いざ、に備えて日々、訓練に励む自衛官たち。その能力・技術は各国軍にけっして負けないが、私たち一般国民が、それを目にすることはめったにない。
そこで、マモルでは特別に「超絶ワザ委員会」を招集し、それぞれが“これぞ自衛隊の超絶ワザ”を認定していただくことに。さあ、発表だ!
超絶ワザ委員会とは
過去に仕事で自衛隊に関わったタレント、アスリート、軍事や自衛隊に造詣が深いカメラマン、軍事ジャーナリストなどで編成された、自衛隊の超絶ワザを認定する委員会。
写真提供/ルビーパレード
俳優 西川俊介認定委員
1994年、群馬県出身。2015年特撮ドラマ『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(テレビ朝日系)主演のほか、映画や舞台などで活動。本誌20年12月号で自衛隊式の掃除を体験
写真提供/ワタナベエンターテインメント
タレント バービー認定委員
1984年、北海道出身。2008年よりお笑いコンビ「フォーリンラブ」として活動。テレビ番組との連動企画で本誌20年6月号に登場。防衛大学校で訓練を体験
写真提供/ホリプロ
プロフィギュアスケーター 村上佳菜子認定委員
1994年、愛知県出身。2014年ソチオリンピックに日本代表として出場し、現在はタレントとしても活動。テレビ番組との連動企画で本誌20年6月号に登場。防衛大学校で訓練を体験
写真提供/パスファインダー
エアレースパイロット 室屋義秀認定委員
1973年、奈良県出身。福島県在住。2009年、飛行機の操縦と速さを競う「レッドブルエアレースワールドチャンピオンシップ」にアジア人として初めて参戦。17年、年間総合優勝
写真提供/本人
プロカメラマン 鈴木教雄認定委員
1966年、静岡県出身。多摩美術大学建築学科卒業後、93年よりカメラマンとして活動開始。国内外の写真賞を多数受賞。現在は広告、雑誌などで人物や風景などを撮影し幅広く活躍中
写真提供/本人
フォトジャーナリスト 菊池雅之認定委員
1975年、東京都出身。写真週刊誌編集部を経てフォトジャーナリストとして活動中。自衛隊だけでなく、世界中を飛び回り、アメリカ軍をはじめとする世界各国の軍事情勢を取材している 写真提供/本人
徹底された「自衛隊式清掃」の細やかさがすごい(西川委員)

廊下や窓のさんなど汚れがたまりやすい場所ほど丁寧にと教わった西川委員。「掃除への考え方が180度変わった」とすごさを話した (写真/増元幸司)
スーパー戦隊シリーズで主演を務めた西川委員は、本誌の取材で、陸上自衛隊武山駐屯地(神奈川県)で、新入隊員教育として教えられる “自衛隊式のスーパー掃除術”を体験。
「想像以上に体力や根気が必要でした。戸棚の扉の隅など見落としそうな部分を徹底してチェックされ、その理由が掃除という日々の作業を通じて『細部への気配り』を教えるためと聞き驚きました。
仕事や生活の場を清潔に保つ意味はもちろんですが、全てが国防に直結しているのがすごいです。自分の掃除観も変わりました」と西川委員。
自衛隊では、掃除を通じて与えられた任務を遂行する使命感と「物品愛護」の精神を学ぶ。ただきれいにするだけではなく、精神教育にもつながる掃除術に、西川委員も思わず超絶ワザ認定!
リーダーシップとサポート力に驚いた「チームプレー」の妙(バービー委員、村上委員)

大型タイヤの運搬が1番大変だったと話すバービー委員。「装備が重くて動きにくい! タイヤも重すぎる!! こんなしんどいことを軽々こなしている学生さんにびっくり」 写真/鈴木教雄
バービー委員は、テレビ番組で、村上委員と共に、防衛大学校で、学生に交じって訓練を体験している。その訓練は、数十キロの荷物を持って走ったり、障害を越えたりする、アメリカ陸軍士官学校で開催される「サンドハースト競技会」という “軍事運動会”に参加するためのもの。

最初に覚えたカードの順番を最後に改めて確認する競技「メモリー」。「体を酷使した後に頭を使う競技は大変。学生の皆さんがテキパキ回答していたのがすごい」と村上さん (写真/鈴木教雄)
バービー委員は、「20歳前後なのに、学生は皆、しっかりしていて、リーダー役やサポート役など、役割分担が明確で、瞬時の判断力や全員の気持ちをそろえて戦うチームプレーのすごさを感じました」と、自身はヘロヘロになりながら超絶ワザ認定!
村上委員も「普通にやればできることも、重い装備を着けると体力が奪われます。学生の皆さんは集中力が切れないのがすごい。仲間を励ますハートの強さも感動しました」と防衛大学校学生に対し超絶ワザを認定した。
同乗して分かった「ブルーインパルス」すごさの秘密(室屋委員)

2023年9月に福島空港の開港30周年記念行事で共演をした縁で、ブルーインパルス同乗の機会を得た室屋委員。旋回後の機体位置の調整など、飛行機乗りの視点ですごさを体感 (写真提供/パスファインダー)
オリンピック開会式などで見た多くの国民が、その超絶ワザを認めているであろう、ブルーインパルスのアクロバット飛行。本特集では、地上から空を見上げているだけでは分からない、隊員たちの超絶ワザを室屋委員に紹介、認定いただいた。

「訓練を重ねれば皆が同じように飛ぶことができる。コンスタントにパイロットを養成できる教育システムもすごいです」と室屋委員
「機数が増えれば編隊飛行の難易度は上がるものですが、6機編成で一糸も乱れぬフォーメーションはすごい。観客に見せるアクロバティックな技もすごいが、機体の位置やタイミングを合わせるといった見えない微調整が完璧。
また地上からは全機が等間隔で並んでいるように見えても、実際は違う。地上から美しく見えるよう調整した結果、全機がピタッとそろって見える。実に細かい技ですね!」と、同じくアクロバット飛行をすることがある室屋委員は超絶さを話す。
ミリ単位で位置調整してできた「マモルの表紙撮影」(鈴木委員)

撮影では、カメラマンの後ろに立つ隊員が無線で4機のパイロットに位置を指示。ミリ単位の位置調整をこなす隊員の操縦技術に驚嘆
10年以上、本誌の表紙を撮影している鈴木委員も、自衛隊の超絶ワザに驚いて、この度、認定した1人だ。
本誌2021年3月号の表紙は、陸上自衛隊北宇都宮駐屯地(栃木県)で撮影。ヘリコプターのパイロットになるために必要な技術や知識を教える教官たちによるチーム「ブルーホーネット」の協力で撮影が行われた。
鈴木委員は、「人物の配置、ヘリ同士の向きや距離、高さなどベストポジションを追求しましたが、4機のヘリを空中停止させての撮影だけに難航すると覚悟していました。ですが風の影響などをものともせずポジションをキープするヘリパイロットの圧倒的な操縦技術で撮影は短時間で終了。その技術に驚きました」
目標は20センチ!高高度で行う「空中給油」(菊池委員)

F-15戦闘機に燃料を送る空中給油機KC-767。1機あたりの給油時間は、5分ほど。空中給油で航続時間を増やし、効率の良い運用が可能に
菊池委員が「まさに神業!」と超絶ワザ認定をするのは、上空で飛びながら戦闘機や輸送機に燃料を給油する、空中給油機のオペレーターのテクニックだ。
一般的に戦闘機はほかの航空機と比べ搭載燃料が少なく、長時間の飛行はできない。給油のたびに基地に戻らず、長時間任務を可能にするために考え出されたのが空中給油で、専用の航空機がこれを担っている。
「空中給油は、高度約6000メートル上空を時速 700キロメートルで飛びながら、約15メートル離れて飛ぶ受油機の、直径約20センチメートルの給油口に給油ブームを差し込み給油するんです。航空自衛隊で空中給油機の運用が始まったのは2010年のこと。試験期間も含め約15年で世界に肩を並べるオペレーターが育成できる教育体制もすごいです」と菊池委員。
(MAMOR2024年11月号)
<文/真嶋夏帆 写真提供/防衛省(特記を除く)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです