に対地ミサイルを配置
上陸した部隊を援護したり、さらなる後続部隊を上陸させたりするために、敵は海や空からの攻撃を継続する。
防御する自衛隊も、対空ミサイル・対艦ミサイルによる反撃を継続するが、上陸した部隊に対しては「対地ミサイル」が有効だ。
敵の戦車や装甲車はもちろん、堅固な陣地を築かれてしまった場合には、これに対して射撃することもある。対地ミサイルには、陸自の普通科隊員が担いで発射する01式軽対戦車誘導弾などのほか、車両に搭載して運用される中距離多目的誘導弾、攻撃ヘリに搭載して運用される対戦車ミサイルなどがある。
敵が弾道ミサイルを撃ってきた場合はどうする?
敵が日本の領土・領海に向けて弾道ミサイルを撃ってきた。自衛隊は、列島に張り巡らせたレーダー網や、海自のイージス艦搭載の高性能レーダーを活用して、敵が弾道ミサイルを発射したこと、日本の領土・領海に着弾することを感知(注)した。
SM-3とPAC-3で2段迎撃
日本の弾道ミサイル防衛は、海自のイージス艦から発射するSM−3よる大気圏外・上層での迎撃と、撃ち漏らした敵ミサイルを高度数十キロメートルの下層で迎撃する空自のPAC−3の組み合わせで行う。
弾道ミサイルは、発射時の角度とロケットエンジンの燃焼時間などでコースと着弾地点が計算できるのだ。
注:アメリカ軍からの早期警戒情報を、いわば「第一報」として入手している
敵が巡航ミサイルを撃ってきた場合はどうする?
敵は、自衛隊の地上部隊や重要施設を狙った巡航ミサイル攻撃を仕掛けてくることも考えられる。巡航ミサイルは、陸地からはもちろん、艦艇、航空機からも発射可能。どこから撃ってくるのかを事前に察知するのは弾道ミサイル以上に難しい。
性能向上の対空ミサイルで迎撃
巡航ミサイルは、一般的に弾道ミサイルと比べてスピードが遅い。そこで、従来から使われている敵航空機を撃破するための「対空ミサイル」の性能を向上させ、迎撃に用いることが多い。
日本に向かって飛来する巡航ミサイルは、イージス艦のレーダーなどで探知し、主に護衛艦の対空ミサイル、陸自・空自の地対空ミサイルで迎撃する。
<文/臼井総理 イラスト/岩崎政志>
(MAMOR2022年8月号)