ニュースで耳にする「軍事パレード」。一体、なんのために行うのでしょうか?
マモルの広報アドバイザー・志田音々さんがインタビュアーとなり、防衛省防衛研究所の地域研究部中国研究室にて主任研究官を務める杉浦康之さんに「軍事パレード」について教えていただきました。
【志田音々さん】
1998年、埼玉県出身。2023年から防衛省広報アドバイザー(注)を務める
【杉浦康之さん】
防衛省防衛研究所の地域研究部中国研究室にて主任研究官を務める。専門は、現代中国政治外交史、現代中国の国防政策。著書に『「新たなる戦争」の諸相』(インターブックス)
(注)防衛省・自衛隊の各種広報活動に協力することを目的として2023年に設けられた制度のこと
軍事パレードってなぜ行うの?

中国では2025年9月3日、戦争勝利80周年を記念して大規模な軍事パレードが開催された。写真は、15年に実施された戦争勝利70周年記念軍事パレードのもの
志田音々(以下、「志田」):2025年5月にロシアが、アメリカも6月に34年ぶりに実施したとか、9月には中国も大規模に開催したなど、最近、続けて軍事パレードのニュースを見たのですが、なんのためにやるのでしょう?
杉浦康之(以下、「杉浦」):中国やロシアのような権威主義国家は、自分たちの軍事力を各国に見せつけるためというのが軍事パレードの大きな目的ですね。
特に今回の中国の軍事パレードは、大きく3つの目的があると思われます。まず、このパレードは「抗日戦争および反ファシズム戦争勝利80周年記念軍事パレード」と銘打たれているように、日中戦争での勝利とその後の繁栄は中国共産党の指導の下で実現した、つまり中国共産党の指導の正当性を国民に理解させるというのが1つ目の目的です。
2つ目は台湾問題を視野に入れ、最新鋭の兵器を台湾とアメリカ、その同盟国に見せつけることで、中国と戦っても勝利できないと思わせることです。実際に有事になれば非常にコストがかかりますから、できれば中国も戦争は避けたいと思っているはずです。
志田:威嚇して戦わずにして勝とうとするための軍事パレードということですね。
杉浦:そうですね。そして3つ目は、現在の第3期習近平体制は22年よりスタートしましたが、これまでに軍高官の失脚が相次いだので、改めて軍への統制力を周囲に示すという目的が考えられます。
志田:ロシアはウクライナに侵攻中ですが、そんな時にパレードを行う意味はあるのですか?
杉浦:まだまだロシアには余力があるんだぞというアピールでしょう。
志田:テレビでも見ましたが、あのように整然とした行進をするには、かなり練習が必要ですね?
杉浦:中国は今回、3回全体の予行演習をやっていて、その前にも各部隊で練習しているはずです。足の上げ方、手の振り方などに厳しい統制がかかり、間違えたら大変なことになるので、兵士はものすごくプレッシャーを感じているはずですよ。
軍事パレードをニュースで見るときのポイントは?

2025年6月14日に行われた、アメリカ陸軍創設250周年を祝う軍事パレード。兵士約7000人が行進した 出典/Defense Visual Information Distribution Service
志田:軍事パレードはいつごろ、どこで始まったのでしょうか?
杉浦:古代中国の周の時代(紀元前1046~256年)には既に行われていたと言われています。
日本でも源義経が軍馬の行進や演武を披露する「馬揃え」を1184年の浮島ヶ原(現在の静岡県沼津市)で行っていますし、艦艇の軍事パレードにあたる観艦式はイギリスで1341年に行われました。定期的に行われている軍事パレードで最古のものはフランスで、1880年が始まりです。
いつでもどこの国でも、軍隊があればその力を見せつけるために、また戦争に勝てば戦勝パレードを行っていたはずです。
志田:私たちがニュースなどで軍事パレードを見て、そこから分かることってありますか?
杉浦:われわれ専門家のように、登場した最新兵器などから、その国の軍事力を正しく評価するのは難しいですが、その背後にある思惑を推測することができるかもしれませんね。
たとえば中国は、今回、主力戦闘機の映像を大々的に公開しましたが、それは自信の表れでしょう。また、その一方で、各国へのサイバー攻撃への関与が取りざたされているせいか、サイバー関連部門の兵器の紹介は限られていました。
志田:なるほど。軍人の動きがそろっていてスゴイとか、ミサイルが大きい! とか、ただ驚くだけではなく、これからは、もうちょっと深掘りするようにしなきゃ。
<文/古里学 写真/増元幸司(人物)、宮嶋茂樹(中国軍事パレード)>
(MAMOR2026年1月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです


