•  防衛省・自衛隊では、いざというときに必要な防衛力をすばやく確保するため、平時から「予備自衛官等制度」を整備・運用している。普段は社会人や学生として生活しながら、年間に定められた日数の訓練に臨み、有事や災害時には招集に応じて出頭し、自衛官として活動するというものだ。

     芸人や声優などとして働くかたわら、予備自衛官として活動する5人の方にインタビュー。予備自のどんな点に魅力を感じ、どんな思いがあるのかを聞いてみた!

    自分も楽しみながら笑いで国を守る(芸人/即応予備自衛官)

    【ちっぴぃちゃんズ】
    1987年、高知県出身。2006年から10年間、陸上自衛隊重迫撃砲中隊員として勤務。退職後、17年から芸人として活動。黄色いインコ「ぴぃちゃん」と共に自衛官ネタを披露しながら、即応予備自衛官としても活動している

    画像: お笑いコンビ「水玉れっぷう隊」のケン氏とトークライブを行うちっぴぃちゃんズ。自衛隊の訓練経験者ならではのディープなネタで来場者の笑いを誘う

    お笑いコンビ「水玉れっぷう隊」のケン氏とトークライブを行うちっぴぃちゃんズ。自衛隊の訓練経験者ならではのディープなネタで来場者の笑いを誘う

     仕事や学業と並行して国防に関わる「予備自衛官等制度」。これを活用しながら仕事であるお笑いにも「国防」を活かしている芸人、ちっぴぃちゃんズ。彼女の目指すものは何か。

    「災害派遣に参加したときにも感じたことですが、皆さんが安心・安全な環境でちゃんと暮らせる状況にないと『笑う』ことは難しいですよね。

     安心して心から笑える状況を作るためには国防や災害対応が重要で、それに関われるのが自衛官。

     芸人兼予備自衛官として、笑いを届けること、笑える環境を整えること、その両方を作り上げていけたらと思っています」

     ちっぴぃちゃんズは最終的な目標を「お笑い国防」というが、いったいそれはどんなものなのだろうか。

    「私のネタを見て世界中が笑ってくれたら争いはなくなると思うんです。敵意を向けられても、笑いで返せれば相手も笑顔になりますから。笑いで国を守るのが私の考える『お笑い国防』です。

     私にとっては、芸人としての仕事も、予備自も、人生を楽しむための大切な術です。それが国民の役に立つなら、こんなステキなことは無いですね。」

    自分の動画で「予備自になった!」と声を掛けられるように(芸人・タレント/予備自衛官)

    【小野寺耕平氏】
    41歳。2002年に陸上自衛隊に入隊し、野戦特科部隊203ミリ自走りゅう弾砲を扱っていた。04年に退職後、芸人の道へ。16年に予備自に。現在の階級は予備陸士長

    画像: イベント会場で自衛隊あるあるネタを披露する小野寺氏。ユーチューブでも自身のネタを披露して人気を博している

    イベント会場で自衛隊あるあるネタを披露する小野寺氏。ユーチューブでも自身のネタを披露して人気を博している

     今では「元自衛官芸人」として活動していますが、自衛官として定年まで続けるか、芸能の道にいくかの2択で悩んだくらいですので、今も予備自として自衛隊とつながりができているのはありがたいですね。

     個人的にうれしかったのは、私が配信する動画で予備自の生活を経験談として話し、興味を持ってくださった方が、予備自になったこと。

     仕事柄、自衛隊や予備自のネタを配信することも多いのですが、「小野寺さんの動画を見たことがきっかけで予備自になった」などと、たくさんの方からお声かけいただき、日本全国の、年齢も職業も違うさまざまな人たちとの絆を感じることができました。背景が皆さん違っていても、目的は同じなのだと思い、温かい縁を感じます。

     予備自の訓練は、通常の生活とは違う環境も、いい刺激になるでしょう。非日常な生活、例えばアウトドアのような新鮮な5日間が味わえて、きっと楽しいですよ。

    体力だけでなく、精神力も鍛えられるのは、予備自ならでは(冒険家/即応予備自衛官)

