•  陸上自衛隊では、日ごろの訓練の熟練度を測るため、敵、味方に分かれての模擬戦を行い、戦地における行動、判断、 作戦能力などを審判が判定する「訓練検閲」という“実地試験”がある。

     2025年9月には、東富士演習場で、第14普通科連隊(14普連)と 第35普通科連隊(35普連)が、攻撃側と防御側に分かれて7日間戦う「第10師団訓練検閲」が行われた。

     7日間の訓練検閲を終えた隊員は何を思うのか、また「訓練検閲」を行う意義とは何か、自衛隊員たちに聞いてみた。

    7日間の戦闘訓練を戦い抜いた精鋭たち

     訓練検閲後の振り返りとなるAAR(アフター・アクション・レビュー)は、検閲の対象部隊はもちろんのこと、直接の対象ではない35普連や10偵戦の隊員たちに対しても行われる。

     訓練検閲を終えた今、参加した隊員たちは何を思うのか。訓練での各自の行動や成果、反省点などについて、改めて振り返ってもらった。

    第35普通科連隊 第1中隊 松谷3佐

     24時間、緊張状態が続く中、中隊長としての私の戦術を各小隊が理解し、陣地を構築しながらも警戒の手を緩めず敵に対処してくれた結果、連隊から指示された防御地域を守り抜くことができました。

     今後はドローンなどの戦場での新たな脅威について理解を深め、戦い方を進化させていきたいと思います。

    第35普通科連隊 第1中隊第2小隊 宮田2尉

     一致団結して強固な陣地を構築したことで、私の隊は敵を1人も陣地内に入らせず、遠方から敵を撃破することができた半面、1人の隊員を失ったことが反省点。

     小隊長として、各隊員の疲労度に合わせた休息の取らせ方や敵に関する情報共有のあり方を見直し、より精強な部隊にしたいです。

    第35普通科連隊 第1中隊第3小隊 清水1曹

     昼夜の警戒監視を怠らず、後方から接近する敵の対処に成功するなど、陣地の防御任務を達成し、私自身も生き残ることができました。

     しかし、私が率いた分隊員の数人を失ったことが反省点です。困難だった近距離戦での戦い方を磨き、より強くより生き残れる部隊にしていきたいと思います。

    第35普通科連隊 第1中隊 田口士長

     機関銃手としては初の大規模な訓練検閲への参加だったので、圧倒的な火力を発揮して敵を1人でも多く撃破しようと意気込んで臨みました。

    夜間の警戒任務についた際、防寒対策が不十分だったため寒さで疲労が溜まり、敵との交戦時に100パーセントの力を発揮できなかったことが反省点です。

    第10高射特科大隊 第1中隊 長坂士長

     近SAM(93式近距離地対空誘導弾)の捜索手(注5)として、接近する敵ヘリコプターを発見し、班長に目標位置を伝達した後、撃墜に成功しました。

    今回の野外訓練では、近SAMの操作を自分のものにするために全力で臨みました。大変でしたが、終了後に達成感を得られたので、自己評価は100点中、120点です!

    (注5)敵の航空機を発見・追跡し指揮官に位置情報などを伝え攻撃する隊員

    第10偵察戦闘大隊 戦闘中隊 小出3曹

     16式機動戦闘車の砲手として、監視装置で敵の接近を察知し、射撃により敵の侵攻を阻止したり、奇襲攻撃へ対処しました。

    このような大規模な訓練検閲に参加するのは初めてだったので、敵を発見することや、敵から攻撃される前に撃破することの難しさを実感。最後に本隊が撃破されたことが残念です。

    第35普通科連隊 戦闘炊事班 竹内3曹

     野外炊具1号を使用し、戦闘糧食を準備しました。

     残暑が厳しい中で加熱する作業は想像以上の暑さで過酷でしたが、隊員の戦闘力や士気を高揚させるための温かい食事の提供はやりがいを感じました。

     また、食事を提供した後は、自らも戦闘に加わり、部隊に貢献できたことに満足しています。

    第14普通科連隊 第4中隊 水清田1尉

     4日間の間に、夜間を利用した隠密行動で、敵の警戒部隊の駆逐と、前線部隊に対する攻撃を計画しましたが、十分には達成できませんでした。

    ですが、中隊の全隊員が攻撃への決意を共有して、組織力で前進困難な地形を克服した本隊の底力を目にし、今後の成長を期待させる結果となったと思います。

    第14普通科連隊 本部管理中隊 織田2曹

     遊撃部隊の隊員として隠密行動で敵の陣地へ、後方からの潜入・襲撃に成功し、味方の攻撃前進に寄与することができました。

    ただ、現在、連隊と金沢駐屯地の広報担当なので体力錬成が十分でなく、激しく体力を消耗したのが課題です。どんな任務でも完遂できる体力づくりに取り組みたいと思います。

    7日間の訓練検閲を行う意義は?

    中央即応連隊初代中隊長や弘前駐屯地司令などを経て、現在第10師団の幕僚長を務める木原1佐。レンジャー教官、部隊スキー指導官などの資格も有する強者だ 写真/防衛省

     訓練検閲の意義について、今回の訓練検閲を計画・実施し、部隊評価を行った、第10師団司令部幕僚長の木原1等陸佐に詳しく語ってもらった。

    「東富士演習場での訓練検閲では、検閲を受ける部隊のみならず、参加する全部隊の練度向上や改善すべき点を把握し評価するために実施されます。

     また、参加する部隊それぞれにも訓練の目的が設定されています。検閲の対象となる攻撃側の14普連は、その任務となる敵へ侵攻するための作戦能力の練度向上を、そして防御側の対抗部隊である35普連は、数カ月後に実施される、自隊が検閲の対象となる検閲訓練へ向けての錬成を目的としています」

     今回、検閲対象となったもう1つの部隊である10高射には、近年、重要視されている上空からの脅威に対処するための対空戦闘能力の向上が求められると、木原1佐は言う。

    「ロシアによるウクライナへの侵攻など現代戦では、軍用ドローンの戦場での使用など、複雑で多岐にわたる作戦が実施されています。作戦の広域での展開や流動性、迅速化が認識されるようになり、それらへの対処能力が試されるわけです」

     2024年に新編され、戦力化の途上にある第10偵察戦闘大隊には、能力向上の絶好の機会となったという。

    「参加した全ての部隊が、敵と味方に分かれて真剣に訓練を実施したことにより、隊員たちは『手習は坂に車を押す如し』という教訓を実感したと思います。

     つまり、訓練に終わりはなく、厳しい錬成を継続していかなければ、能力や練度を向上するどころか維持することさえできないということです。

     その上で、師団司令部としては、絶えず進化する、昨今の国外での紛争などから得たさまざまな教訓を反映した、さらに実戦的な訓練を計画・実施していきたいと思います」

    (MAMOR2026年2月号)

    <文/魚本拓 写真/村上淳 写真提供/防衛省>

    自衛隊、われらの7日間戦闘

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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