日常的に訓練で野営を行う自衛官は、いわばキャンプのプロといえるだろう。実戦的な野外活動のテクニックや裏技の知識が豊富なはずだ。そこで、ゆるキャン愛好家でも応用できる、自然のなかでも快適かつ安全にキャンプを楽しむことができる方法の数々を聞いてみた。
準備編
リュックから取り出しやすい位置に行動食を入れておく
ハイキングや登山は、体力の消耗が激しい。疲労回復のため、チョコなどのお菓子類、ナッツ類などのカロリーが高い食品を取り出しやすい所に入れて休憩時などにこまめに食べると栄養補給になる。水分補給にハイドレーション(チューブ付きボトル)を使うのもありだ。
Point:アメやゼリー飲料などでもOK
使用する道具やウエアは事前に試しておく
新しく購入したキャンプ用品やアウトドアウエアは、キャンプに行く前に使ってみて使用感や使用方法、性能などを確認しておくと、いざ使用するときに慌てずにすむ。また、キャンプ場所の気候や気温に適しているかも確認しておけば、充実したキャンプライフを楽しめる。
応急補修に便利なアイテム
テントやリュックの布地が破れたり穴が開いたとき、クラフトテープがあれば応急処置で補修できる。強い力で束ねられる結束バンドも、持っておくと外れた金具を固定する際など役立つアイテムだ。最近では、キャンプ使用に特化したクラフトテープや繰り返し使える結束バンドもある。
フリーザーバッグで荷物をコンパクトにできる
着替えをフリーザーバッグに入れて圧縮して空気を押し出しながら密閉すると、荷物がコンパクトにまとまる。1着ずつ小分けに圧縮しておけば、状況に応じて使いやすい。雨が降っても中身が濡れないので、モバイルバッテリーなどの水に弱いものを収納するのにも便利だ。
救急セットを準備しておく
転倒して擦りむいたり、足をひねったり、たき火でやけどしたりするなど、キャンプでのケガは多い。アウトドアで活動するときは、万が一の事態に備え、ばんそうこうや消毒液、救急包帯、止血キット、ゴム手袋、ハサミ、テーピング用テープなどをひとまとめにした救急セットを準備しておく。
穴を開けたキャップが便利
水場が遠いキャンプ場で重宝するのが、複数の穴を開けたペットボトルのキャップ。水を入れたペットボトルに装着して木などに逆さにしてつるすと、シャワー代わりになる。汚れた手や食器を洗ったり、靴の泥を落としたりするなど、少ない水を有効に活用できるため便利だ。
移動編
疲労軽減になるリュックの担ぎ方
キャンプ用品を入れた大きなリュックを背負って移動する際、リュックが動くと体も振られてしまい、疲労度が増す。肩ベルトや腰ベルトの締め具合を調節して、体に密着できるリュックがお勧めだ。このとき、重い荷物はリュックの上部に配置すると疲れにくい。休憩時にベルトを緩めれば肩の血行がよくなり、疲労軽減につながる。
Point:荷物の総量を4.5kg以下に抑えると疲れにくい
コンパスがなくてもおおよその南を判別できる方法がある
時計を水平に置き、時計と太陽の間に細い棒を垂直に立て、棒の影が時計の短針と重なるように時計の向きを合わせる。このとき、文字盤の12時と影の真ん中がおおよその南となる。午前は文字盤の左側、午後は右側が南を指す。季節や地域によって誤差はあるが、目安になるぞ。
靴擦れを防ぐ靴下活用術
慣れない登山靴などを履いて歩くとき、靴擦れ防止としてお勧めなのが靴下を2重に履くこと。2枚の靴下の間で摩擦が発生するので足が擦れにくくなる。また、ワセリンやベビーパウダーを、かかとやくるぶしなど足の靴と接する部位に塗るのも摩擦軽減になるので有効だ。
股擦れを予防する方法
靴擦れを予防するアイテムとして紹介したワセリンは股擦れ予防にも有効なので、出掛ける前に内股に塗っておこう。また、衣服と内股が擦れるのを軽減させるため、肌に密着したスパッツを履くことでも股擦れを予防できる。長時間歩くときは股擦れの予防もしておこう。
地図に通過時間を書き込んでおく
ハイキングの途中、休憩時や道の分岐点などで現在地を地図で確認し、その地点の通過時間を書き込むことで、目的地に到着する時刻の目安が立てられる。スマートフォンの地図だけに頼らず、紙の地図(2万5000分の1)も持っていくようにしよう。予想到着時刻に合わせて、ペース配分やプランを変更しよう。
肌の露出を抑えケガを予防
ハイキングや登山では、暑い季節だからといって肌を露出することは厳禁だ。枝などに引っかけてケガをしたり、虫刺されなどを予防するため、夏でも薄手の長袖の服を着用するようにしよう。
滑落防止に役立つ斜面の下り方
滑る可能性のある斜面を下るときは、スキーのボーゲンのように、左右のつま先を近づけて、足先をハの字にしながら歩幅を狭めて下りていくと滑りにくいため滑落防止になる。また、斜面に対して横を向きながら、小刻みに横歩きで下りるのも滑落防止になる。疲労防止に適宜下りる向きを左右で切り替えよう。
設営編
キャンプで役立つロープワーク、「自在結び」、「巻き結び」を覚えよう
キャンプでは、ロープワークをいくつか覚えておくと何かと便利。なかでも、ペグや木にかけたロープの張り具合を調整できる「自在結び」、立木やポールなどにしっかりとロープを固定できる「巻き結び」を覚えておけば、さまざまなシーンで役立つ。状況に合わせて使い分けよう。
Point:キャンプだけでなく災害時にも役立つ
ペグを割りばしで代用する
小さめのタープなどを地面に固定する際には、ペグがなくても割りばしで代用できる。木材が原料の割りばしなら、万が一抜き忘れても自然に朽ちるので安心だ。割りばしのほかにも、大きめの石や小枝など、キャンプ場所に落ちている自然物で固定できる。
ポンチョなどで簡易的なシェルターが作れる
立木の間にロープを張り、そこにポンチョやブルーシートなどをかけて四隅を地面に固定すれば、簡易的なタープになる。ハイキング中の急な雨でもこの方法で雨をしのげるうえ、なるべく荷物を減らしたい簡易的なキャンプでも役立つテクニックなので、覚えておこう。
ケミカルライトを目印にすると夜でも見える
100円ショップなどで売られているケミカルライト(サイリウム)をテントの入り口につけておくと、夜間にテントを離れてから戻る際に目印になるので便利だ。ほかにも、テントロープにつければ、暗闇で足を引っ掛けるのを防止できるため、目印として使うといい。
川辺や窪地を避け、水はけのよい平たん地を選ぶ
テントを設営する場所を選ぶことは重要。とくに川辺や窪地はNGだ。雨が降ると川辺は増水の危険があり、窪地は水がたまりやすいからだ。ほかにも、傾斜地に設営すると、荷物を置くにも、食事をするにも不便で寝にくいため、水はけのよい平たんな場所を選ぶのがいい。
(MAMOR2022年5月号)
<文/魚本拓 写真/村上淳>