いま、“戦後最密”などと言われている日米の同盟関係。両国の制服組トップである山崎陸将とシュナイダー中将に、同盟の目的や相手に対する印象を率直に語ってもらった。
現場の最高責任者の目には日米同盟はどのように映っているのだろうか。また、両国が有機的に同盟関係を機能させるためのメカニズムについても合わせて紹介しよう。
日々の積み重ねにより日米同盟の絆を強化
【統合幕僚長 山崎幸二陸将】
今や日米同盟は「世界に揺るぎない強固な同盟」です。このような関係は一朝一夕にできたものではありません。陸・海・空各自衛隊はアメリカ軍のそれぞれのカウンターパートと日々連携を図っています。
私自身もシュナイダー司令官とは、テレビ会議などで週に1度は顔を合わせています。これらの日々の積み重ねにより、自衛隊とアメリカ軍は信頼関係を築き、強い絆で結ばれるようになったのです。
アメリカ軍は実戦経験が豊富で、装備品も近代化され、戦術戦法にも学ぶべきところが多い。兵士の任務に対する忠誠心や使命感は高く、最も頼りになるパートナーです。日米同盟の抑止力・対処力のさらなる強化に努めていきたいと思います。
今最も重要で戦略的な日本との同盟関係
【在日アメリカ軍兼第5空軍司令官 ケビン・シュナイダー中将】
在日アメリカ軍司令官は、日米同盟にとって非常に重要なポジションであり、拝任して大変な喜びを感じています。自由で透明性の高い民主主義、経済活動や人々の往来の自由、主権や人権の尊重という、共通の価値感を持つ両国の関係は、1993年に私が三沢基地にいたころより強くなっています。
私はいつも自衛隊の能力の高さやプロフェッショナリズムの徹底に強い感銘を受けてきました。また若い隊員からトップまで、高い規律性が保たれています。
山崎統幕長や3自衛隊の幕僚長らのビジョン、課題への対応力の高さにも尊敬の念を抱いています。日米同盟は世界に対して模範になる同盟であり、今後、両者の関係はより強くなっていくでしょう。
連携を調整する日米共同組織
日米同盟が有機的かつ実効的に機能するには、平時から緊急時までいつでも日米両国政府が緊密な協議や対処を行うための的確な調整が必要となる。そのために2015年に設けられたのが「同盟調整メカニズム(ACM)」だ。
ACMは、自衛隊とアメリカ軍の活動の政策面での調整を担う防衛省・外務省などの代表による「同盟調整グループ(ACG)」、運用面の調整をする統幕とインド太平洋司令部、在日アメリカ軍司令部代表による「共同運用調整所(BOCC)」、各種軍レベルの調整を行う3自衛隊とアメリカ軍各軍の代表による「自衛隊・米軍間の調整所(CCCs)」で構成され、さらに外務省北米局長と在日アメリカ軍副司令官による「日米合同委員会(JC)」と相互調整・情報交換を行う。
ACMは自衛隊とアメリカ軍が連携して対処する事態が発生した場合にそれぞれの組織が必要に応じて活用され、必要に応じて閣僚レベルを含む2国間の上位レベルへ働きかけを行う。
2016年の熊本地震、北朝鮮の弾道ミサイル発射や尖閣諸島周辺での中国の活動なども、ACMが活用されている。これらの組織により、日米間の調整や連携が図られ強固な協力体制が可能になっているのだ。
(MAMOR2021年9月号)
<文/古里学 撮影/荒井健(山崎幸二陸将、ケビン・シュナイダー中将)>