いざ、に備えて日々、訓練に励む自衛官たち。その能力・技術は各国軍にけっして負けないが、私たち一般国民が、それを目にすることはめったにない。
そこで、マモルでは特別に、つるの剛士さんを委員長とする委員会を招集し、それぞれが“これぞ自衛隊の超絶ワザ”を認定していただくことに。以下に発表していく!
超絶ワザ委員会とは
過去に仕事で自衛隊に関わったタレント、アスリート、軍事や自衛隊に造詣が深いカメラマン、軍事ジャーナリストなどで編成された、自衛隊の超絶ワザを認定する委員会。
元陸将・防衛大臣政策参与 番匠幸一郎認定委員
1958年、鹿児島県出身。元自衛官で最終階級は陸将。2004年からの自衛隊イラク派遣で第1次復興支援群長を務めた。西部方面総監などを務め、2015年退職。23年より防衛大臣政策参与防衛大臣政策参与
写真提供/本人
フォトジャーナリスト 菊池雅之認定委員
1975年、東京都出身。写真週刊誌編集部を経てフォトジャーナリストとして活動中。自衛隊だけでなく、世界中を飛び回り、アメリカ軍をはじめとする世界各国の軍事情勢を取材している
写真提供/本人
フォトジャーナリスト 柿谷哲也認定委員
1966年、神奈川県出身。学生時代に航空機を被写体として写真撮影を始め、97年からフォトジャーナリストとして、世界各国の軍隊を取材。国内外のメディアに写真や記事を提供している
写真提供/本人
元ドクターヘリパイロット 石橋清認定委員
1949年、大阪府出身。航空自衛隊に航空学生として入隊し、パイロット教育を受ける。71年に退職後、 72年より民間企業でドクターヘリなどに搭乗。現在、奈良地方協力本部で相談員を務める
心を寄せる世界が驚いた「日本式の支援」(番匠委員)

イラクで地元住民との交流を深め、信頼関係を構築したイラク復興業務支援隊。市中を走行する際に現地の子どもに親指を立てるジェスチャーであいさつをする
2003年に勃発した戦争で荒廃したイラクに初代復興支援群長として参加した番匠委員は、海外派遣活動においても、自衛隊には、世界が羨望する超絶ワザがあると説明し、認定する。その超絶ワザとは? それは自衛隊の姿勢や誇りある行動であった。

宿営地を展開していたイラク南部の都市サマーワ近郊で、荒廃した道路を整備するイラク人スタッフと陸自隊員。安全な整備のため周囲を警戒し作業を見守る
「イラク復興の主人公はイラク国民自身であると認識し、私たちは日本から来た友人として相手に誠実に、同じ目線で接する『日本式』の支援を心掛けました。
宿営地の鉄条網を現地雇用のイラク人と一緒に汗を流して設置し、食事も共にする。『共感』を大切にした活動です。現地の人々と友人のように接し、感謝される自衛隊の取り組みは、アメリカ軍など外国軍から驚かれ、その秘訣を知りたいと訪問も受けました」

現地雇用のイラク人スタッフと打ち合わせをする陸自隊員。監督者の立場ではあるが、管理だけでなく作業を共にし同じ目線で復興を支援した

派遣部隊はイラクの将来を担う子どもたちのため、5月5日の「こどもの日」に日本の有志から預かったこいのぼりをユーフラテス川に掛けてエールを贈った (写真提供/名寄新聞)
まばたき禁止!? 一糸乱れぬ「特別儀じょう」(菊池委員)

2017年11月に行われた日米首脳会談で、トランプ大統領(当時)を迎賓館に招いた際の儀じょう。整然とした所作で最大限の敬意を表した
世界中の軍隊を取材してきた菊池委員が「自衛隊はすごい」と驚くのが、特別儀じょう隊だという。「儀じょう」とは、相手に敬意を表して歓迎をする儀礼。
国家元首や皇族、高官など重要人物を政府として迎える際に行われる礼式を日本の顔として担当するのが、陸上自衛隊第302保安警務中隊で編成される特別儀じょう隊だ。
儀じょうは要人に敬意を表すためのさまざまな動作を行う。「特別儀じょう隊は、100人以上が動作をするのにその音は1つにしか聞こえない。コンマ1秒の乱れもない統制の取れた動きは、外国軍では見られません」と超絶ワザを認定する。
日本のお家芸と言われる世界屈指の「掃海」(柿谷委員)

