自衛隊の行動に欠かせないものの1つが「インテリジェンス(情報)」だ。これは部隊が何らかの作戦行動を起こすのに先立ち、あらかじめ準備しておかねばならないもの。陸上自衛隊が収集する情報資料(インフォメーション)と、それを分析して得た情報(インテリジェンス)について、その収集方法を解説しよう。
どんな情報をどう集め、どう使うのか。陸上自衛隊の行動を決定付ける情報とは?
ミリタリーの世界において、ひと口に「情報」といっても、種類はさまざまだ。作戦を遂行するため、陸上自衛隊が収集する情報にはどんな種類があるのだろうか。そして情報をどう集め、どう役立てるのかについて紹介しよう。
IMINT:写真や動画などに記録された資料から得る「画像情報」
各種機材で撮影した写真や映像の情報
画像情報(IMAGERY INTELLIGENCEの略でIMINT「イミント」と呼ばれる)とは、画像や映像として得られる情報のことだ。
人がカメラで撮った写真や映像はもちろんのこと、各国の商用衛星や、日本政府が打ち上げた情報収集衛星(安全保障や大規模災害への対応、そのほかの内閣の重要政策に関する画像情報収集を行うために運用している人工衛星。情勢判断や政策決定に活用されている。2020年11月現在、9機体制で運用)による衛星写真、航空機から撮影した航空写真、さらには地上、船舶、航空機などから、他国の航空機や艦艇を識別するために撮影された識別写真、VTRなどに記録された映像などがあてはまる。また、これらの映像資料などをもとに作成された各種地図なども活用されている。
航空機や無人機、などを使い撮影する
【スキャンイーグル2】
<SPEC>
全長:1.7m
全幅:3.1m
全備重量:26.5kg
動作環境:-16℃〜+50℃
画像情報の収集方法で自衛隊で使われる航空写真の入手法は2つあり、1つは偵察機などで撮影したものだ。
もう1つは国土地理院が地図情報の収集に使用している測量用航空機(現在は精度の高い測量用航空カメラを搭載した3代目「くにかぜⅢ」が2009年から運用されている)が撮影した画像を入手する。自衛隊で使う日本国内の航空写真は、この2つの方法で撮影されたものがほとんどだという。
また近年では、電池などの改良で長時間の運用が可能になったことや、画像やセンサー技術の進歩により各国の軍隊でも活用が進む無人偵察機が使用されており、陸上自衛隊ではヘリコプター型の無人偵察機システム(FFRS)を2010年より装備化。近年は飛行機型の「スキャンイーグル2」の配備を進めている。
IMINTを地形の把握や敵情の分析などに使用
画像情報は、映像をもとに作成された地図と合わせて作戦地域の詳しい地形を知るために使われる。また、他国の基地に出入りする車両の動きを分析し、活発な動きが確認できれば、何かしらの行動の準備中であると推測できる。
衛星画像の場合、自衛隊では1984年以降、政府や民間の地球観測衛星による画像データを、その後は情報収集衛星の画像データも加えながら活用してきた。2001年からはこれらの画像データを効率的に処理できる画像情報支援システム(IMSS)を運用。高解像度の画像データに対応した情報分析を行い、他国の状況把握などに活用している。
(MAMOR2021年6月号)
<文/臼井総理 イラスト/丸子博史 写真提供/防衛省>