世界各国の軍隊で用いられる「少将」や「大佐」などの軍事階級。一方で、軍隊ではない、専守防衛に特化された防衛組織・自衛隊ではどのような階級制度が採用されているのだろうか。詳しく説明していく。
自衛隊は階級の違いが制服に現れる
自衛官の制服はその人物のデータベースとも言えよう。
制服に着用されているさまざまなマークを見れば、その人がどの部隊に所属し、どの階級で、これまでどのような経歴をたどってきたかが一目でわかる、いってみれば歩く履歴書だ。では階級はどこで見極めるのだろうか。
階級ごとに装飾が異なる陸上自衛隊の制服
※写真はモノクロ
陸自では階級によって制服の装飾が異なっている。将、将補では、上着の袖に金と銀の太線が入り、ズボンのサイドにも同様の線が入っている。佐官、尉官では金の細線、曹士では黒の細線となる。
階級ごとに定められた階級章がある!
陸上・海上・航空各自衛隊の階級と階級
自衛隊には、上表のような、階級ごとに定められた階級章があり、制服に着けなければならず、その位置まで細かに指定されている。陸上自衛隊と航空自衛隊は、同一階級はほぼ同じ形状の階級章で色だけが違う。
3~1尉、3~1佐、将補~幕僚長の区間で階級が上がるごとに階級章に付いた桜花マークの数が増えていくことで階級を表しており、アメリカ軍の場合は、桜ではなく星の数がそれにあたる。
一方、海上自衛隊は幹部クラスの階級章が陸自、空自と大きく異なっている。准尉から1佐までは桜花マークの数は変わらず、階級章に引かれた金筋の本数や太さの違いにより階級差を表している。
海自は世界共通の海軍の階級章にあわせて……
さらに、陸自と空自では幹部は肩に、曹は襟に、士は左腕に階級章を着けるのに対し、海自では幹部は両袖に刺しゅうをして、曹士は左腕に階級章を着けるなど、位置まで異なっている。
その理由は、海自は国境を越えて海外でも活動するため、世界共通の海軍の階級章にあわせているためといわれている。たとえば1等海佐(他国軍の戦艦艦長クラス)は階級章に金筋が4本つく。
3本は2等海佐(他国軍の駆逐艦艦長クラス)と3等海佐(他国軍の駆逐艦の科長クラス)で金筋の太さの違いにより階級が分かるようになっている。2本は1、2等海尉だが同様に階級によって金筋の太さが異なっている。
このように、海自の階級章は外国軍の海軍の階級章と同様のデザインになっている。
陸・空自と海自で階級章の着用位置が違うのは冬服の例だが、陸・海・空各自衛隊の階級章は1種類ではなく、夏服、冬服、礼服といった制服によって若干デザインが変わっており、戦闘服、航空服などの特殊服装には布製の略章を着用している。
また階級ではないが、自衛官のトップである統合幕僚長は、左の胸に統合幕僚監部の旗と同じデザインの桜花マークの「統合幕僚長章」をつける。
階級ごとに異なる陸・海・空各自衛隊の階級章の位置

陸・海・空各自衛隊の隊員は、自分の階級を示す階級章を制服に着けることが義務づけられている。陸・空自は、冬制服の場合、将から准尉までは両肩に、曹の場合は両襟に階級章を付ける。
海自の場合、将から准尉までは両袖に階級を示す刺しゅうを入れ、曹長以下は、左肩に階級章を付ける決まりになっている。
陸自・空自と海自で大きな違いが帽子にも表れる
陸・海・空各自衛隊では、帽子も階級によって装飾が異なっている。陸・空自は、将・将補、1~3佐、1~准尉、曹長~2士ごとに4種類。海自は将・将補、1・2佐、3佐~准尉、曹長~3曹、士長~2士と5種類に分かれている。3佐以上(海自は2佐以上)になると、つばに金色の桜葉が刺しゅうされる。
前出の防衛大学校の相澤准教授によると、海自では、帽子に施された刺しゅうを俗に「カレーライス」と呼ぶそうだ。なぜカレーライスなのかは、刺しゅうの色がカレーと同じ色だから、またカレーに入れる月桂樹(ローリエ)に見えるからなど諸説ある。
また、海士の帽子はつばのない水兵帽で、帽章(海上自衛隊もしくは所属部隊名が書かれた帯)がついている。このように、陸・海・空各自衛隊では、階級ごとに制服が異なっているため、自衛官同士では一目で相手の階級が分かるようになっている。
階級ごとに異なる陸・海・空各自衛隊の帽子
陸・海・空各自衛隊の隊員が着用する正帽(写真は男性隊員用)。階級が上がるにつれて、顎ひも、つばのデザインが変化する。
海自の場合、階級が上がるにつれて、帽章も変化。陸・空自は、将官・佐官・尉官・曹士の4種類だが、海自では分け方が異なり5種類になっている。
(MAMOR2024年12月号)
<文/古里学 撮影/村上淳 増元幸司 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです