主な基地・駐屯地内には自衛隊の専門用品を販売する店がある。自衛官が任務で使う道具だけに、メーカーが隊員の意見や要望を聞いて開発・製造を行っているグッズが多くそろっている。中には野営用品もあり、野営(キャンプ)のプロが使う道具だけに、汎用品とは機能や品質が違っているものも多い。
そこで、野外でサバイバル活動をするアイドル「さばいどる」として人気のかほなんさんに、街のキャンプ用品店ではあまり見かけない、ゆるキャンプでも使えて、かつ便利そうなグッズをチョイスしてもらった。
【かほなん】
岐阜県出身。ご当地アイドルのメンバーとして活動した後、2016年より「さばいどる」としてYouTubeで動画配信を開始。目標は「無人島生活」
自衛隊御用達のキャンプ道具5選
広げればタープにもなる便利な遮光ポンチョ
1:「スーパー遮光ポンチョ」
1万8150円(迷彩)、1万4850円(オリーブ)
両サイドにファスナーが付いているレインポンチョ。広げると長方形になるのでロープに掛ければタープとしても使える。汎用品と違い、しゃ光性を高めるため裏地にガラス繊維を使用しているので、生地は光を全く通さない。敵に見つからないよう光を不用意に漏らせない自衛隊ならではの仕様だ。
炎天下でもポンチョ内の温度上昇を抑えられる。また、はっ水性、透湿性にも優れ、ポンチョ内が蒸れにくい点も優れている。
水切りもできる密閉式マルチケース
2:「防水ロックケース」
649円(Mサイズ)、759円(Lサイズ)
密閉できるポリ容器(Mサイズ:縦約23×横約16.5×高さ約8.5cm、Lサイズもある)に水切りざるが付いたマルチケース。洗面用具などを入れたり、容器を洗面器として使用できる、自衛官御用達のアイテムだ。
キャンプでは、食材や使った食器を入れて水場まで運び、容器を洗い桶として使い洗った後、ざるに入れて、テントサイトまで戻れば水切りになる。また、密閉できるので濡らしたくない精密機器を収納するのに役立つ。
ポケットと仕切りが多く使い勝手バツグン
3:「シナノヤオリジナルリュックサック」
1万2000円
頑丈な、約50リットルの大容量リュック。中に仕切りがあるメイン・サブの荷室や外側の大小2サイズのポケットなど、汎用品のリュックよりも収納力に優れる。
外側や側面には、ベルトがしま模様のように何本も縫い付けられており、そこに水ボトルや携帯傘、トレッキングポールなどを取り付けることができる。アメリカ軍用バッグから生まれたシステムで、今では民生品でも使われているが、本製品はその数が多いので便利。
細かな作業ができる丈夫なグローブ
4:「洗えるグローブ 迷彩」
1450円
自衛隊の過酷な任務にも耐える頑丈な手袋。汎用品よりも高い耐久性がありながら、抜群のフィット感があり、細かな作業にも適している。愛用する隊員も多く、耐熱性がある丈夫な皮革素材を使用している。手にフィットするので、細かな手作業が必要なブッシュクラフトに最適だ。
頑丈で組み立て簡単な簡易ベッド
5:「ロックレバー式コット」
8580円
ベンチや荷物置き台としても重宝する折り畳み式簡易ベッド。汎用品の多くは、軽量化を図るため、足回りにアルミを使っているが、本製品は、スチール製なので、重くはなるが、丈夫だ。
また、座面も耐久性の高い生地を採用し、汎用品よりも頑丈な造りになっている。広げてレバーを押し込めば座面の布地を張られて完成するので、簡単に組み立てられる。
各グッズの購入方法
自衛隊専門用品は、基本的には基地・駐屯地にある売店でしか購入できないが、一部にはネット通販などで一般の方でも購入することができる商品もある。今回、ここで紹介した商品は、メーカーのご協力をいただき一般購入できるので、希望者は各方法を参照してほしい。
「スーパー遮光ポンチョ」
下記の店舗で販売中
【店名】
秀岳荘北大店:北海道札幌市北区北十二条西3丁目2-15(011-726-1235)
秀岳荘白石店:北海道札幌市白石区本通1丁目南2-14(011-860-1111)
さかいやスポーツ エコープラザ:東京都千代田区神田神保町2-30昭和ビル1F(03-3262-0583)
タクティカルプロショップエリート:東京都練馬区田柄2-51-17-1F(03-5967-0634)
ヨシキ&P2:千葉県習志野市谷津1-13-17(047-470-8090)
スポーツプラザ ヱビスヤ:新潟県十日町市高田町6丁目(025-757-2219)
山渓:大分県大分市生石1-3-1(097-537-3333)
「防水ロックケース」「ロックレバー式コット」
株式会社泉州
HP:https://www.rakuten.co.jp/shop-senjin/
公式販売ウエブサイトにて購入可能
「シナノヤオリジナルリュックサック」
有限会社シナノヤ
Eメール:hinomaru52910@yahoo.co.jp
Eメールにて注文可能
「洗えるグローブ 迷彩」
有限会社ティーワイコーポレーション
TEL:022-782-2888
「MAMORを見た」と伝えれば購入可能(別途送料が発生します)
ちなみに…キャンプ道具のルーツは「ガチ」な野営をするための軍用品だった
「キャンプ」という言葉には、「兵士が天幕に泊まって宿営している場所、あるいはその訓練を受けている場所」という意味が含まれている。
青少年の教育団体で、教育のためにキャンプを行うボーイスカウトの「スカウト」も「斥候(偵察部隊)」を意味する用語だ。キャンプが一般に普及する前の時代には、キャンプは軍人の活動だったのだ。
キャンプの普及と振興に関する活動を行っている、公益社団法人日本キャンプ協会によると、キャンプが一般の人々に普及したのは19世紀ごろだという。1861年、アメリカのコネチカット州にあった学校の校長が、生徒たちと野営を実施。子どもたちが憧れていた、野外にテントを張って寝るという軍隊の活動を、教育の一環として体験させた野営がキャンプの始まりだとされている。
1907年には、イギリス陸軍のバーデン・パウエルがイングランド南部のブラウンシー島で青少年を対象としたキャンプを行った。これがボーイスカウト運動の発端とされる。このように19世紀の終わりころから20世紀の初めにかけて、世界の各地でキャンプが注目されるようになる。軍事訓練を青少年の教育に活かす活動が、その後のキャンプの発展に寄与したわけだ。
時代が下り、現代の日本では、誰もがレジャーとしてキャンプを楽しみ、機能性とファッション性を重視したキャンプ用品が簡単に手に入るようになった。テクノロジーの発達、新しい素材の開発、著しいIT化が、キャンプ道具にも及び、軽くて丈夫で手軽でスタイリッシュなキャンプ用品が次々に開発されているが、そのルーツは軍用品であったことは知っておきたい。
(MAMOR2022年5月号)
<文/魚本拓 写真/村上淳>