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     自衛隊におけるメンタルヘルスケアには、平時から心に不調をきたさないよう予防的に行われるメンタルトレーニング的なものから、精神的負担が大きい任務などに際して重点的に行われるメンタルケア、不調をきたした場合に心の傷を癒やし、健康なメンタルを取り戻させるためのケアまで幅広く実施されている。具体的にはどのような施策があるのか、紹介しよう。

    メンタルヘルスの知識を身に付け、折れない心を育てる

     全国の基地・駐屯地などには、合計約170人の高い専門性を有する自衛官・技官である臨床心理士と、部内の教育課程を修了した自衛官カウンセラー合計約700人が配置されている。さらに合計約250人の部外カウンセラーと契約してカウンセリング業務を委託するなど、重層的な相談態勢によって、さまざまな状況を想定した、平時からのトレーニングを行っている。

    メンタルヘルスチェック

    定期的に全隊員の心の状態をチェックし把握することで、不調の早期発見につなげる

    画像: 定期的に全隊員の心の状態をチェックし把握することで、不調の早期発見につなげる

     2013年から毎年1回、全隊員を対象にメンタルヘルスチェックが行われている。管理者が隊員の心身の状態を把握し、必要に応じたケアを実施することや、集団の分析結果を職場改善に活用することなどが主な目的。チェックの結果、ケアが必要と判断された隊員に対しては部隊長などが面談を行うほか、カウンセリングの利用や医療機関での受診を含めた対応について、積極的な指導を実施する。

     各機関のメンタルヘルスチェックの結果をとりまとめた防衛省の担当部署は、防衛医科大学校の協力を得て分析を進め、必要な措置を講じる。

    カウンセリング体験

    平時に積極的な参加を促し、カウンセリングの敷居を低くする

    画像: 平時に積極的な参加を促し、カウンセリングの敷居を低くする

     防衛省では年に2回、「メンタルヘルス施策強化期間」を設置し、各部隊などにおけるメンタルヘルス教育に加え、超過勤務の縮減や計画的な年次休暇の取得、各種ハラスメントの防止などの職場環境の改善に重点的に取り組んでいる。

     そのほかにも最近はカウンセリングへの抵抗感を取り除くため、悩みなどがなくてもカウンセラーと対面で話をする「カウンセリング体験」などを推進している。2021年秋には、岸信夫防衛大臣や松川るい防衛大臣政務官(当時)に実際のカウンセリングを体験してもらい、感想を動画で隊員向けに発信するといった、新たな取り組みも行った。

    メンタルヘルス教育

    ストレスが引き起こす反応を学ぶ

     たとえ厳しい任務であっても継続して遂行しなくてはならない自衛官にとって、自分自身の心身の状況を把握することはとても重要なこと。そのために、任務に就く前から、持続的な任務におけるストレスや惨事後などにどのようなストレス反応が出る可能性があるのか、どう対処すればいいか知識を持っておくことが有効だ。

     自衛隊ではそういったメンタルヘルスの知識を身に付けるための教育を全隊員を対象に行っているほか、部隊長・中隊長など部下のメンタルヘルスを管理すべき立場の隊員を対象に、相談しやすい環境づくりや話を聴くときのポイントといった実際の相談スキルを学ぶ教育なども行っている。

    メンタルトレーニング

    「しなやかで折れない心」を育てる

     突然の惨事に備えるためには、逆境にあっても折れることなく、困難を乗り越えられる心を、平時において意識的に育てる指導が重要だ。

     2017年より航空自衛隊が年に1度実施する「強くしなやかで、折れない心」を育てるメンタルトレーニングの1つ、レジリエンス・トレーニングのカリキュラムは、心理的、身体的、社会的、精神的の4つの柱で構成され、一方通行の講義ではなく、ディスカッションやワーク、エクササイズを重視するのが特徴。怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」など、この教育で学んだことを積極的に実践し、隊内での人間関係や家族との関係を見直すきっかけになった隊員も多いのだそう。

    「メンタルヘルスも日ごろからの備えが大切」

    画像: 写真提供/防衛省

    写真提供/防衛省

    【航空幕僚監部 首席衛生官付 西泰信3等空佐】

     人生において、誰もが強いストレスに晒される可能性があります。そのストレスを乗り越えられるように、日ごろから知恵や信念、頼れる人間関係を育んでおく必要があると考えています。

     特に、これまでのメンタルヘルスといえば精神的不調に陥った方への対応が主でしたが、近年は個人の長所を生かして楽観的・前向きに物事を捉え、自分自身を信じる力を高めることを通じてその人の総合力を高めようとするアプローチが行われるようになっています。強いストレスに直面しても、それを乗り越えられる素地を培っておこうというものです。また、精神面だけでなく運動することや栄養をしっかり摂るといった健康管理などの総合的な働きかけや、その人がまわりの人と信頼関係を築けているか、といった人間関係に注目することも大切です。

     人のメンタルヘルスにはさまざまな要素や環境が影響しています。これからもユーモアと多様な観点を忘れることなく隊員の皆さんのメンタルヘルスを陰ながら支えていきたいと考えています。

    国守る隊員の心を守れ!

    <文/真嶋夏歩 撮影/増元幸司 写真提供/防衛省>

    (MAMOR2022年2月号)

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