ペルシャ湾において、海自は近くを石油のパイプラインが通り海流の激しい危険な場所の掃海を担当。巧みな技術で国際貢献した
機雷を排除することを「掃海」という。「終戦直後の日本近海は旧日本軍とアメリカ軍が敷設した機雷が6万個以上残り、それを保安庁警備隊の航路啓開隊などが掃海しました。
この技術と任務を引き継いだ海上自衛隊の掃海部隊は1991年に自衛隊初の海外実任務としてペルシャ湾に派遣。9カ国から派遣された掃海艦艇と共同で掃海を実施。海自は一番困難なエリアを担当しましたが見事な技術で1件の事故もなく掃海し、他国から称賛されました」と柿谷委員は海自の掃海技術を超絶ワザに認定。
被災者の心に寄り添う「災害派遣の支援」(番匠委員)

入浴支援で笑顔を取り戻す被災者も多い。利用者からは『生き返った気分』、『子どもが笑顔を取り戻した』などの言葉が寄せられている
災害時、被災地自治体の要請に応じて行われる自衛隊の災害派遣活動は、多くの国民から圧倒的な支持を受けている。が、そこにも外国では見られない自衛隊ならではの超絶ワザがあると、元自衛官の番匠委員は言う。
「被災者から感謝の声が多く寄せられるのが入浴支援です。陸上自衛隊には『野外入浴セット』があり、浴槽にシャワー、洗い場と脱衣所を完備。高齢者、幼児のサポート用として、浴槽に踏み台や手すりを付けるなどの工夫もしています。入浴セットを持っている軍隊は世界にはありません。

能登半島地震における「ニーズ把握隊」。避難所などを巡回し、細やかに被災者の声を受け止め、対応している
また被災者が『何を必要としているのか』といった声を拾うため、2024年の能登半島地震では『ニーズ把握隊』を編成し、隊員が各避難所などを巡回し、被災者に寄り添う活動を行っています。衛生面や生活面の支援は当然のことですが、被災者のストレスケアもカバーする自衛隊の活動は、世界的にも珍しい災害支援と言えると思います」と番匠委員は超絶ワザに認定!
1万人の命を救った自衛隊の「急患輸送」(石橋委員)

機体の振動が患者の容態に影響を与えぬよう、医師の指示を受け担架を慎重に固定する隊員
自衛隊の災害派遣で最も件数が多いのは患者を空輸する「緊急患者空輸」だ。
この大半を沖縄県に所在する陸上自衛隊第15ヘリコプター隊が担い、その回数は1万件超(注)。元ドクターヘリパイロットの石橋委員はこれを超絶ワザに認定した。
「部隊の担当区域は子宝島(鹿児島県)以南で本州とほぼ同じ広さ、しかも大病院のない離島です。部隊は夜間や悪天候でも飛行できると判断すれば駆け付ける。目印のない漆黒の洋上を安全に長時間飛行するクルーの実力はすごいです」
(注)第15ヘリコプター隊は1972年12月に初の緊急患者空輸を実施し、2020年3月に1万人の輸送を達成。
機体性能を限界まで引き出すスゴ技 (室屋委員)

「ぶつかりそうな距離、しかも低空で編隊飛行を行うホワイトアローズ。見た目以上に技量は高いです」と室屋委員
「ホワイトアローズ」とは、海上自衛隊小月航空基地(山口県)でパイロットを育成する第201教育航空隊の教官たちで編成された特別曲技飛行チームの愛称だ。教官の技量向上を目的に創設され、練習機T−5、4機で全13課目の曲技を基地祭などで披露している。
同様にエアショーでアクロバット飛行を披露する室屋委員はホワイトアローズの技量を、「T−5は重量がありそれほど速い飛行機ではないので、アクロバティックに飛ぶには、性能を限界まで引き出さないと成立しないと思います。テクニック的にも難しくパイロットの技量は大変高い。展示飛行の構成も演技と演技の間につなぎを入れるなど、よく考えられています」とその超絶ワザに認定した。
(MAMOR2024年11月号)
<文/真嶋夏帆 写真提供/防衛省(特記を除く)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです