•  2025年6月15 、16日の両日、海上自衛隊は、無人機雷排除システムの運用試験を硫黄島周辺で実施し、見事成功した。

     近代的な機雷の歴史を振り返ってみると、1810年ごろに係維式触角機雷が発明され、実戦ではクリミア戦争(1853~56年)で試験的に使用された。日本でも薩英戦争(1863年)には使用されていたという。

     そこで、海上自衛隊の黎明期から続き、現代まで発展してきた掃海技術や機雷の種類、その処理方法などについて説明しよう。さらに、無人機雷排除システムの誕生から未来図について、護衛隊司令にも語ってもらった。

    日本のお家芸といわれる海自の掃海部隊の機雷処理

    画像: 浮遊機雷を用いた爆発物処理訓練を行うEOD員(水中処分員)。高度な潜水技術と海の爆発物「機雷」に対しての幅広い知識がもとめられる任務だ

    浮遊機雷を用いた爆発物処理訓練を行うEOD員(水中処分員)。高度な潜水技術と海の爆発物「機雷」に対しての幅広い知識がもとめられる任務だ

     爆発すると艦船に甚大な被害を与える機雷には、広大な海のどこに潜んでいるか分からず、敷設場所の特定が難しいという高い隠密性がある。また、敷設から長期にわたって威力を発揮するため、航行する艦船にとって脅威となる兵器だ。

     第2次世界大戦の終戦時には、旧日本軍とアメリカ軍が敷設した機雷が日本近海に6万個以上残っているといわれ、海上自衛隊はその前身となる航路啓開部や警備隊の時代から処理を実施してきた。

     1991年には海自の掃海部隊が自衛隊初の海外実任務を行うため、湾岸戦争後のペルシャ湾に派遣。終戦直後から受け継がれた海自の掃海技術は世界の軍隊からも一目置かれるようになり今や日本のお家芸とまでいわれるように。

     そもそも、水中で爆発する兵器は「水雷」と呼ばれ、そのタイプは3つに分けられる。1つ目は、水深などの一定の条件で爆発する「爆雷」。次に、海中を動力装置で推進し、目標物に接触すると爆発する「魚雷(魚形水雷)」。

     そして、掃海部隊が実施する処理の対象となるのが、海中に敷設され、艦船の接近や接触により、自動や遠隔操作で作動する「機雷(機械水雷)」だ。

     機雷の処理には、ソナーで機雷を個別に発見して爆破する「掃討」と、機雷をつなぐワイヤーを切断し、水面に浮上した後に機銃などで射撃して爆破する「係維掃海」、専用の装備によって船舶があるように偽装し、機雷を爆発させる「感応掃海」などがある。

     掃海部隊が実施する掃討は、水中処分員が処理を行うこともある、危険をともなう任務。無人機雷排除システムは、その危険を遠ざけるために開発された最新鋭の装備なのだ。

    機雷のさまざまな種類

    画像: 機雷のさまざまな種類

    機雷は仕掛ける場所よってもいくつかの種類がある。

    (A)海面または海中を漂う浮遊触発機雷、(B)陸上の管制所からケーブルを延ばして海底の機雷に接続する管制機雷、(C)航空機から投下して海底に沈める沈底感応機雷、(D)センサーに探知されにくいステルス性があり、海底に沈めて発見されにくくする沈底感応機雷、(E)海底に沈む重りとワイヤーでつながれていて、目標を感知すると上昇して起爆する上昇機雷などがある。

    数々の失敗を克服しながら運用試験を成功へ導いた

    護衛艦『ゆうぎり』と『あまぎり』、『もがみ』、『くまの』の部隊運用を統括する大松1佐。「多様な任務に対応するため、訓練を通じ、4艦の乗員の技量を向上させる努力をしています」

     掃海部隊には約19年、勤務しているという第11護衛隊司令の大松1等海佐。無人機雷排除システムには、その構想がスタートした2013年から関わり、『もがみ』型護衛艦として実現した新艦艇プロジェクトチームにも、とりまとめ役として17年から参加していたという。

    「無人機雷排除システムについては、当時、無人機での機雷処分は技術的なハードルが高いという理由で、大半の人が反対しました。システムの構想を進めるのはかなり難しい状況でしたね」

     だが、大松2佐(当時)は諦めなかった。失敗は次のステップにつながるという信条があるからだ。

    「目標に向けて、まずは実行してみる。すると、必ず失敗します。それでも、一つひとつの課題に対して真剣に取り組み、諦めずに進めていくと、解決の糸口が見つかります。失敗したその先に道が拓かれるんです」

    画像: 2025年6月に硫黄島でUSVによる機雷処分を見事なチームワークで成功させた『もがみ』の乗員たち

    2025年6月に硫黄島でUSVによる機雷処分を見事なチームワークで成功させた『もがみ』の乗員たち

     苦節12年。25年6月15日、数々の困難を乗り越え、無人機雷排除システムの運用試験が成功した。とはいえ、システムにはまだ課題があると、大松1佐は言う。

     例えば、現状では、UUV(Unmanned Underwater Vehicle:自律型水中航走式機雷探知機)による機雷の探査と、そこで得られたデータの回収にかなり長い時間を要する。

     UUVでは解像度の高い画像情報が収集できるものの、掃海艇による機雷の発見よりも時間がかかってしまうのだ。目指すは、そうした課題の改善と、そして無人機雷排除システムの完全自動化だ。

    「UUVとUSV(Unmanned Surface Vehicle:機雷処分用水上無人機)を母艦から自動で海中へ投入、UUVによる目標の自動探知、その情報を母艦へリアルタイムで転送、それを基にしてEMD(Expendable Mine Disposal:自走式機雷処分用弾薬)が目標へ自動誘導され到達・爆破、UUVとUSVを母艦へ自動で揚収する。こうした一連のフローの完全な無人化が最終目標です」

     しかし、それは容易に到達できる目標ではないと、大松1佐。新システムのさらなる発展への道のりはこれからも続く。

    護衛艦『もがみ』

    護衛艦『もがみ』のマークは、最上川が流れる山形県長井市の「黒獅子祭り」に由来する黒獅子をモチーフにしている

    <SPEC>基準排水量:3900t 全長:133m 最大幅:16.3m 深さ:9m 速力:約56㎞/h 乗員:約90人

    画像: 母艦『もがみ』がコントロールしてさっそうと無人航走するUSV。これまで命がけだった機雷処分の道を安全に切り開く装備品だ

    母艦『もがみ』がコントロールしてさっそうと無人航走するUSV。これまで命がけだった機雷処分の道を安全に切り開く装備品だ

     横須賀基地(神奈川県)を母港として2022年に就役した護衛艦。対潜水艦戦や対空戦、対水上戦に加え、対機雷戦を任務とする多機能な護衛艦。

     コンパクトな艦体で、レーダーに探知されにくいステルス性、従来よりも少数の乗員で運用できる省人性に優れている。

     25年8月、オーストラリア政府は同国海軍への新型艦の導入に際し、『もがみ』型護衛艦の能力向上型である「新型FFM」を採用すると発表した。

    (MAMOR2025年12月号)

    <文/魚本拓 写真/山川修一(扶桑社)イラスト/永井淳雄 写真提供/防衛省>

    水上ドローンで機雷処分に成功!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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