侵略者から日本を守るために戦う自衛隊には、戦闘能力だけでなく、復旧力も必要となる。敵の攻撃により受けたダメージを、素早く直し、機能を回復させて、再び戦うためだ。
では、実際にどのようなリカバリー力を持っているのか。「滑走路の爆破」や「通信の遮断」など受けたダメージのシチュエーションごとに、代表的な技術のいくつかを紹介しよう。
爆破された滑走路をわずか6時間で修復!航空施設隊が被弾箇所を工事

滑走路復旧の訓練は爆薬を使って模擬の滑走路を爆破し、ミサイル攻撃などを受けた滑走路を再現。弾痕は深さ約3メートルに達することもある 写真/荒井健
航空戦力の要となる滑走路は敵に真っ先に狙われるため、破壊された場合は重機などを装備し土木関連の任務を担う航空施設隊が機能を迅速に回復する復旧工事を行う。

爆発により飛び出た鉄筋や弾痕内のコンクリート破片などを重機で切断し除去。早強コンクリートを投入するために整形作業を行う
滑走路復旧で最初に行うのは、被弾箇所の調査。被害状況や必要な工事内容を確認し、滑走路上に散らばった破片などを撤去する。さらに被弾箇所の周囲を重機類で整地し、がれきを細かく粉砕して除去。

形を整えた弾痕内に早強コンクリートを投入。投入後は隊員たちがならし、コテなどを使い整形する。すぐに固まるので作業は時間との勝負だ
「早強コンクリート」と呼ばれる数十分で固まる特殊なコンクリートを流し込み、整える。早強コンクリートはわずか数十分で固まるため、天候や湿度などを予測し作業の段取りを十分に確認した上で急ピッチで施工する必要がある。

被弾して穴だらけの状態から航空機が離着陸できる状態に復旧。表面もきれいに舗装し継続的に使用できる状態を目指す
復旧は完全に元通りにするのではなく短時間で滑走可能な状態に戻すことが優先だ。被害を受ければ何度でも直し、航空機が滑走できるように復旧させる。
要衝に掛かる橋が爆破された!施設科隊員がたった6時間で架橋

被弾して穴だらけの状態から航空機が離着陸できる状態に復旧。表面もきれいに舗装し継続的に使用できる状態を目指す
河川などに架かる橋を破壊することで部隊の移動や弾薬などの補給を妨害できるため、「橋を落とす」ことは古今東西の戦いで行われてきた。
橋が破壊された際、陸上自衛隊では施設科部隊が橋を架ける装備品を用い対処している。

92式浮橋は水に浮く橋節と、橋節を固定し水上を移動させる動力ボートなどで構成される。橋節は約50トンの車両も通行可能だ
92式浮橋は、水に浮く橋節と呼ばれる人や車両が通るパネルを複数連結し、動力のついたボートを使って橋節を支えて橋を架ける装備品だ。
重量約50トンの90式戦車も通行可能で、日本列島のように河川が多く地形変化に富む土地では必須ともいえる。

破壊された橋の代わりに、07式機動支援橋で架橋。架設車の対岸側にはスロープを設置し、川岸と段差ができないように高さを調節する
07式機動支援橋は橋脚なしに最長60メートルの橋を架けることができる装備品。クレーン付きの架設車から「ガイドビーム」と呼ばれる梁を両岸に渡し、その上に橋節を設置して橋を架ける。
破壊された橋の長さによりガイドビームの長さ(本数)を調整して架けることが可能で、こちらも重量約50トンの車両が通行できる。
補給部隊の進路が切り崩された!施設科隊員が6時間で「応急道路」を作る

ぬかるみができた荒れた路面。車両がスムーズに移動できるよう重機類を使い道路を作っていく
敵の攻撃によって道路が寸断されたら補給路が絶たれ、部隊の移動も支障が生じる。
道路の復旧は、破壊され使えなくなった道を修理することが前提だが、場合によっては迅速に道なき場所を切り拓き新たな道を作る。これらを「応急道路の構築」と呼ぶ。

道路工事では完成後の安定的な使用を目的に品質管理のための測量を実施。設計通りに作業が進んでいるかを確認しながら進める
施設科隊員は、土砂を運ぶダンプや、掘削に使うドーザ、油圧ショベル、土砂の積み込みに使うバケットローダ、土砂をならすためのグレーダ、道路の締め固めに使うロードローラなど、各種重機をフル活用し道路を作っていく。

破壊された道路を油圧ショベルなどで砂利を敷き整地。細かい作業を積み重ね、車両通行が可能な道路に仕上げる
道路工事は数台の車両が通れるだけでは意味がなく、何百台もの車両ができる限り速く走れる道を作らねばならない。
最前線の部隊に必要な物資や人員を運ぶ道路を作る技術は、災害時においても被災地の土砂災害などから交通インフラを整える重要な復旧力になっている。
戦地にヘリが不時着!航空機整備部隊が戦地で即復旧

飛行中のUH-1Jに不具合が発生し、敵地に不時着した想定で訓練を実施する
ヘリコプターが敵の攻撃を受け戦地に不時着した場合、航空機の整備部隊は最も早く安全に飛行可能な状態に復旧させる手段を検討する。
復旧法は大きく分けて2つ。現地での部品交換や修理を行うか、レッカー車で機体を回収し安全に作業ができる場所まで運んで整備を行うか、だ。

機体状況を確認後、機体回収を想定した、航空野整備隊の訓練
復旧作業は不時着をした地域や航空機の状態に応じて、現地での整備か機体を回収しての整備かを判断。場合により1回だけの飛行が可能な状態に直し、安全な場所に移動させる応急的な対処もする。
復旧訓練は敵に発見されないよう作業音や照明設備を極力使用しない夜間整備や、積雪や凍結により足場や手元が滑りやすくなる冬季の整備作業など、さまざまな状況で実施。精密機器に土などが入らぬよう注意して行う。
敵の攻撃で遮断された通信を30分で復旧!システム通信科部隊が器材修理とサイバー攻撃に対処

システム通信ネットワークが敵の攻撃で遮断された場合、原因の特定が最重要。不通の原因を確定し、適切な対処を実施する
部隊が行動する地域で、独自に構築したシステム通信ネットワークが敵の攻撃により遮断されたらどう復旧させるのか?
通信器材の破壊や通信ケーブルが切断された場合、システム通信科の隊員は交換・修復が可能かを判断し対処。

遮断されたシステム通信ネットワークの復旧が困難な場合、器材を前線に運び新しい通信網を構築し対処することもある
これとは別に近年注力しているのが、ハッキングなどのサイバー攻撃や妨害電波を受けた場合の復旧だ。
対処法は予備の通信手段に即座に切り替え、妨害されたネットワークとは異なる通信網を構築。その際、通信妨害を防ぐセキュリティー対策も実施し敵の攻撃を防ぐ。
復旧作業は指揮命令が伝わる手段の確保など優先度を決めて行う。システム通信科は作戦を支える「指揮・統制の命脈」を確保するため、“必通”の精神で必ず復旧させる。
●リカバリー完了までの所要時間は状況により異なるため、おおよその時間で表記しています
(MAMOR2025年11月号)
<文/臼井総理 写真/村上淳(07式機動支援橋、測量) 写真提供/防衛省(特記を除く)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです
