• 画像: 最後尾に位置する4番機にカメラを設置し、9機編隊を撮影。機体同士がわずか数メートルまで近づく演目もあるという。慎重で正確な操縦が求められる

    最後尾に位置する4番機にカメラを設置し、9機編隊を撮影。機体同士がわずか数メートルまで近づく演目もあるという。慎重で正確な操縦が求められる

     プロペラ機で展示飛行をする、海上自衛隊のアクロバット飛行隊、「ホワイトアローズ」。大空に華麗なマニューバを描く“飛行機野郎”の正体は、航空要員を育てる教官たちだ。学生に操縦技術を伝えるため、機体の性能をギリギリまで引き出し、鮮やかに大空をダンスする。

     低空で飛び、ぶつかりそうなほどの距離で見せる「ホワイトアローズ」の華麗な演技の数々。航空祭の中止が相次ぐ中、マモル読者に、13課目(注)の全てをWeb上で披露しよう。

    (注)13課目で構成される展示飛行は「KINGパターン」と呼ばれる。天候によっては9課目による「QUEENパターン」を行う

    国防の空を舞う、華麗なる13の曲技飛行

    ※イラスト中の番号は1番機から4番機を表し、技の動きはAからCで表した。

    デルタ・フォーメーション離陸

    画像: デルタ・フォーメーション離陸

    1番機から3番機がデルタ形(三角形)のフォーメーションで離陸。続いて4番機が離陸し1番機の真後ろに移動。機体同士の間隔を約3メートルまで 近付け、ひし形のダイヤモンド隊形を作る。

    ファン・ブレイク〜アローヘッド

    画像: ファン・ブレイク〜アローヘッド

    Ⓐ4機がダイヤモンド隊形を維持しながら会場側に機体を60度傾け通過する(ファン・ブレイク)。その後、Ⓑ1番機を先頭に弓矢の先端をイメージした隊形に変わる(アローヘッド)。

    アローヘッドクロス〜ジャックナイフ

    画像1: アローヘッドクロス〜ジャックナイフ
    画像2: アローヘッドクロス〜ジャックナイフ

    Ⓐアローヘッド隊形から後方の2番機と4番機が交差し分かれる(アローヘッドクロス)。交差して分かれたⒷ2機はそれぞれ左右から進入し、ギリギリですれ違うⒸ。

    アウトストリップ

    画像: アウトストリップ

    Ⓐ1番機が時速約220キロメートルから減速し、飛行機としては遅い時速約130キロメートルで会場前を飛行する。Ⓑその脇を、時速約330キロメートルまで加速した3番機が一気に追い抜く。

    スティープターン&ハーフクローバーリーフ

    画像: スティープターン&ハーフクローバーリーフ

    4番機が旋回し、Ⓐ左右に1回ずつ円を描く(スティープターン)。その後、Ⓑ上昇と下降、旋回しながら四つ葉のクローバーの4枚の葉のうち、対角線上の2枚の葉を大空に描く(ハーフクローバーリーフ)。

    テイルチェイス・レイジーエイト

    画像: テイルチェイス・レイジーエイト

    Ⓐ1番機から3番機が縦1列、等間隔に並んだまま連続して上昇と下降、旋回を行う(テイルチェイス)。Ⓑこの隊形を維持しながら片円を描き、もう片円で隊形を変えつつ横8の字を描く(レイジーエイト)。

    Wエルロンロール&シャンデル

    画像: Wエルロンロール&シャンデル

    4番機が会場に向かって一直線に飛びながらⒶ左右両方向に横転(W(ダブル)エルロンロール)。Ⓑ1回ずつ回転後、上昇しながら左旋回を続けて(シャンデル)会場を離れていく

    バーティカルブルーム

    画像: バーティカルブルーム

    Ⓐ1番機から3番機が会場正面から進入。編隊を組んだまま急上昇し、垂直になったところでⒷ3機がそれぞれ左右と真っすぐの3方向に分かれ、大空に花を咲かせるように展開をする。

    ループ・エルロン・インメルマン

    画像: ループ・エルロン・インメルマン

    4番機が加速後、Ⓐ宙返り(ループ)し、Ⓑ機体を右に傾け360度横転する(エルロン(ロール))。Ⓒ会場後方から進入し、宙返りの途中、背面状態から機体を回転させ、進入方向に離脱する(インメルマン(ターン))。

