日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は沖縄県与那国駐屯地の「長命草の冷やしそうめん」を紹介します。健康長寿県にふさわしい、食べると長生きできそうなメニュー。疲労がたまっていたり、食欲がないときにもお勧めです。
尖閣諸島までわずか150km。沿岸監視を担う、陸上自衛隊与那国駐屯地
陸上自衛隊与那国駐屯地は、2016年3月、日本の最も西に位置する駐屯地として沖縄県八重山諸島与那国島の与那国町に開設されました。駐屯地の建物は大自然を抱く与那国島の景観に配慮し、赤茶色の屋根瓦と白壁という外装となり、ゲンゴロウ類など島の貴重な動植物を保護するため、敷地内にビオトープ(生息・生育空間)が設けられています。
西部方面情報隊(熊本県・健軍駐屯地に駐屯する西部方面隊直轄の情報収集などを行う部隊)の1部隊として当駐屯地に配備された与那国沿岸監視隊を主体とし、南西諸島の警戒・監視を主任務としており、与那国島の周辺に対する監視をしています。20年にはヘリポートなどに活用できるグラウンドが整備されました。また、離島の部隊で唯一、最新の戦闘射撃訓練シミュレーターが導入されています。尖閣諸島から約150キロメートルと近いため、隊員は毎日、緊張感をもって任務に就いているそう。
これを食べれば健康長寿。「長寿草の冷やしそうめん」
今回紹介する「長命草の冷やしそうめん」は厳しい暑さにも負けずに頑張れると人気のメニュー。長命草は沖縄の伝統的農産物(戦前から導入され、伝統的に食されてきた地域固有の野菜)の1つで、与那国島では古くから赤ん坊の健康長寿を願う儀式や、五穀豊穣、航海安全を祈る神事に欠かせない供物なのだそうです。それを粉末にして練り込んだそうめんを使用しています。豚バラ肉と野菜を具にしたジューシーと呼ばれる沖縄風炊き込みご飯と一緒に食べると栄養満点、一層元気になれます。
「青い空、美しい海を感じる味わい」
隊員たちの食べた感想は?
「長命草はサラダで食べると苦く感じると思いますが、練り込んだそうめんなら苦さもなく食べやすいのでお勧めです」【事務官/男性・20代】
「長命草そうめんは、口に入れた瞬間、与那国島の青い空、美しい海が連想される爽やかな味わいで、やみつきになります!」【3曹/男性・30代】
「さっぱりとしたおいしさで、暑い夏にぴったりの1品。これを食べると、心なしか寿命が延びたような気がします(笑)」【1曹/男性・50代】
沖縄県久米島出身の栄養士にお話を伺いました
【陸上自衛隊 与那国駐屯地 与那国沿岸監視隊後方支援隊糧食班 栄養士 田端未希】
沖縄県久米島出身なので島の生活には慣れているつもりでしたが、与那国島はお店も少ないのでびっくりしました。今の任務に就いて3年目に入り、天候次第でフェリーが止まるなど、島特有の物流の弱さにも慣れました。昼食時で約170人の隊員が利用し、年齢層の幅も広いので献立作りは大変です。島内にはパン店が1軒しかないため、週末にパンを提供すると喜ばれますね。隊員は不便な環境の中で勤務しており、ストレスをためやすいので、毎回の食事を楽しんでもらえるよう、さまざまな料理にチャレンジしていきたいです。
「長寿草の冷やしそうめん」のレシピを紹介
<材料(2人分)>
長命草そうめん(なければそうめん):3束(150g)
[つゆ]
めんつゆ(市販品・かけつゆの表示どおりに希釈):11/2カップ
みりん:大さじ2
和風だしの素(顆粒):小さじ1/2
花カツオ:2パック
[トッピング]
キュウリ(斜め薄切りにして細切り):小1本
鶏ササミ(ゆでて手で裂く):1本
錦糸卵(市販品):30g
ミニトマト(半分に切る):4個
万能ネギ(小口切り)、刻みのり、練りわさび:各適量
<作り方>
1:つゆを作る。鍋に全ての材料を入れ、ひと煮立ちしたらしばらく置いてこし、冷やす。
2:鍋にたっぷりの湯(分量外)を沸かし、そうめんを入れ、表示どおりにゆでる。ゆで上がったらザルに上げ、流水にさらし、水気をきって器に盛る。トッピングを彩りよくのせ、食べる直前に①を注ぎ、よく混ぜていただく。
※長命草そうめんはオンラインショップなどで購入可能
※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。
注目食材:長命草そうめん
長命草は沖縄諸島に多く分布するセリ科の植物。「サクナ」とも呼ばれ、葉がボタンの花に似ていることから和名は「ボタンボウフウ」。強い日差しと潮風にさらされながら育つため、緑色が濃く、抗酸化効果の高いポリフェノールやカロテン、ビタミンCが豊富。
昔から「1株食べると1日長生きする」といわれている。その粉末を練り込んだそうめんは一般のそうめんと味は変わらないが、緑色でコシが強いのが特徴。
(MAMOR2021年9月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 食堂写真提供/防衛省>