2020年8月、日本製レーダーがフィリピン軍に採用されることが決まった。これは、14年に策定された『防衛装備移転三原則』(防衛装備の移転の考え方を包括的に整理し、その基準や手続きなどを明確にしたもの)に基づいた初の国産完成装備品の移転案件である。
フィリピン空軍に対して、国内メーカーが製造するレーダーの輸出が決定
防衛装備庁プロジェクト管理総括官(航空担当)の後藤雅人空将補は、「フィリピンが警戒管制レーダーを調達するという話を受けて、日本製レーダーの採用に向け、フィリピン国防省や空軍に対する提案活動を行いました。さまざまな国の企業が提案したと聞いていますが、最終的に日本製レーダーが採用されました。同レーダーは、自衛隊で使用しているレーダーの開発経験を持つ日本企業が、フィリピン空軍の要求に合わせて新たに開発・製造するものです」と語る。
22年以降、レーダー4基を順次納入
今回調達されるレーダーは、航空自衛隊で使用している警戒管制レーダーJ/FPS−3の技術を基にした固定式が3基と陸上自衛隊で使用している対空レーダーJTPS−P14の技術を基にした移動式が1基であり、総額は55億ペソ(約110億円)、22年以降順次納入される予定だという。
今回採用となったことについて、「日本側の提案が評価されたことはもとより、日・フィリピン間の防衛協力を通じた信頼関係があったことも大きかったのではないでしょうか。特に、装備分野では、海上自衛隊の練習用航空機(TC−90、5機)や陸上自衛隊のヘリコプター(UH−1H)の補修用部品の譲渡などの具体的な実績があります」と後藤将補は話す。
今回のレーダー輸出は、両国の関係をより深めていくきっかけになるに違いない。
(MAMOR2021年2月号)
<文/井上孝司 写真/山川修一(扶桑社)>