• 自衛隊とアメリカ軍、いざに備える共同訓練をリポート

     アメリカ軍のインド太平洋地域における戦略的根拠地である日本を自衛隊が守ることが日米同盟の中核となるならば、両者はお互いを信頼できるバディとしてタッグを組まねばならない。自衛隊とアメリカ軍は、いざというときに連携できるよう、さまざまな状況を想定した「日米共同訓練」を実施している。一部、参加した自衛隊員やアメリカ軍人のコメントも交えながら紹介していこう。

    日米共同統合演習(Keen Sword:キーンソード)

    有事を想定した最大規模の日米共同訓練

    画像: 海上自衛隊の輸送艦上で、訓練の調整を行う陸上自衛隊の隊員とアメリカ海兵隊の軍人

    海上自衛隊の輸送艦上で、訓練の調整を行う陸上自衛隊の隊員とアメリカ海兵隊の軍人

     自衛隊とアメリカ軍、合わせて約4万6000人が参加した大規模演習。水陸両用作戦やサイバー攻撃への対処、水陸機動団や海兵隊による島しょ部の大がかりな防衛、上陸演習がメインとなった。

    開始:1986年より/直近実施日:2020年10月26日~11月5日(第15回)/実施場所:日本周辺空海域など/目的:日米共同対処および自衛隊統合運用について演練・検証し、日米の相互運用性の向上を図る/訓練項目:水陸両用作戦、陸上・海上・航空作戦、サイバー攻撃等対処、統合電子戦など

    相互に刺激し合える良い関係を

    「アメリカ軍は、われわれの提案に対していつも前向きに検討してくれるのが印象的です」と語る西田3佐。カウンターパートのディーン中佐とは、キーンソードにおいて訓練の実行計画などについて調整を行った

    【統合幕僚監部 運用部 運用第3課訓練班 西田健悟3等海佐】

     私の役割は、関係部署や陸・海・空各部隊の要望を取りまとめつつ、アメリカ軍と調整することです。アメリカ軍は、新しい戦い方や戦闘の考え方などの開発・研究に積極的で、自衛隊も大いに刺激を受けています。私たちも負けずに、演習や訓練を通じて新しい考えを取り入れ、相互に刺激し合える関係になりたいですね。

    不測の事態を見越してプランを立案

    訓練を行うにあたりコミュニケーションを重視しているというディーン中佐。「お辞儀は、お互いに敬意を表すための名誉ある手段として私にとって興味深いものでした。敬意を表す手段として私も試しています」

    【在日アメリカ軍司令部 軍事訓練課(J37) リチャード・ディーン アメリカ海軍中佐】

     私は、自衛隊とアメリカ軍が常に不測の事態に対応可能な体制を維持できるよう、必要な訓練を計画しました。その結果、円滑に訓練を実施し、驚くべき成果をあげることができました。これからもプロフェッショナルで実直な自衛官たちと、合同訓練の質をさらに上げて、強力な相互サポート関係を構築していきたいと思います。

    米国における米陸軍との実動訓練(Joint Readiness Training Center)

    陸上自衛隊初参加の実戦的大規模演習

    画像: さまざまな状況での訓練に、指揮所や現場などでは隊員同士が密に調整が行われた

    さまざまな状況での訓練に、指揮所や現場などでは隊員同士が密に調整が行われた

     アメリカのルイジアナ州フォートポルク演習場で行われた、実戦的な大規模訓練。建物内の索敵や射撃、拠点の警戒・防護など、さまざまなシチュエーションのもと、アメリカ陸軍と共同で行われた。陸上自衛隊の隊員らが約1カ月に渡り参加した。

    直近実施日:2020年1月2日~2月7日(第1回)/実施場所:アメリカ・ルイジアナ州フォートポーク/訓練目的:日米の共同対処能力、普通科部隊に必要な戦術・戦闘における能力の向上/訓練項目:作戦準備、対抗訓練(防勢作戦、攻勢作戦)、総合戦闘射撃訓練

    極めて実戦的な大規模演習に参加

    「最先端の技術、装備を駆使するイメージのアメリカ軍ですが、サイバー攻撃で電子機器などが使用できない状況下でいかに簡潔に命令するかに着意していたのが印象的でした。自らも実践していきたい」と話す大本2佐

    【東北方面隊 第9師団 第39普通科連隊 連隊本部第3科 大本学2等陸佐】

     この訓練は、現代戦の特性である民族紛争や複数国家の対立という複雑なシナリオや複合的な脅威を反映した、極めて実戦的な大規模訓練です。現地住民がいることを想定した夜間攻撃、化学攻撃への対処、特殊部隊による襲撃対処など、国内では経験することのできない過酷な環境下です。アメリカ軍のチームと連携しながら粘り強く戦うことで、陸上自衛隊の部隊の精強性を誇示できたことが大きな成果です。

    日米共同方面隊指揮所演習(YS-79 通称:ヤマサクラ)

    指揮系統能力の維持・向上を図る

    画像: 貢献した功績により賞状を授与された石田2佐(右)とアメリカ陸軍のデルジャー大佐

    貢献した功績により賞状を授与された石田2佐(右)とアメリカ陸軍のデルジャー大佐

     自衛隊とアメリカ軍が、それぞれの指揮系統に従って共同作戦を実施。日米それぞれの演習部隊の作戦を指導するなどし、共同作戦能力の向上や相互に連携を図った。

    開始:1982年より/直近実施日:2020年12月2~15日/実施場所:健軍駐屯地(熊本県)、朝霞駐屯地(東京都)、キャンプ・コートニー(沖縄県)ほか/訓練目的:共同作戦における指揮幕僚活動の演練、それにかかわる能力の維持・向上/訓練項目:テレビ会議を活用した指揮所演習、島しょ部を含む作戦について日米共同作戦を実施する場合の指揮幕僚活動

    企画段階から携わり、作戦の調整を行う

    共同調整所における当面作戦班長として日米部隊の戦況の把握、作戦の調整などを行った石田2佐。コミュニケーションを取る際は、図面や絵を描いてお互いの理解を深め、認識が合致しているかを確認しているという

    【西部方面総監部 防衛部 訓練課 石田航2等陸佐】

     日米共同方面隊指揮所演習は、年に2回、日米交互の主導で行われ、陸上自衛隊は5個方面隊が持ち回りで実施する、共同作戦の指揮所演習です。アメリカ軍関係者とは、私が企画段階で携わってから足かけ5年半に及ぶ付き合いです。立場が変わっても改めて彼らのプロフェッショナリズムや友情を感じることができました。

    (MAMOR2021年9月号)

    <文/古里学 撮影/荒井健(リチャード・ディーン中佐)>

    自衛隊とアメリカ軍の緊密な関係を探れ!

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