洋上不時着に備え、生き残るための水泳訓練を行うパイロットたち
鹿屋航空基地(鹿児島県)にある「水中脱出訓練装置」。機体が傾きながら沈むケースも再現できる
陸・海・空自衛隊を問わず、航空機のパイロットも泳ぎの訓練を行っている。万が一、洋上に不時着した際に、沈む機体から脱出する「水中脱出訓練」と、救助が来るまでの間、生き残るために必要な泳力とスキルを養う「救命生存訓練」がそれだ。
脱出で何より必要なのは"冷静さ"

救命胴衣を使用して水に浮き、航空機に備え付けの救命ボートに乗り込む訓練を行う陸自パイロット
脱出訓練は、実物大の座席や操縦かんなどコックピット内を再現した機体模型内に搭乗員が乗り込み、それをそのままプールの中に沈め、搭乗員は浸水してくる機内でシートベルトを外し、パイロットスーツやヘルメットを着用したまま水面まで浮上するというもの。
P−1哨戒機の副操縦士を務める北原2等海尉によると、「真っすぐ沈むだけでなく、いろんな動きが再現されるので、難易度もさまざまです」。どんどん機内に水が入ってくる状態は想像以上に怖さがあり、手順を踏んで脱出するには冷静さが何より必要なのだそうだ。
もはやサバイバル訓練!?脱出後の泳力とスキルを養う「救命生存訓練」とは?

救命胴衣を着用し、訓練用ボートから投げられた1本のロープにつかまって海面に浮かぶ冬期救命生存講習
脱出した後、パイロットは航空機に搭載されている救命ボートに乗り移り、救命用品の使用法や雨風、日差しを防ぐ方法などを学ぶ。
CH−47JA輸送ヘリコプターを操縦する前田3等陸尉の説明では、「装備しているボートだけでなく、着用している被服を使って簡易的な浮き輪のようなものを作る浮体技術の訓練も行う」とのことで、まさにサバイバル訓練そのものだ。
「海自では氷点下の水上で救命ボートに乗って海上を漂流する冬期救命生存講習も行っています」とSH−60K哨戒ヘリコプターを操縦する木村2等海尉が言うように、事故は季節を選ばない。
パイロットたちはどんな環境でも自分の命を守り、生き残るための泳ぎを習得しているのだ。
(MAMOR2026年7月号)
* * *
<文/古里学 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
* * *

