国を守ることが仕事の自衛隊。しかし、入隊を検討するにあたっては、その給与や、在職中に取れる資格なども重要な要素になります。そこで、マモルでは、それを分かりやすく理解するために、仮想で究極の条件を設定してみました。
試算をする前に自衛官の待遇を調査
「隊舎に住み込み、隊員食堂で3食食べ、貸与される制服で過ごせば、衣食住に関わるお金は一切かからない」とか、「艦艇勤務なら航海中はお金を使う場所がないので貯金できる」、「任務でただで資格が取れる」という話を聞くが実際はどうなのだろう?
そこで編集部では任期制自衛官(後ほど解説)が1任期で、理論上、最高いくらの給与を取得できるか、いくつの資格を得ることができるか、をシミュレーションした。もちろんこれは雑誌のお遊び企画であり、実際にそんな自衛官はいない。
さて、当シミュレーションは以下の条件で設定した。まず、任期制の説明から。自衛官の身分は特別職国家公務員で、雇用形態は定年まで在籍する非任期制と、精強性を維持するため18歳から32歳までを募集対象とした任期制に分かれ、任期制の場合、陸上自衛官は1年9カ月(一部技術系は2年9カ月)、海上・航空各自衛官は2年9カ月を1任期(2年間延長も可能)として勤務する。
自衛官の給与は「俸給」と「号俸」によって構成される。「俸給」は基本給であり、「号俸」は階級、勤続年数や仕事への評価によって決まる。号俸は通常1年で4号上がり、評定が悪い場合は2号しか上がらないこともある。今回のシミュレーションでは、標準的な昇給である4号俸アップ(別表1参照)、艦艇の乗員に支給される乗組手当などの「諸手当(別表2参照)」が、職務に応じて「俸給」に加えて支給されたと仮定して算出した。
陸上自衛隊 1任期(約2年)勤務:与那国駐屯地で約700万円
東京から約2000キロメートル離れた与那国島に所在する日本最西端の駐屯地。沿岸監視隊員は航行する船舶の確認など国境の警戒監視などの任務に就く
勤務地:与那国駐屯地(沖縄県)
1任期の給与(額面・総額):約432万円
1任期の賞与(8回総額):約143万円
1任期の特別手当(総額):特地勤務手当(約77万円)、広域異動手当(約48万円)
=1任期(約2年)勤務で約700万円!
与那国駐屯地は遠隔地のため離島地域などで勤務する隊員に毎月支給される「特地勤務手当」が付く。また、300キロメートル以上の異動に対し給与の10%が毎月支給される広域異動手当(基礎教育を受けた神奈川県から沖縄県に異動)を加えてシミュレーションすると、約700万円の給与を得ることが想定できる。
海上自衛隊 1任期(約3年)勤務:砕氷艦『しらせ』で約1300万円
南極地域で気象や海洋観測などを行う観測員のため、『しらせ』は輸送協力をしている。約180人の隊員が艦の航行や整備などに携わり、往復の総航程は約3万2000キロメートル。南極到着後、隊員は物資の搬送や調査に必要な設備の設置・点検などを支援する
勤務地:砕氷艦『しらせ』
1任期の給与(額面・総額):約663万円
1任期の賞与(10回総額):約238万円
1任期の特別手当(総額):地域手当(約66万円)、乗組手当(約205万円)、航海手当(約76万円/年間120日)、南極手当(約65万円/年間120日)
=1任期(約3年)勤務で約1313万円!
横須賀基地を母港とする、砕氷艦『しらせ』。特別手当として、毎月支給される「地域手当(横須賀市は10%)」、艦艇勤務者に毎月支給される「乗組手当」、艦艇が母港を出て帰港する期間(『しらせ』は120日間)、1日あたり支給される「航海手当」、南極地域への輸送業務に関わる隊員に1日あたり支給される「南極手当」を加えてシミュレーションすると約1313万円の給与を得ると想定できる。
航空自衛隊 1任期(約3年)勤務:海栗島分屯基地で約1000万円
海栗島は東京から約550キロメートル離れた長崎県対馬にある島。島にある分屯基地では、レーダーを使用し、わが国の領空に無断侵入してくる航空機を24時間態勢で監視している。国籍不明機の侵入時は、近隣の戦闘機が配備された基地に緊急連絡を行う
勤務地:海栗島分屯基地(長崎県)
1任期の給与(額面・総額):約683万円
1任期の賞与(10回総額):約214万円
1任期の特別手当(総額):地域手当(約123万円)
=1任期(約3年)勤務で約1020万円!
特別手当として、毎月支給される「地域手当(長崎県は3%)」を加えてシミュレーションすると約1020万円の給与を得ると想定できる。
(MAMOR2021年10月号)
<取材・文/MAMOR編集部>