どんな部隊に配属:佐世保の司令部の下、全国の水中処分隊に配属
海中の爆発物に近づこうとする水中処分員。音や水圧に反応する爆発物もあるため、静かな泳ぎを心掛ける
海面や海中に敷設されている機雷を処分して航路を安全にすることを任務とする機雷戦隊などからなる海上自衛隊水陸両用戦機雷戦群は、司令部のある佐世保基地(長崎県)をはじめ、横須賀(神奈川県)、呉(広島県)、舞鶴(京都府)、大湊(青森県)、勝連(沖縄県)の各基地に水中処分隊を有している。実際に機雷などの爆発物の除去を担当する水中処分員は、これらの各隊に配属されている。
どんな任務:水中の爆発物の処理を担当。繊細さと大胆さが必要
爆破を許可された海域で、ゴムボート上から機雷を爆破させるための導火線に火をつける
水中処分員は、ウエットスーツを着、酸素ボンベを背負い、フィンを付け、最大で水深50メートルまで潜水し、不発弾や機雷などの危険物の捜索、調査、爆破、処分を行うのが任務だ。
危険物が水中で発見された場合、掃海艇で近くまで向かい、そこから水中処分員がゴムボートに乗り換えて、さらに危険物に接近してから入水し、目視や触診によって危険物の種類などを識別する。不発弾や機雷はかごに集めて流出防止の措置をし、浮きを付けて海面近くまで浮上させたら、ゴムボートにロープでつなぐ。その後、爆破を許可された海域まで慎重にえい航し、処分員が雷管をセットして爆破処理する。
濁って視界のきかない海中や夜間、気象・海象条件の悪い中での作業や、上空のヘリコプターからロープで水上へ降下することもあるなど、常に危険と隣り合わせの任務となる。
求められ能力:爆発物に刺激を与えない静かな泳ぎが求められる
水中処分員になるには「開式スクーバ課程」、「潜水課程」に加え、「水中処分課程」を修了しなければならない。三上3等海曹によると、「音や水圧に反応する爆発物があるので、現場では静かに緻密な作業が安定してできる泳ぎが求められます」とのこと。
脚だけで上体を安定させるような泳ぎをしたり、時には逆立ち状態を保ったまま両手で作業することもあるそうだ。
訓練で大変なこと:爆発物に刺激を与えない静かな泳ぎが求められる
呉基地(広島県)の水中処分隊に所属する三上3曹は、呉港の沖合に浮かぶ大麗女島周辺で訓練を行っている。訓練用の模擬機雷とはいえ、濁って視界がきかない海中を手探りで捜索し識別・処理するときは、恐怖心や不安を覚えることもあるという。「落ち着いて冷静に作業を進めることができたときは、大きな自信につながります」。
取材した人:呉水中処分隊 水中処分員 三上3等海曹
水中処分員歴は1年6カ月。得意な泳法は平泳ぎ。「『泳ぎ』は、海中で作業をする私たちにとって必要不可欠なものです」
自衛隊にはスイミング・スクールがある
陸・海・空各自衛隊に入隊すると、教育隊に配属され、水泳能力テストを受ける。50メートルを60秒以内に泳ぎ切れないと特訓を受けるので、基本的には泳げない隊員はいない。さらに、専門的な水泳を習得する学校、課程があるので紹介しよう。
【海上自衛隊・第1術科学校】
広島県江田島市にある、砲術や水雷、航海、通信など、艦艇の乗員として必要な知識と技能を習得させるための教育訓練などを行う学校で、潜水科では以下の教育が、上から段階を経て行われている。
●開式スクーバ課程(約7週間)潜水員の基礎技術を習得し、開式スクーバ(空気ボンベ)を使用して水深約20メートルまでの水中作業を行える能力を身に付ける。
●潜水課程(約15週間)より高度な潜水技術を習得し、開式スクーバを使用して水深約40メートルまでの水中作業を行える能力を身に付ける。
●水中処分課程(約12週間)機雷や不発弾の捜索・処分に関する知識と技術を習得し、半閉式スクーバ(呼気を循環させて再利用するため、泡が少なく静粛性が高い)を使用して水深約50メートルまでの水中作業を行える能力を身に付ける。
【海上自衛隊・潜水医学実験隊】
潜水病や気圧障害(潜水障害)などを扱う潜水医学に関して、調査研究や教育訓練などを行っている海上自衛隊の部隊で、横須賀基地(神奈川県)に所在。ここでは、飽和潜水技術を持つ隊員の養成も行われている。
●飽和潜水課程(約16週間)深海で長時間の作業ができるように、潜水士の体をあらかじめ高圧環境に順応させて潜水を行う「飽和潜水」の技術と知識を習得し、混合ガス(ヘリウムと酸素)の潜水器を使用して水深約450メートルまでの水中作業が行える能力を身に付ける。
【陸上自衛隊・水陸機動教育隊】
相浦駐屯地(長崎県)にある、水陸機動団の隊員であるための基本教育を行う部隊。「水路特技」などを教える第1教育科と、AAV7に関する教育を担当する第2教育科などがある。
●水陸両用基本訓練課程(約5週間)訓練は水上・陸上を問わず多岐にわたるが、主に水上では、偵察用のボートを手こぎで動かしたり、船外機で航行させる操縦技術、小銃や弾倉などを装着した状態で泳ぎ、危険水域から速やかに離脱する洋上での生存技術を習得する。また、洋上に不時着したヘリコプターからの脱出訓練も行われる。
【航空自衛隊・救難教育隊】
小牧基地(愛知県)にある、自衛隊機が遭難した場合に救難に携わる隊員を育成する部隊。体力検定と水泳検定、身体検査などで選考基準をクリアした者が着隊し、教育を受ける。
●救難員課程導入教育(約6カ月)+救難員課程教育(約6カ月)訓練は水上・陸上を問わず多岐にわたるが、水泳訓練では、長時間水中で活動するための体力はもちろん、パニック状態になった要救助者の救出法などを学んだり、海上行動訓練ではダイビング技術などを学ぶ。
(MAMOR2026年7月号)
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<文/古里学 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
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