•  本誌「MAMOR」のキャッチフレーズは「日本の防衛のこと、もっと知りたい!」です。防衛省・自衛隊の政策や活動を広く国民にお知らせすることがマモルの使命なのです。

     そこで、読者の皆さんから募った防衛に関するさまざまな疑問、質問について、われらが広報アドバイザー・志田音々さんがインタビュアーとなって、各界の識者に教えていただこうと思います。

    【志田音々】
    タレント、女優。1998年、埼玉県出身。2014年にデビューし、舞台『フルーツバスケット The Final』など幅広く活躍中。23年から防衛省広報アドバイザー(注)に就任

    (注)防衛省・自衛隊の各種広報活動に協力することを目的として2023年に設けられた制度のこと

    【木村陸将補】
    自衛隊サイバー防衛隊司令として部隊を指揮。自衛隊サイバー防衛隊は、防衛省・自衛隊の通信ネットワークの管理・運用のほか、サイバー攻撃への対処を任務としている

    Q:サイバー攻撃はなぜ脅威なの?

    画像: 2022年の自衛隊サイバー防衛隊発足時、岸防衛大臣(当時)から部隊旗を授与される木村陸将補(右) 写真提供/防衛省

    2022年の自衛隊サイバー防衛隊発足時、岸防衛大臣(当時)から部隊旗を授与される木村陸将補(右) 写真提供/防衛省

    志田音々(以下「志田」):有名企業などに対してサイバー攻撃があったニュースを見ましたが、自衛隊は大丈夫なのでしょうか?

    木村陸将補(以下「司令」):サイバー攻撃とは、ネットワークを通じてサーバーやパソコンなどに侵入して、データを盗んだり破壊・改ざんする行為のことで、最近、立て続けに大手企業や官公庁が狙われてニュースになりましたね。

     サイバー空間における攻撃というのは、軍事の世界では日常的に行われています。その理由は、まず軍にとって情報収集は非常に重要だということが挙げられます。部隊を動かす指揮官のもとには、各部隊から得られたさまざまな情報が集約されます。

     そのシステムがサイバー攻撃を受けると、作戦立案に支障が出るだけでなく、攻撃側に行動が読まれることも考えられます。例えば、ロシア軍はウクライナ軍に兵士を集合させる偽の指令を出し、集まったところに砲撃を浴びせた、という事例もありました。

    志田:なんだか怖いですね。こうしたサイバー攻撃にはどのような特徴があるのでしょうか?

    司令:1つには、攻撃側が他人のパソコンを乗っ取るなどして、複数のパソコンを介して攻撃するケースが多いので、誰が攻撃したのか、特定が非常に難しいということです。もう1つは、国境を簡単に超えるということ。

     銃やミサイルだと射程から外れたら被害を受けることはありませんが、サイバー空間には物理的な距離がないので、地球の裏側からでも攻撃できてしまいます。また最近は手段が巧妙化しているので、攻撃されたかどうか、そもそも気付かないこともあります。そうしたことからサイバー攻撃は、攻撃側が被害者より圧倒的に有利です。

    志田:どこからでもアクセスできるというサイバー空間(インターネット)の利点が、悪用されているわけですね。攻撃を受けたときはどうするのですか?

    司令:防衛省・自衛隊の通信ネットワークの管理・運用のほか、サイバー攻撃への対処を任務としています。われわれ自衛隊サイバー防衛隊の隊員が通信ネットワークを防護するため、24時間態勢で監視し、このようなサイバー攻撃への対処を行っています。

    サイバー攻撃対策でも、重要なのはやっぱり「人」

    画像: サイバー攻撃に備えて防衛省・自衛隊の通信システムの管理・運用・監視などを行う自衛隊サイバー防衛隊の隊員ら(イメージ) 写真提供/防衛省

    サイバー攻撃に備えて防衛省・自衛隊の通信システムの管理・運用・監視などを行う自衛隊サイバー防衛隊の隊員ら(イメージ) 写真提供/防衛省

    志田:有事以外でも、サイバー攻撃を受けることはあるのですか?

    司令:例えば、防衛省では、年間100万件以上の不審なEメールや不正な通信を認知しています。その中には不正アクセスを狙った、怪しいEメールが非常に多く含まれているので、われわれ自衛隊サイバー防衛隊の隊員がチェックしています。

    志田:人力ですか!? かなり大変なのではないでしょうか。

    司令:サイバー攻撃への対処で重要なのは、やはり人材なんですよね。アメリカ軍は約6200人規模なのに対し、2023年度末現在、自衛隊のサイバー要員は約2230人です。今後は、27年度までに約4000人にまで増やす予定です。

     現在、サイバーの専門教育は、陸上自衛隊システム通信・サイバー学校で行っていますが、今後隊員を外部のサイバー教育に参加させるなど、幅広く育成の取り組みを行っています。ほかにも、政府の内閣サイバーセキュリティーセンター(NISC)の訓練や人事交流に協力するなど、他省庁とも連携しています。サイバー分野に長けた人材の採用制度も充実させていく予定ですが、志田さんもいかがですか?

    志田:スマホの扱いにも困ることがあるくらいなので、ちょっと荷が重すぎます~(泣)。

    (MAMOR2024年11月号)

    <文/古里学 写真/増元幸司>

    志田音々のねぇねぇ防衛のこと、もっと教えて!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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