最近、われわれが耳にする報道には、聞き慣れない「ミサイル」が増えている。北朝鮮の列車や海中から発射されるミサイル、ロシアがウクライナ侵攻で使用した新型ミサイル、それに対抗するアメリカ軍から供与された対戦車ミサイルなどなど。
いったい世界には何種類のミサイルがあるのだろうか?それらを正しく知ることから、ミサイルを理解し日本の防衛を考える糧にしたい。
各国の主なミサイルの種類、特徴は?
ミサイル保有数の多いロシア、アメリカ、中国に加え、昨今、相次いでミサイル発射実験を行っている北朝鮮の、主なミサイルの一部を並べた。サイズが大きいのが、大気圏上層や大気圏外を弧を描いて飛行し目標へ到達する「弾道ミサイル」で、その最たるものが射程5500キロメートル以上の「大陸間弾道ミサイル(ICBM/intercontinental ballistic missile)」だ(以下BMは全て同じ略称)。
ICBM以外は厳密な区分はないのだが、一般的に射程が3000~5500キロメートル未満のものを「中距離弾道ミサイル(IRBM/intermediate-range)」、1000~3000キロメートル未満のものを「準中距離弾道ミサイル(MRBM/medium-range)」、約1000キロメートル未満のものを「短距離弾道ミサイル(SRBM/short-range)」と区分する。
また、射程の長短問わず、潜水艦から発射されるものは「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM/submarine-launched)」、航空機から発射されるものは「空中発射弾道ミサイル」(ALBM/air-launched)に分類される。弾道ミサイルに対し、大気圏内を目標まで水平に飛行する射程の長いミサイルを「巡航ミサイル」と称する。サイズが小さなミサイルには、人が担いで発射する「対戦車誘導ミサイル」などがある。
各国の主なミサイル一覧
1:大陸間弾道ミサイル・火星15(KN-22/北朝鮮)
<SPEC>全長21~22.5メートル、直径2.0~2.4メートル、射程範囲8500~1万3000キロメートル
2:大陸間弾道ミサイル・DF-41(中国)
<SPEC>全長20~22メートル、直径2.25メートル、射程範囲1万2000~1万5000キロメートル、道路移動式(大型トラックなどに載せ道路を移動)
3:大陸間弾道ミサイル・ミニットマンⅢ(アメリカ)
<SPEC>全長18.2メートル、直径1.85メートル、射程範囲1万3000キロメートル
4:中距離弾道ミサイル・DF-26(中国)
<SPEC>全長14メートル、直径1.4メートル、射程範囲4000キロメートル
5:潜水艦発射弾道ミサイル・JL-2(中国)
<SPEC>全長13メートル、直径2メートル
6:準中距離弾道ミサイル・DF-17(中国)
<SPEC>全長11メートル、射程範囲1800~2500キロメートル、極超音速グライドビークル(弾道ミサイルの弾頭部分に搭載された滑空飛行体)搭載
7:潜水艦発射弾道ミサイル・北極星3(KN-26/北朝鮮)
<SPEC>全長7.8~8.3メートル、直径1.5メートル、射程範囲1900キロメートル
8:空中発射弾道ミサイル・Kh-47M2キンジャル(ロシア)
<SPEC>全長8.0メートル、直径1.0メートル、射程範囲1500~2000キロメートル
9:短距離弾道ミサイル・KN-23(北朝鮮)
<SPEC>全長7.5メートル、直径0.95メートル、射程範囲690キロメートル
10:短距離弾道ミサイル・9K720イスカンデル(ロシア)
<SPEC>全長7.3メートル、直径0.92メートル、射程範囲400~500キロメートル、道路移動式
11:巡航ミサイル・トマホーク(アメリカ)
<SPEC>全長5.55メートル、直径0.52メートル
12:巡航ミサイル・JASSM ER(アメリカ)
<SPEC>全長4.27メートル、左右に伸びた翼の幅2.4メートル、敵のレーダーで早期発見されにくいステルス仕様
13:対戦車誘導ミサイル・FGM-148ジャベリン(アメリカ)
<SPEC>全長1.2メートル、直径0.127メートル、射程範囲2.5キロメートル
注:ミサイルのイラストは写真などをもとに描き起こしたもので、実物を正確に再現したものではありません。また、模擬弾の色付けをしているものもあります
<文/MAMOR編集部、イラスト/松岡正記>
(MAMOR2022年8月号)