    【岩元みさ氏】
    31歳。東日本大震災に予備自が従事したことで関心を持ち、2015年に予備自制度のポスターを見て予備自に。階級は予備陸士長

    画像: 2018年から飲食店で働く傍ら、冒険家として世界各国のマラソン大会に参加。23年にはモンゴルゴビ砂漠マラソンを完走した

    2018年から飲食店で働く傍ら、冒険家として世界各国のマラソン大会に参加。23年にはモンゴルゴビ砂漠マラソンを完走した

     日差しがガンガン照り付ける9月に行われた訓練では、訓練場で泥や汗にまみれながら大声を出して戦闘の訓練を行いました。

     自衛官が班長を務め、予備自補が2人の計3人という小規模な訓練でしたが、班長も本気で向き合ってくださり、少人数であることを忘れるくらい充実した訓練になりました。

     終了後、全員で熱く握手して互いの苦労をねぎらったときの達成感は今でも忘れられません。

     熱く指導してくださる自衛官との出会いは、とても貴重です。私は、冒険家として、2018年に世界一過酷と言われるサハラマラソン(237キロメートル)の走破を皮切りに、世界各国のマラソンに挑戦してきました。

     体力だけでなくメンタル面でも成長できるのは、予備自ならでは。大人になってから得られる仲間意識や一体感は、学生時代や職場などでは比べ物にならないほどいいものです。

    徒歩行進に戦闘訓練、モールス信号……ほかでは経験できないことがいっぱい(声優/予備自衛官)

    【宮本佳那子氏】
    35歳。2011年に母の勧めで予備自に。階級は予備3等陸曹。「小銃の分解結合を経験したことで整備が好きになりました」と予備自の訓練を振り返った

    画像: 2000年から声優だけでなく、歌手としても活動する宮本氏。アニメ作品に出演するほか、イベントなどでもファンに声を届ける

    2000年から声優だけでなく、歌手としても活動する宮本氏。アニメ作品に出演するほか、イベントなどでもファンに声を届ける

     高校3年生のときに、当時予備自だった母の勧めで予備自衛官補の試験を受け、その後予備自に任官して今に至ります。保育士資格を取得して技能予備自になりましたので、今後は技能を生かしてお役に立てればとも思っています。

     訓練では、いろいろな思い出があります。真夏に行った徒歩行進や悪天候下での戦闘訓練。休憩時間にやかんから水を飲んだり、雨の中泥の中に頭から突っ込んでいったりと、新鮮な体験をいくつもさせてもらいました。

     ほかにも、モールス信号を教わったのも楽しかったですね。訓練後に同じ居室のメンバーたちとモールス信号で会話したのも良い思い出です。

     教えてくださった隊員の方の「通信への愛と情熱」を感じて、とても充実した訓練だったことを覚えています。

     実は私、もともとは虫がかなり苦手だったのですが、野外でのほふく前進のおかげで、多少の虫は平気になりました!

    訓練で磨いた、小銃の取り扱い方が芝居では大きな武器に(俳優/即応予備自衛官)

    【松川貴則氏】
    33歳。2010年に陸上自衛隊に入隊し、戦車の操縦手を務めていた。12年に退職後、俳優に。俳優と予備自の両立を目指して19年に即応予備自に。階級は予備陸士長

    画像: 舞台で忍者役を演じる松川氏。夢である俳優を目指して、自衛官から転身。戦国時代の野伏や火縄銃射手、自衛官など多彩な役を演じる

    舞台で忍者役を演じる松川氏。夢である俳優を目指して、自衛官から転身。戦国時代の野伏や火縄銃射手、自衛官など多彩な役を演じる

     舞台や映像で武器を扱う役が多いので、リアルな小銃の取り扱いを学び直したいと思って即応予備自になりました。

     実際、訓練を通じて銃の扱いが格段に上達し、舞台やサバイバルゲームでは「さすが元自衛官」と言われることが増えました。

     なかでも思い出深いのは、アメリカ軍との合同訓練です。不審者役として身体検査を受ける場面だったので、忍者の芝居で使っていたゴム製のクナイを持ち込み、ポケットに入れたまま検査を受けました。見つけたアメリカ軍人が「……ニンジャ?」って驚いた反応をしてくれて、笑いましたね。

     予備自は、本業とは全く違う世界で、いろいろな世代の人や社長業をしている人など、普段の仕事では出会えない人と交流できるのも魅力です。自分にとって予備自は“仕事の一部”であり、素直に“楽しい趣味”でもあります。

    (MAMOR2025年8月号)

    <文/臼井総理 写真/伊藤悠平 写真提供/本人>

    楽しい予備活入門

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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