日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は北海道余市防備隊の「鮭のチャンチャン焼き」です。サケと野菜をアルミ箔に包んで蒸し焼きにする簡単レシピ。みそだれとバターの風味が食欲をそそります。
日本最北を護るミサイル艇隊を有す、余市防備隊
余市防備隊は、海上自衛隊の大湊地方隊(青森県むつ市)隷下の部隊で、北海道北西部・積丹半島の東の付け根にある余市町に所在しています。町の中心部には、日本初のモルトウイスキー蒸溜所で、2021年11月には国の「重要文化財」に指定され、かつてはTVドラマの舞台にもなった「ニッカウヰスキー余市蒸留所」があることでも有名です。
当隊は1971年に開隊された、道央圏では唯一の海自部隊で、本部、ミサイル艇『わかたか』と『くまたか』を擁する第1ミサイル艇隊で編成されています。主な任務は2艇の機動力を生かして遂行する日本最北の防衛と警戒監視であり、小樽港に入港する艦艇の支援や沿岸地域の防備、災害派遣なども担っています。
アレンジレシピもたくさん!「鮭のチャンチャン焼き」
今回紹介する「鮭のチャンチャン焼き」は北海道の海産物として有名な生サケと野菜をみそで味付けし、蒸し焼きにした料理。2007年には「ジンギスカン」や「石狩鍋」とともに農山漁村の郷土料理百選(農林水産省主催)に選ばれています。現在はサケに限らず、ホッケ、マス、イカ、カキなどで作ることも多いそう。
食堂では、春はアスパラガス、秋はカボチャやキノコ類、冬は白菜、春菊、レンコンなど旬の野菜を入れて提供するのだとか。また、本来は鉄板で焼く料理ですが、ホットプレートでアルミ箔に包んで蒸し焼きにすると手軽です。マヨネーズやソース、しょうゆをかけてもおいしい万能料理なので、好みに合わせてアレンジするのもお勧めだそうです。
アルミ箔を開けたとたん、バターとみその香りが
「サケのうまみが逃げることなく甘いみそだれと合わさって、単にみそ漬け焼きにしたものより格段においしかったです」(1曹/男性・50代)
「アルミ箔を開けたとたん、バターとみその香りが広がり食欲をかきたてます。野菜にもサケのうまみが移っており、即完食!」(3曹/男性・30代)
「アルミ箔の中で、それぞれの食材がうまみを出し合い見事に調合された、奇跡のハーモニー。白米との相性も抜群でした」(2曹/男性・40代)
北海道の食材は格別においしい!
【海上自衛隊 余市防備隊本部 補給科給養係 給養員長 海曹長 堀切恵吾】
出身は岩手県盛岡市で1987年に入隊し、青森県むつ市、小笠原の硫黄島で勤務し、こちらに赴任して2年弱になります。前任地も海の幸に恵まれた土地でしたが、北海道の食材はやはり格別においしいと思います。
当隊に所属するミサイル艇は食堂がありません。停泊中は乗組員も隊員食堂を利用するので、提供する食事数に変動があるのが特徴です。ラーメン、カレーが人気メニューで、飽きがこないよう、毎回工夫を凝らしています。早くコロナ禍以前のように会話を楽しみながら食事ができるようになってほしいです。
「鮭のチャンチャン焼き」のレシピを紹介
<材料(2人分)>
生サケ(切り身):2切れ
キャベツ(食べやすく切る):1/2枚(60g)
タマネギ(薄切り):小1/4個
ニンジン(短冊切り):小1/4本(40g)
シメジ、エノキダケ(石づきを除き、ほぐす):各1/4袋(各30g)
塩、コショウ:各適量
[A]
みそ:大さじ3
みりん:大さじ2
砂糖:小さじ1
バター:20g
<作り方>
1:ボウルにⒶを入れ、混ぜ合わせる。
2:アルミ箔にキャベツ、タマネギ、ニンジン、シメジ、エノキダケのそれぞれ半量を敷き、上に生サケ1切れをのせ、塩、コショウをふる。①の半量をサケの上にまんべんなく塗り、バター半量をのせて包み込む。同様にもう1つ作る。
3:フライパンに②を並べ入れ、2センチメートルほどの高さまで水を注ぐ。フタをして中火で15〜20分蒸し焼きにし、サケに火が通ったら火からおろし、皿にのせる。
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。
チャンチャン焼きの名前の由来は?
石狩市では、昭和初期に船上で漁師たちが釣ったサケを鉄板で焼いて食べたのが発祥と伝わっている。名前の由来は、お父さん(チャン)が豪快に作るから、材料を適当に切って適当に味付けし、チャチャッと手早く作れるから、焼くときに鉄板とヘラがチャンチャンという音を立てるから、でき上がりを待てず、思わず箸で皿などをチャンチャンたたくから、火を起こす火打石の音、など諸説ある。
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林紘輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>