•  陸上自衛隊には、オートバイを自由自在に操り山河を駆け巡って情報を集める部隊がある。そんな陸上自衛隊偵察隊が有する偵察用オートバイには、オートバイだからこそ可能な運用方法がたくさんある。ここではその代表的な使用法を紹介し、いかにオートバイが偵察部隊にとって有用な存在なのかを説明しよう。

    4輪車が入れない道にも進入できる

    画像: 木が密集する山林でもオートバイなら進むことが可能だ。倒木のみならず、がれきなどで前方がふさがっていても、乗り越えたり、いざとなれば人力で押したりして進入できる

    木が密集する山林でもオートバイなら進むことが可能だ。倒木のみならず、がれきなどで前方がふさがっていても、乗り越えたり、いざとなれば人力で押したりして進入できる

     オートバイは4輪車に比べて車体もエンジン音も小さいことから、隠密効果が高く敵から発見されにくいという利点がある。また、山林や、やぶの中など4輪車が乗り入れられない場所でも走行することができ、荒れた地形や獣道などにも入っていける。

     例えば倒木や段差などがあっても、ジャンプして乗り越えることが可能。広い範囲を、敵に見つからずくまなく偵察するには機動力が必要で、悪路走破性の高いオートバイはとても有効な手段なのだ。

    無線の中継所として運用できる

    画像: 携帯無線機はオートバイから取り外し、写真のように背負うなどして持ち運ぶことが可能。隊員が歩いて山の稜線などに出て、離れた場所同士の無線を中継することもある

    携帯無線機はオートバイから取り外し、写真のように背負うなどして持ち運ぶことが可能。隊員が歩いて山の稜線などに出て、離れた場所同士の無線を中継することもある

     偵察隊は広範囲に散らばって展開するため、互いに無線で連絡をとることは特に重要となる。偵察用オートバイに搭載している携帯無線機は、機種によって自動中継機能を備えているものがあり、無線が届かない場所同士をつなぐ中継所として運用できるという。

     もしその機能がない無線機であっても、隊員が伝言ゲームのように口頭で離れた場所同士の連絡を無線で伝える場合もあるほか、無線ではなく直接オートバイで伝令として走ることもある。

    ゴムボートに載せて渡河できる

    画像: 偵察用ボートは最大オートバイ1台と5人の隊員を積むことが可能。小銃を構えて周囲を警戒しながら、左右の隊員がオールでこいで進む(写真提供/防衛省)

    偵察用ボートは最大オートバイ1台と5人の隊員を積むことが可能。小銃を構えて周囲を警戒しながら、左右の隊員がオールでこいで進む(写真提供/防衛省)

     敵に見つかってしまうため橋を利用できない場合や、橋がない川を渡る場合は、ゴムボートにオートバイを載せて渡河することもできる。偵察隊はそのための偵察用ボートを保有している。積む際は岸に対して直角にボートを付け、オートバイを立てて積み、ロープで固定する。

     ボートの床はスノコ状になっており、意外と安定性は高いという。船外機を使う場合もあるが、隠密性を保つ理由などから、ほとんどが手こぎだという。

    ヘリで遠くまで一気に運べる

    画像: ヘリコプターから降ろしたあと、すぐにエンジンをかけて走り出せるのがオートバイの利点。偵察部隊の機動力を大いに高めてくれる存在だ(写真提供/防衛省)

    ヘリコプターから降ろしたあと、すぐにエンジンをかけて走り出せるのがオートバイの利点。偵察部隊の機動力を大いに高めてくれる存在だ(写真提供/防衛省)

     オートバイは小型で軽量のため、ヘリコプターに搭載して遠くまで一気に複数台を運ぶことが可能だ。演習で広域に展開する場合のほか、災害派遣時も交通網が寸断された被災地の中に迅速に展開し、速やかに情報収集活動を開始することができる。

     ちなみにUH−60JAには最大3台、CH−47Jなら最大6台の搭載が可能。搭載する際は揺れても動かないようしっかり固定するのはもちろん、ヘリ内部や搭載器材を傷つけないよう細心の注意を払う。

    (MAMOR2021年8月号)

    <文/野岸泰之 撮影/楠堂亜希>

    自衛隊ライダー、参上!

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