•  自衛隊の航空機が事故を起こしたときなど、素早く事故現場に駆け付けて搭乗員を救い出す任務を負っている航空自衛隊航空救難団。

     2025年5月、マモルは救難員を目指す学生要員の訓練に密着する機会を得た。陸上自衛隊習志野駐屯地で行われる落下傘降下の訓練を中心に、その様子をリポートする。

    陸自第1空挺団で落下傘降下の技術を身に付ける

    画像: フル装備で跳び出した学生要員は、跳出塔から約60メートル先の土手まで、張られたワイヤにぶら下がり滑降。跳び出して4秒後に上を見て、傘が開いているかを確認する動作を学ぶ

    フル装備で跳び出した学生要員は、跳出塔から約60メートル先の土手まで、張られたワイヤにぶら下がり滑降。跳び出して4秒後に上を見て、傘が開いているかを確認する動作を学ぶ

     小牧基地での基礎訓練を終えた学生要員らは、5月中旬からは約6週間、落下傘による基本降下訓練のため、教育の場は陸自習志野駐屯地(千葉県)にある第1空挺団へと移動する。

     基礎訓練でみっちりと鍛えてきたが、ここでもきつく厳しい体力向上運動が待っている。1種目ごとに教官の厳しい指導が入り、そのつらさも増す。

     基本降下訓練は、落下傘降下の着地姿勢を習得する「基本着地訓練」、航空機から飛び出す要領を学ぶ「模擬扉訓練」などを行う。

    画像: 跳出塔の高さは約11メートル。人が1番恐怖を感じる高さといわれている。跳び出し時は安全確認できるよう、目を閉じてはいけないと指導を受け、学生要員は跳ぶ

    跳出塔の高さは約11メートル。人が1番恐怖を感じる高さといわれている。跳び出し時は安全確認できるよう、目を閉じてはいけないと指導を受け、学生要員は跳ぶ

     最初は何も身に着けず、徐々に装具を増やし、最後は約30キログラムの背のう(リュック)と小銃を持ち、高さ約11メートルの跳出塔から跳び出す訓練を行う。

    訓練用の落下傘を装着した学生を宙づりにし、高さ約80メートルの降下塔から切り離す降下塔訓練。落下傘の操作や降下姿勢、安全な着地要領を学ぶ

     それが終わると、高さ約80メートルの降下塔から落下傘で降りる降下訓練となる。

     これら一連の訓練や体力検定などを経て、いよいよ航空機での降下訓練だ。これを5回行うと、基本降下課程は修了となる。

     取材時は跳出塔からの訓練中だった。陸自の学生に交じる救難員課程の学生要員は、真剣な表情で装備点検を教官と行う。

     自分の未来を信じ、「降下!」と叫びながら勢いよく跳び出していった。

     目標とする救難員になるための道のりは、まだまだ長く険しい。今後の厳しい訓練も彼らは強い意志で乗り越えていく。

    学生同士の絆が自身も仲間も強くする救難員の教育

    「63期ファイト!」学生要員は円陣で叫ぶ。自分と仲間を鼓舞するエールが訓練を乗り越える力になる

     時に怒号も飛び交う救難員教育は非常に厳しいが、主任教官の松本1曹は、「災害が起きる現場は悪天候が当たり前で自然は人間の思い通りにはなりません。

     大自然の脅威の中で遭難者の命を預かり冷静に救助活動を行うには、人並み以上の体力、泳力、精神力、救助技術が必要なのです」と話す。

    画像: 教育期間中、学生は隊舎で規則正しい生活を送る。早朝の間稽古はほかの隊員を起こさぬよう、非常階段を使い移動

    教育期間中、学生は隊舎で規則正しい生活を送る。早朝の間稽古はほかの隊員を起こさぬよう、非常階段を使い移動

     限界がきてもそれを乗り越えるため、同期一丸となって声を出して励まし団結心を高め、チームワークを育てるのも導入教育の目的の1つだという。

    画像: 食事は学生の楽しみの1つ。厳しい教育訓練で連日大量のカロリーを消費するため、学生要員たちの食事量も多い

    食事は学生の楽しみの1つ。厳しい教育訓練で連日大量のカロリーを消費するため、学生要員たちの食事量も多い

     実際に学生要員は早朝の起床から訓練、食事、自習や就寝まで常に一緒に行動する。

    画像: 自由時間に洗濯やアイロンがけをする学生。このときに仲間たちととりとめのない話をするのが息抜きになる

    自由時間に洗濯やアイロンがけをする学生。このときに仲間たちととりとめのない話をするのが息抜きになる

     取材をした63期の学生は22〜27歳、部隊歴もばらばらだが、「仲間は絶対に必要なもの、1人では厳しい訓練は乗り切れません」と学生要員の松藤士長も断言する。

    教官も一緒に走り、泳ぐ。「教官は手本にならなくてはいけません。学生には負けません」と主任教官の松本1曹

    「着隊時と卒業時では学生の顔つきが変わってきます。自信に満ちあふれ、声も出るようになります。その成長ぶりを一番近くで見ることができるのは教官として最大の楽しみです」と松本1曹は笑顔で話してくれた。

    (MAMOR2025年9月号)

    <文/古里学 写真/村上淳 写真提供/防衛省>

    これが本当のPJ教育隊だ!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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