自衛隊が活動するためには国民の理解と協力が不可欠。また、精強さを保つためには常に若い新入隊員が必要だ。そのため、自衛隊はポスターや各種刊行物の発行、イベント開催などさまざまな広報活動を行ってきた。近年は動画投稿サイトなど、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用に注力している。その実態を紹介すべく令和の広報を特集してみた。
元自衛官タレント・かざりさんもオススメ! 注目の自衛隊YouTube動画
防衛省・自衛隊では、動画投稿サイトYouTubeにて、陸・海・空各自衛隊をはじめ、部隊や地方協力本部などが、13(2月15日時点)の公式チャンネル(注)を開設し動画配信を行っている。今回はその中から、元・自衛官タレントで人気ユーチューバーかざりさんにオススメの動画を8本選んでもらい、それぞれに寸評をいただいた。
(注)企業や官公庁などがYouTubeに登録してプロモーションなどの動画発信を行うことができるサービス
【艦Tube】護衛艦のエンジンを起動してみた!
最新護衛艦『まや』の艦内リポート。隊員の解説のもと、エンジンを起動!
海上自衛隊公式チャンネルのシリーズ動画「艦Tube」(かんつべ)の艦艇第2弾。軟らかい雰囲気でYouTube的な「親しみやすさ」を前面に出した演出、編集、構成となっている。
再生時間▶5分7秒 累計再生数▶158万1497回 関連動画本数▶11本 (2021年2月15日時点)
2020年3月に配備された、海上自衛隊の最新護衛艦『まや』が広報動画として初登場。護衛艦の動力として重要なガスタービンエンジンや、各種機器の運転·監視を行う「操縦室兼応急指揮所」の様子をメインに、艦艇の魅力を余すところなく公開している。動画内では、エンジン始動の手順や、起動後には異常がないか監視・点検することなど、『まや』で勤務する隊員が詳しく紹介してくれる。
かざりチェック!
「まず、登場する自衛官の方々のテンションが高くて、見ていて楽しいです(笑)。護衛艦内部の映像というだけでも貴重なのに、なんとエンジンまで詳しく見ることができるとは……! 海上自衛隊さん、太っ腹です。エンジン起動までの流れや、隊員さんの動きが分かりやすい動画に仕上がっているので、オススメです」
【週刊海自 TV:海自女子】救難飛行艇「US-2」パイロット
女性隊員が想いを語る「私がパイロットを目指した理由」
海上自衛隊で活躍する女性隊員が登場する「海自女子」シリーズ。ほかにも護衛艦乗組員などが登場。
再生時間▶2分40秒 累計再生数▶365万8112回 関連動画本数▶9本(2021年2月15日時点)
行方不明者の捜索や洋上に着水しての救難などを任務とするUS−2救難飛行艇の、現在ただ1人の女性パイロットにインタビューした動画。パイロットを目指したきっかけや、印象深いフライトの思い出、US−2の魅力、女性パイロットとしての想いなどについて語っている。
かざりチェック!
「女性隊員が出演している動画が好きです。私が入隊したのも、自衛官の働く姿を見たことがきっかけなんです。なかなか知ることのできない女性海上自衛官のお仕事を動画で見て、視聴者の方が憧れてくれたらいいですね」
2020年8月19日 ブルーインパルス訓練飛行ライブ配信 総集編(空中撮影動画追加Ver.)
機内からの映像も見られる! アクロバティックなブルーの飛行展示
機内からの撮影映像と、地上からの撮影映像を組み合わせてあるのがポイント。外から見る演目と機内からの様子を見比べてみよう。
再生時間▶52分19秒 再生回数▶40万2937回 (2月15日時点)
航空自衛隊のことを多くの人に知ってもらうために、全国各地の航空祭や国民的な行事などで華麗な飛行を披露するアクロバットチーム「ブルーインパルス」。この動画は、航空自衛隊チャンネルで配信された、ブルーインパルスの飛行訓練ライブを編集したもの。パイロットの紹介や離陸シーンといった、地上から撮影したさまざまな映像はもちろん、飛行演技中のコックピット内から撮影した映像も交えられており、迫力満点。高度な技術に支えられた美しい飛行シーンは、ファンだけでなく、ブルーインパルスを知らない人にも見てもらいたい1本だ。
かざりチェック!
「自衛隊の航空機が飛行する様子は、たくさんYouTubeにアップされているのですが、中でもこの動画は、ブルーインパルスが実際に飛行している様子を機内から見ることができるところが、楽しすぎます! ぜひ、ほかの航空機でも見てみたい……! 私はC-2も大好きなので、個人的には、新しい輸送機C-2のコックピットまわりとか、とても興味があります。航空自衛隊さん、お願いします!」
【キャンプ企画 第1弾】6人用天幕たててみた【自衛隊公式】
現役自衛官ユーチューバーの3人がゆる~く天幕を組み建てるアウトドア動画
フランクな雰囲気の動画だが、隊員の会話を字幕で表示するなど視聴者が見やすい工夫が施されている。天幕の仕組みや部品の名前、建て方の手順もきちんと紹介されているので、初めて見る人でも楽しめる。
再生時間▶9分46秒 累計再生数▶10万8862回 関連動画本数▶2本 (2月15日時点)
陸上自衛隊中部方面隊が配信している動画。同チャンネルの視聴者から要望が多かったキャンプ企画、その第1弾として天幕(テント)を建てる様子を収録した。お面などで顔を隠した3人の現役隊員(ひょっとこ曹長、おかめ3曹、ギリー2曹)が登場し、適度に解説を挟みつつ、ゆるい会話を繰り広げながら作業する様子が面白い。続編として「戦闘用糧食 たべてみた」も配信されているので、あわせてチェックしてみよう。
かざりチェック!
「中部方面隊の公式チャンネルで、しかも現役の自衛官がユーチューバーとして自衛隊の魅力や装備を紹介しています。この動画では、ただ天幕を建てているだけなんですが、合いの手やコメントなどがめちゃくちゃ面白い!現職の隊員にこんなことされたら私の立場がないです(笑)。できたら一緒に作業するなど、コラボしてみたいですね!」
令和2年度富士総合火力演習
戦車や装甲車による、大迫力の実弾射撃をライブ中継
一般公開していたときは抽選倍率約30倍の人気イベント。動画なら必ず見られる。
再生時間▶2時間33分13秒 再生回数▶675万6251回 (2月15日時点)
毎年、陸上自衛隊東富士演習場で行われる「富士総合火力演習」。一般国民も観覧できる実弾演習とあって大人気で、その抽選倍率は約30倍に達したことも。2020年度は新型コロナの影響もあり、無観客で実施、ライブ中継されたのがこの動画だ。戦車や火砲などによる迫力のある射撃シーンなど、見応え十分の内容だ。
かざりチェック!
「戦車の隊列をドローンで捉えた映像が美しく、ほれぼれしちゃいます。地上からは見られない角度からの映像がとてもいい!『私も現職のころ、現地で見学したなあ』と、少し懐かしい気持ちになります(笑)」
高機動パワードスーツの研究試作(先進技術推進センター)
自衛隊の秘密兵器!? 研究中の先進装備を公開!
同チャンネルでは、ほかにも戦闘機用エンジンの研究など貴重な動画が公開中だ。
再生時間▶6分7秒 再生回数▶44万2885回 (2月15日時点)
防衛装備庁の公式チャンネルで公開中の動画。人体に装着して隊員の動作を補助する、外骨格型のパワードスーツの実用化に向けた試作品を紹介している。重量物を持ったり、継続して走るときの人体にかかる負荷を軽減できたり、足元が悪い場所でもバランスを制御できるなど、今すぐにでも災害派遣などに役立ちそう。
かざりチェック!
「実際に隊員さんが装着して走ったり、人形を背負って山の中を歩いたり。私も装着してみたい! 自衛隊がパワードスーツを研究していることはあまり知られていないのでは? その意味でも、貴重な映像です」
【決定版】航空学生75期によるファンシードリル
一糸乱れぬ、統率されたパフォーマンスが美しい
動画では、学生たちが、課業外の時間を使って訓練を重ねた成果が披露される。統制がとれた、びきびとした動作が美しい。
再生時間▶20分57秒 再生回数▶24万3057回 (2月15日時点)
ライフルを使った動作を、見せる演技に昇華させたものがファンシードリルだ。打楽器のリズムに合わせ、全員の動作が寸分の狂いもなくそろっているところに注目したい。この動画は、山口県の航空自衛隊防府北基地で収録されたもの。空自のパイロットを目指す学生たちが、精神鍛錬の一環として行ってきた成果をぜひご覧あれ。
かざりチェック!
「音楽イベントなどで目にする機会があるファンシードリルですが、航空自衛隊の航空学生もやっています。フォーメーションを組んだり行進したりと、フレッシュで爽やかな、彼ら彼女らの演技に注目です!」
「自衛隊のソレ、誤解ですから」シリーズ
自衛隊のネガティブなイメージを、現役隊員がすがすがしく否定。
動画には、現職の隊員らが多数出演。下記の画像は「先輩って怖い?」の質問に答える隊員
累計再生時間▶9分10秒 累計再生数▶ 26万22311回 動画本数▶12本
動画には、現職の隊員らが多数出演。写真は「先輩って怖い?」の質問に答える隊員
「先輩怖い?」や「集団生活厳しそう」など、これから自衛隊を目指そうという人に向けて、不安や疑問を解消する動画シリーズ。それぞれの動画が短くまとまっていて見やすい。寄せられた疑問や不安には、「みんな優しい」、「女子(男子)校みたい」など、現職自衛官が登場して答えているので、説得力がある。
かざりチェック!
「私が入隊したときはこんな動画が無かったので、入隊前、正直手探りでした(笑)。広報官の方が丁寧に説明してくれましたが、コロナ禍で直接やりとりするのも難しい昨今、動画で不安を解消できていいかも!」
(MAMOR2021年5月号)
<文/臼井総理 写真/増元幸司>