•  400人余りの日本代表選手が出場し、世界中を熱く盛り上げた2024年パリオリンピック。自衛隊体育学校に所属する7人の自衛官アスリートもそれぞれの活躍を見せてくれた。

     今回は、見事銀メダルを獲得した柔道女子70㎏級・混合団体・新添左季2等陸尉に凱旋報告をしてもらった。

    【新添左季2等陸尉】
    1996年、奈良県出身。両親、兄、弟の5人家族。バラエティーやドラマ、アニメを見るのが好き。好きな食べ物は揚げ物全般

    課題だった寝技を特訓し、コーチと臨んだオリンピック

     観客からの大きな期待と歓声を受け、仲間とつかんだ柔道混合団体銀メダル。代表選手として出場するまでの道のりは決して順調なものではなかった。

    「コロナ禍に入る前くらいから海外であまり勝てなくなってきて。自分の戦い方をいろいろ直さないといけないと思いました」

     新添2尉の得意技は内股。一方、課題となっていたのは、これまであまり極めてこなかった寝技であった。全日本柔道連盟から強化選手として選ばれる実力を持ちながらも結果が出ない状況が続くなか、新型コロナウイルスが流行して軒並み試合が中止に。

     自分の技を磨く時間が増えたことで、寝技の強化を始めたという。練習メニューは、コーチの池田3佐に自分の状態を客観的に分析してもらい、相談しながら組んだ。

     また、オリンピックでの優勝経験もある体育学校の柔道選手、濵田尚里1等陸尉に直接寝技を教えてもらうこともあったという。寝技のほかにも、得意の投げ技につなげるための組み手も池田3佐にアドバイスをもらいながら練習を重ねた。

    「出稽古ではバスを出してもらったり、暑い夏は基礎体力強化のためにプールを使わせてもらったりしていました。監督やコーチは客観的に見て意見をくれて、でも押し付けるのではなく提案してくれる優しい人たち。おかげで練習に専念できました」

    趣味の漫画とアニメの言葉を励みに

    画像: 柔道混合団体の準々決勝にて、セルビア選手相手に豪快な内股で一本を取った新添2尉 代表撮影/日本雑誌協会・東川哲也

    柔道混合団体の準々決勝にて、セルビア選手相手に豪快な内股で一本を取った新添2尉 代表撮影/日本雑誌協会・東川哲也

     地道に努力を重ねる日々の中でも息抜きは欠かせない。趣味は漫画とアニメで、「スポーツ漫画でいうと、『ハイキュー‼』(集英社)が好きです。柔道とバレーボール、競技は違いますが“刺さりました”」と語る新添2尉。

     作品の中に出てくる言葉に勇気をもらうことも多く、思うような結果が出せないときにも、心に残った言葉を思い浮かべて気持ちを切り替えていたそう。また、同じ部屋で過ごした柔道女子チームについて、「選手同士が気持ちを1番理解できるから、みんなと話す時間に私も救われた」と感謝の気持ちを述べた。

     オリンピックという大舞台で神経質になる選手も多いなか、持ち前の切り替え上手でメンタルをコントロール。個人・団体と気持ちを切らさずに最後まで戦い続け、柔道混合団体で銀メダルを獲得することができた。

     オリンピック後、休養期間に入っている新添2尉。今後については「いずれ指導者になったときには、自分が救われたアニメの言葉で選手を育てていきたいですね」と前向きに未来を見据えた。柔道の苦しさも楽しさも知っている新添2尉は、これからも努力を積み重ね、柔道の魅力を伝えていくだろう。

    (MAMOR2025年1月号)

    <文/ナノ・クリエイト 写真/増元幸司>

    自衛隊体育学校アスリートの強さとは?

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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