
米田さん(左)は東大医学部卒で外科医の経験をもち、諏訪さんはJICA青年海外協力隊を経て、世界銀行に勤務していた経歴をもつ 写真提供/JAXA
13年ぶりに誕生した日本人宇宙飛行士の2人。宇宙飛行士になるための厳しい訓練の中には、地球帰還時に遭難した際、救助を待つまで生き延びるための「サバイバル訓練」も含まれている。
2024年7月、陸上自衛隊が協力し、山中で宇宙飛行士候補者たちの「生活体験」が実施された。
宇宙飛行士はさまざまな基礎訓練が必要
日本の宇宙開発をリードする「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)では、2024年10月21日、新たに2人の日本人宇宙飛行士が誕生したことを発表した。諏訪理さん(47歳)と米田あゆさん(29歳)だ(年齢は当時)。
宇宙飛行士になるためには、基礎的な科学や技術にまつわる知識、語学などを習得するのはもちろん、国際宇宙ステーション(ISS)や、「きぼう」日本実験棟などのシステムを理解し操作する技術を身に付け、航空機の操縦、スキューバダイビング、サバイバル技術、体力強化などの訓練もクリアしなくてはならない。
これらの基礎訓練のうち、24年4月から行われてきた「サバイバル技術」について、自衛隊の活動からヒントを得るため7月に実施されたのが、陸上自衛隊第34普通科連隊(静岡県)の協力のもと行われた、野外での1泊2日の「生活体験」だ。サバイバル技術を体験することに加え、宇宙飛行士として求められる、過酷な環境下で仲間と協力し任務を遂行する能力とリーダーシップを体験するという目的で行われた。
サバイバル技術とリーダーシップを磨く

同じような風景が続く森の中で、地図を広げコンパスを使って、地形や進行方向の判読を試みる。リーダーシップ力も問われるシーンだ 写真提供/JAXA/Space BD
2人の宇宙飛行士候補者(当時)のほか、JAXA職員などで構成された5人ほどの班を2つ編制。宇宙飛行士候補者が各班のリーダーとなってメンバーを率い、地図とコンパスを頼りに山中を進み、指定された目的地に向かうというもの。
途中、テントを設置し、短時間の仮眠をとりながら長距離を歩き続け、時にはルート判断を迫られたり、時にはけが人を担架で運びながら移動したりするなど、さまざまなサバイバル技術を体験した。
生活体験終了後には、同行した自衛官から具体的な課題の指摘やアドバイスを受け、有意義な体験になったという。
諏訪さんは、「地図やコンパスを使用し長距離移動する技術を学びながら、リーダーシップ・スタイルの引き出しを増やす重要性を感じた」と、米田さんは、「サバイバル環境下で生き延びることの難しさを感じたが、限られたリソースの中で工夫や知識、技術、諦めない心、チームで協力することが生存率を大きく左右することも実感した」と、それぞれ感想を述べた。
(MAMOR2025年4月号)
<文/臼井総理>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです