戦闘航空団とは、対領空侵犯措置、すなわち国籍不明機が領空を侵犯しようとするのに対してスクランブル発進(参考・2020年度は計725回実施)を行い、実際にこれを阻止する任務を持った部隊だ。全国を網羅する戦闘航空団と、そこで運用する戦闘機の特徴を紹介しよう。
F-15J/DJ:世界トップクラスの能力を持つ大型戦闘機
「イーグル」の愛称を持つ航空自衛隊の主力戦闘機で全国に約200機を配備。きわめて高い運動性能と速度性能を実現している。運用開始から40年以上たつが基本設計が優秀で、電子機器などの改修により現在でもトップクラスの能力と信頼性を誇る。DJは複座型を表す。
<SPEC>
全幅:13.1m/全長:19.4m/全高:5.6m/最大全備重量:約25t/最大速度:約3060km/h
<運用する航空団>
●千歳基地(北海道)北部航空方面隊 第2航空団/第201飛行隊&第203飛行隊
第201飛行隊は空自のトップガンを描いた邦画『ベストガイ』(1990年・東映)で織田裕二が演じるパイロットが所属していた部隊。創隊された北海道にちなみ、両飛行隊ともマークにヒグマがあしらわれている。
●小松基地(石川県)中部航空方面隊 第6航空団/第303飛行隊&第306飛行隊
北陸から中国地方東部地域を担当する航空団。第303飛行隊は、小松基地にほど近い白山にすむとされる龍、本特集に登場する第306飛行隊は、石川県の県鳥「イヌワシ」を、それぞれマークにあしらっている。
●新田原基地(宮崎県)西部航空方面隊 第5航空団/第305飛行隊
第305飛行隊は2018年8月に、日本で初めて女性戦闘機パイロットとなった伊藤美紗1等空尉が配属された部隊でもある。創隊の地・百里基地が位置する茨城県の県の木である梅がマークのモチーフ。
●那覇基地(沖縄県)南西航空方面隊 第9航空団/第204飛行隊&第304飛行隊
南西方面の安全保障環境の変化に伴い、2016年に築城基地から第304飛行隊が移駐してF-15の2個飛行隊となり防衛力を強化、第9航空団が新編された。第204飛行隊はハクトウワシ、第304飛行隊は天狗のマーク。
F-2A/B:日米の先進技術を結集して誕生した多用途機
アメリカのF-16をベースに日米共同で開発、製造された。先進的な材料や構造で軽量化され、電波吸収材を使用し、レーダーで発見されにくいようにしている。日本の地理や特性に合うよう工夫され、空対空戦闘から対艦・対地攻撃までこなす多用途戦闘機。大型の対艦ミサイルを4発搭載可能。Bは複座型を表す。
<SPEC>
全幅:11.1m/全長:15.5m/全高:5.0m/最大全備重量:約22t/最大速度:約2445km/h
<運用する航空団>
●百里基地(茨城県)中部航空方面隊 第7航空団/第3飛行隊
第3飛行隊はF-2が最初に配備された飛行隊。F-4からF-35Aを運用することになった第302飛行隊が三沢基地に移るのと入れ替えに、百里基地に移駐した。マークは勇壮さを象徴する「かぶと武者」がモチーフ。
●築城基地(福岡県)西部航空方面隊 第8航空団/第6飛行隊&第8飛行隊
2016年にF-15を運用する第304飛行隊が南西方面の防衛力強化のため那覇基地に移駐。第8飛行隊が三沢基地より移駐し、2個F-2飛行隊となった。第6飛行隊は弓と矛、第8飛行隊はクロヒョウをマークにあしらっている。
F-35A:最新電子機器を搭載、新時代のステルス機
ステルス性能に優れ、対地攻撃能力や電子装備が充実した最新鋭機。統合された情報をヘルメットディスプレーに表示、ネットワーク戦闘にも対応する。ほぼ同一の機体構造を用いた、短距離離陸・垂直着陸機のF-35Bも2023年までに空自が取得予定。主翼や尾翼が大型のF-35Cをアメリカ海軍が導入予定だ。
<SPEC>
全幅:10.7m/全長:15.7m/全高:4.38m/最大離陸重量:約32t/最大速度:約1960km/h
<運用する航空団>
●三沢基地(青森県)北部航空方面隊 第3航空団/第301飛行隊&第302飛行隊
自衛隊で唯一F-35Aを運用。F-4からF-35Aへの機種転換に伴い、百里基地から移駐した。各飛行隊の創隊の地にちなみ、第301飛行隊は茨城県筑波山のガマガエル、第302飛行隊は北海道のオジロワシがマークのモチーフ。
(MAMOR2021年6月号)
<文/野岸泰之>