    ローリング・コンバット・ピッチ

    画像: ローリング・コンバット・ピッチ

    1番機から3番機が横斜め1列に並んだ隊形を作り、Ⓐ先頭の1番機から順番に編隊から分かれて宙返りを行っていく。Ⓑその脇を4番機が高速・低空飛行で進入し、会場前を通過する

    ルーキー・ランデブー

    画像: 4機が縦列になった状態からダイヤモンド形に広がる「ルーキー・ランデブー」

    4機が縦列になった状態からダイヤモンド形に広がる「ルーキー・ランデブー」

    画像: ルーキー・ランデブー

    ローリング・コンバット・ピッチでばらばらに分かれた4機がⒶ縦1列の隊形に集合し、ダイヤモンド隊形で会場正面を横切る(P30写真)。Ⓑ上昇しながら1番機を先頭に横斜め1列に並ぶ

    レインボーブレイク

    画像: レインボーブレイク

    ルーキー・ランデブーの横斜め1列の隊形を維持したままⒶ会場に向かって4機が進入。Ⓑ1番機から順番に急上昇と旋回をしながら隊列から離れていく。各機が描く半円の軌道が重なり、虹のように見える

    ローパス〜着陸

    画像: ローパス〜着陸

    レインボーブレイクで隊列から離れた1番機から順番に、低高度で滑走路に進入し着陸。当日の天候や風の影響を考慮しながら、滑走路の左か右のどちらかの方向から着陸する。着陸後、T-5は駐機場に移動する

    (注)13課目で構成される展示飛行は「KINGパターン」と呼ばれる。天候によっては9課目による「QUEENパターン」を行う

    小月航空基地で運用される練習機T-5

    サイド・バイ・サイド式の小回りの利くプロペラ機

    画像: 機長(左)と副操縦士の座席が並列に配置されたT-5の操縦席。海自で運用するP-1哨戒機(※)やP-3C、各ヘリコプターも同じサイド・バイ・サイド式だ

    機長(左)と副操縦士の座席が並列に配置されたT-5の操縦席。海自で運用するP-1哨戒機(※)やP-3C、各ヘリコプターも同じサイド・バイ・サイド式だ

     海上自衛隊で運用される航空機はどれも複数の搭乗員が乗り込む大型機のため、練習機T-5も機長席と副操縦士席が横に並んでいるサイド・バイ・サイド式のコックピットとなっている。

     ちなみにこのサイド・バイ・サイド式のプロペラ機のアクロバットチームは世界でも非常に珍しい。操縦かんも戦闘機のようなスティックタイプではなく、自動車のハンドルのように両手で操作できるヨークタイプである。T-5は富士重工業(現スバル)が開発し、1989年に飛行教育用に小月航空基地に導入された。

     T-5の特徴は、コックピットからの視界が良く、飛行安定性に優れ、操縦しやすい。T-5が搭載している型のエンジンの出力は420馬力だが、教育用に使用する目的で350馬力にまで制限している。

    <SPEC>
    全幅:10.0メートル 全長:8.4メートル 全高:3.0メートル 全備重量:約1800キログラム 乗員:4人 最大速度:時速約355キロメートル 出力:350馬力

    「ホワイトアローズ」の曲技飛行を動画でチェック!

    画像: 【超絶技巧】海上自衛隊 アクロバットチーム ホワイトアローズ (動画5分)~JMSDF Aerobatics Flight Team WHITE ARROWS 5min ver~ youtu.be

    【超絶技巧】海上自衛隊 アクロバットチーム ホワイトアローズ (動画5分)~JMSDF Aerobatics Flight Team WHITE ARROWS 5min ver~

    youtu.be

    出典:「【超絶技巧】海上自衛隊 アクロバットチーム ホワイトアローズ (動画5分)~JMSDF Aerobatics Flight Team WHITE ARROWS 5min ver~」(防衛省 海上自衛隊 公式チャンネル) (https://youtu.be/v115fwKPE3s

    (MAMOR2021年3月号)

    <文/古里学 写真/長尾浩之 イラスト/永井淳雄>

    国防の空を舞う華麗なる飛行機野郎たち

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