•  各国の駐在武官にあたる役職を自衛隊では防衛駐在官と呼ぶ。そんな防駐官になる夢を実現した、原1等陸佐に話を聞いた。(2025年1、2月取材)

     ベトナム赴任するまでに、何を学んで、どんな準備をした? 苦手なパクチー克服など、ユニークな訓練についても紹介。

    赴任先:ベトナム社会主義共和国 / 原1等陸佐の場合

    ●赴任先
    2019年6月~22年7月

    ●赴任前の所属
    教育訓練研究本部教官

    ●防駐官を希望したのはいつ?
    赴任の6、7年前

    ●同行者
    妻、長女(10歳)、長男(6歳)、次男(4歳)
    ※子どもの年齢は赴任時

    憧れだったベトナム防駐官

    画像: ベトナム大使館の歓送迎会前に撮った記念写真(後列右が原1佐)。女性はベトナム民族衣装のアオザイを着ている

    ベトナム大使館の歓送迎会前に撮った記念写真(後列右が原1佐)。女性はベトナム民族衣装のアオザイを着ている

     1尉のときから防駐官になりたくて、そのためにはまず1佐にならなければならないと任務に励み、上司や同僚にもさりげなく「防駐官になりたいです」とアピールしていたという原1等陸佐。

    「念願かなって第1希望のベトナムの防駐官に決まったときは、うれしすぎて『うぉー!』と叫び、帰宅途中のコンビニに駆け込んでビールで祝杯を挙げたことを覚えています」と笑う。

    画像: 2022年2月、在ベトナム防駐官の兼轄国(当時)であるカンボジアの陸軍司令官(左)の日本訪問時に同行した際、機内で撮影(右が原1佐)

    2022年2月、在ベトナム防駐官の兼轄国(当時)であるカンボジアの陸軍司令官(左)の日本訪問時に同行した際、機内で撮影(右が原1佐)

     赴任するまでの約10カ月間のうち、約3カ月間は外務省での研修で、国際情勢や各省庁の取り組み、現地での文化交流に備えて華道などの日本の伝統文化から、日本酒の歴史・飲み方まで徹底教育を受けた。

     もちろん語学も英語は毎日4~6時間、ベトナム語も計100時間ほどみっちり仕込まれた。

    パクチーの克服も! 独自のユニークな自己研さん

    ベトナムに飛来した自衛隊機にエンジントラブルが発生した際は、コロナ禍だったため防護服を着て対応したそう

     ここまでは、防駐官になる人が赴任前に一般的に受ける研修内容だが、さらに原1佐は、独自のユニークな訓練を行った。

    「防駐官には高いコミュニケーション能力が求められるのですが、私には人の目を見て話すときに照れる癖があったので、数をこなせば慣れると信じ、人と積極的に目を合わせてコミュニケーションを取るように努めました。

     また、ベトナム料理に欠かせないパクチー(独特な香りの香草)も、頑張って食べられるように克服しました。でも、実際に現地に赴任してからご当地のパクチーを食べてみると、さほど匂いがきつくなくて、拍子抜けしましたけどね。

     ベトナム人が大好きなビールは私も大好きだったので、全く苦にはなりませんでした。ほかにも、ベトナム名物のバイクタクシーで後部座席から振り落とされないよう体幹を鍛えたりもしましたよ(笑)」

    画像: ベトナムを離任する際には、国防省の国防国際関係研究所所長(右)を表敬訪問。赴任中は本音で意見を言い合い、意思疎通を図れる良好な関係だったという

    ベトナムを離任する際には、国防省の国防国際関係研究所所長(右)を表敬訪問。赴任中は本音で意見を言い合い、意思疎通を図れる良好な関係だったという

     さまざまな自己研さんを積んだのち2019年から赴任したベトナムは、エネルギーに満ちあふれた国で、自分の想像を超える濃厚な3年間を過ごしたという。

     今では自分にとって第2の祖国というほどベトナム愛が止まらない原1佐は、25年春からはベトナムの隣国、カンボジアの防駐官に任命され、再び準備に忙しい日々を送っている。

     各国の駐在武官はゴルフが上手な人が多く、ゴルフをしながら情報交換をするのが夢だそうだが、こちらの腕はなかなか上がらず苦戦しているようだ。

    (MAMOR2025年6月号)

    <文/古里学 写真提供/防衛省>

    平和を結ぶ“大使”、防衛駐在官

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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