日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は北海道帯広駐屯地の「とろ〜り卵のとかち丼」。帯広の郷土料理である豚丼と十勝の特産品を組み合わせました。いろいろな味や食感が楽しめる、地元愛いっぱいの丼です。
全国有数の広さを誇る、陸上自衛隊帯広駐屯地
陸上自衛隊帯広駐屯地は、北海道南東部十勝平野の中央に位置し、敷地面積は約263万平方メートル(東京ドーム約56個分)と、全国の駐屯地の中でも有数の広さです。また、敷地内には陸自が管理する飛行場・十勝飛行場を有しています。
当駐屯地は1940年に旧陸軍の飛行第62戦隊が移駐したのが始まりで、終戦後の51年、警察予備隊帯広部隊が駐屯し、62年、自衛隊の第5師団として新編、その後2004年に第5旅団として改編されました。現在は第5旅団司令部と、第4普通科連隊をはじめとする10個の所属部隊のほか、第1対戦車ヘリコプター隊など方面隊の直轄部隊を含め約2000人の隊員が道東地区防衛の任に日々務めています。
隊員食堂オリジナル!「とろ〜り卵のとかち丼」
帯広駐屯地は、全国各地の部隊が訓練のため、道東にある日本最大規模の矢臼別演習場へ向かう際の経由地となることもあるそう。そのため隊員食堂では、外来部隊の隊員に十勝らしい食事を提供したいと考え、誕生したのが「とろ〜り卵のとかち丼」です。
十勝地方の郷土料理「豚丼」は、昭和初期、養豚業が盛んだった帯広市で発祥したといわれ、手に入りやすかった豚肉をウナギの蒲焼風のタレにからめてご飯にのせたスタミナ丼。それをアレンジして、さらに十勝で生産されている「長イモ」を磯辺揚げに、「豆とコーン」はかき揚げに、「卵」は半熟卵の天ぷらにしてのせました。具材が豊富でボリューミーな丼。卵の黄身をからめて食べるのがお勧めです。
香ばしい風味が食欲をそそる
「甘じょっぱい豚丼のたれと半熟卵のトロトロ感が絶妙なバランスで、力強さの中に優しさがひょっこり現れる丼です」(1曹/女性・30代)
「たれが半熟卵にもマッチして、ご飯が進みました。十勝を連想させるほかの具材の彩りも良く、食べ応えも抜群でした!」(3曹/男性・20代)
「豚肉は柔らかく、天ぷらの衣もふんわり優しい口当たりで食べやすかったです。香ばしい風味に食欲をそそられました」(士長/男性・20代)
数百人の料理をまとめて調理!
【陸上自衛隊帯広駐屯地 業務隊補給科糧食班 管理栄養士 石黒さおり】
平日の昼食で600〜800人の隊員が利用します。安全な食事の提供を基本に栄養面、予算、調理担当者の人数、使用できる調理器材などを考慮し、献立を作成しています。当駐屯地での勤務は11年になりますが、食堂を利用する隊員の年齢層も幅広いですし、大量調理のため、難しいこともあります。
全てを手作りしたいのですがなかなか厳しい。でも加工品を利用するときは手作りのソースをかけたり、水分が出ないようにあえ物は配食の直前にあえたりと、少しでもおいしいと感じてもらえるような配慮を心掛けています。
「とろ〜り卵のとかち丼」のレシピを紹介
<材料(2人分)>
麦ご飯(白米:麦を9:1の割合で炊く):丼2杯分
天ぷら衣(てんぷら粉80gを水130mlで溶く)
万能ネギ(小口切り):適量
揚げ油:適量
[たれ(豚の照り焼き用+仕上げ用)]
しょうゆ:大さじ3
砂糖:大さじ2
みりん:大さじ11/2
酒:小さじ2
はちみつ:小さじ1
[豚の照り焼き]
豚肩ロース薄切り肉(半分に切る):2枚(100g)
[卵の天ぷら]
半熟ゆで卵:2個
小麦粉:適量
[かき揚げ]
ミックスビーンズ(赤インゲン豆、白インゲン豆、むき枝豆など):60g
スイートコーン(粒):20g
タマネギ(薄切り):小1/4個
小麦粉:適量
[長イモの磯辺揚げ]
長イモ(輪切りまたは半月切り):100g
小麦粉:適量
青のり:小さじ1
<作り方>
1:ボウルにたれの材料を入れて混ぜる。そのうちのたれ約大さじ1を別の器に取って豚肉を漬け込み、しっかり下味を付ける。
2:卵の天ぷらを作る。半熟のゆで卵に小麦粉をふり、天ぷら衣にくぐらせ、揚げる。
3:かき揚げを作る。材料に小麦粉をふってざっくりと混ぜ、4等分くらいにして、それぞれを天ぷら衣にくぐらせ、揚げる。
4:長イモの磯辺揚げを作る。長イモはペーパータオルで水気をふき、小麦粉をふり、青のりを加えた天ぷら衣にくぐらせ、揚げる。
5:豚の照り焼きを作る。フライパンにサラダ油少々(分量外)を熱し、①の漬けた肉を入れて焼く。
6:①で取り置いたたれを小鍋に入れ、少し煮詰める。
7:丼に麦ご飯を盛り、⑥を適量かけ、③、④、⑤を盛り、中央に②をのせる。さらに全体に残りの⑥をかけ、万能ネギを散らす。
注目食材:十勝川西長いも
長イモの生産量は北海道が全国1位。中でも地域ブランド産品である「十勝川西長いも」は昼夜の寒暖差により、きめ細かく真っ白な肉質と粘りが特徴。春に植え付け、秋に収穫する秋掘と、長イモを土の中で越冬させて翌春に収穫する春掘がある。生でシャキシャキ、加熱すればホクホク、すりおろすとトロトロの食感が楽しめる。血糖値の上昇抑制、胃腸の粘膜保護、疲労回復、スタミナ増強などに効果がある。
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林紘輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>
(MAMOR2022年3月号)