報道で耳にすることもある、軍隊の「特殊部隊」。彼らの活躍を描いた映画やドラマも数多くありますが、実際どんな人が所属していて、どんな活動をしているのでしょうか?
マモルの広報アドバイザー・志田音々さんがインタビュアーとなり、防衛省防衛研究所の戦史研究センター 安全保障政策史研究室にて室長を務める塚本勝也さんに「特殊部隊」について教えていただきました。
【志田音々さん】
1998年、埼玉県出身。2023年から防衛省広報アドバイザー(注)を務める
(注)防衛省・自衛隊の各種広報活動に協力することを目的として2023年に設けられた制度のこと
【塚本勝也さん】
防衛省防衛研究所の戦史研究センター 安全保障政策史研究室にて室長を務める。専門は、安全保証論。共編著書に『戦略原論』(日本経済新聞出版)など
特殊部隊ってなに?

パラシュート降下に向けた装備点検を行う、アメリカ陸軍第10特殊部隊(グリーンベレー)の隊員たち 出典/Defense Visual Information Distribution Service
志田音々(以下「志田」):最近、報道で耳にしたのですが、軍隊の特殊部隊って何ですか?
塚本勝也(以下、「塚本」):通常の部隊では対応しにくい任務を、少人数で目立たず遂行する部隊です。政治的に微妙な地域や敵国の領土など、アクセスが難しい場所で行う「特殊作戦」を専門とします。
志田:昔からあるのですか?
塚本:近代的な特殊部隊が活躍し始めたのは第2次世界大戦期です。その後、冷戦期には各地のゲリラへの対処、21世紀に入るとテロ対策が主な任務となり、各国で整備が進みました。
2011年にアメリカが行ったオサマ・ビンラディン急襲作戦では、シールズを中心にした約20人の隊員がヘリコプターでパキスタン北西部の潜伏地に乗り込み、40分で制圧したと言われています。
志田:世界にはどんな特殊部隊があるのでしょうか?
塚本:アメリカ陸軍のグリーン・ベレーやデルタフォース、海軍のシールズ、警察のSWAT、イギリスのSAS、ロシアのスペツナズなどが有名です。
近年では中国も特殊部隊を増強しており、主力部隊の作戦を支援する数万規模の要員を擁しているとみられています。北朝鮮も、韓国を混乱させる目的で特殊部隊を保有しており、韓国の分析では約20万人に達するともされています。
また、ウクライナも約5000人規模の特殊部隊を保有しており、ロシア占領地での抵抗活動や前線・後方で活動することでロシアに対し心理的プレッシャーをかけているとされています。
一方、日本にも、ゲリラや特殊部隊への対処を任務とする陸上自衛隊の「特殊作戦群」や、不審船などに乗り込み武装解除や無力化を任務とする海上自衛隊の「特別警備隊」という部隊があります。
教養とサバイバル能力を兼ねそろえた部隊

2021年、グアム島とその周辺海域で行われた共同訓練で、アメリカ海軍、インド海軍の特殊部隊と戦術訓練を行った海上自衛隊の特別警備隊 写真提供/防衛省
志田:特殊部隊が活躍する映画はいくつもありますけど、本当にあんな強いのでしょうか?
塚本:誇張もありますが、事実に近い面も多いです。少人数で敵地に潜入し、短時間で任務を終えて撤収する、といった作戦を現実に行っています。特殊部隊は「修士号を持つ、ヘビを食べる人々」ともいわれます。高い学歴や教養と、極限状態で生き抜くサバイバル能力の両方が求められるという意味です。
志田:どうして、そこまで知識や教養が必要なんでしょうか?
塚本:外国語に加え、他国の歴史や文化、宗教への理解が欠かせないからです。判断力やコミュニケーション能力も重要です。
志田:最前線で戦うのが専門、というわけではないんですね。
塚本:人質救出やテロ制圧などの軍事行動は分かりやすい役割ですが、それだけではありません。現地の軍や警察への訓練・教育、現地の人々への支援、地域の安定化や情報収集、協力関係を結ぶなど、「戦わなくて済む状況をつくる」という仕事も大きな任務です。
志田:そんなに能力の高い人たちなら、もっと人数を増やせばいい気もしますが……。
塚本:特殊部隊には「ハードウエアより人間が重要」、「量より質」という考え方があります。アメリカ陸軍では、特殊部隊に入るための24日間の選抜試験があって受験者の30~40パーセントが合格し、そこからさらに53週間の訓練を経て初めて隊員の資格を得ることができます。優れた隊員を育てるには、選抜から教育、実戦的な訓練まで多くの時間とコストが必要で、簡単には増やせません。
志田:特殊部隊が活躍する映画やドラマの見方が、ちょっと変わってきそうです。ありがとうございました。
(MAMOR2026年2月号)
<文/古里学 写真/村上由美(人物)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです


