日本を含むインド太平洋地域の国々に繁栄と安定を目指して、2016年に日本が提唱した外交方針「自由で開かれたインド太平洋(略称:FOIP<Free and Open Indo-Pacific>)」。その活動の一環として、24年6月に行われたのが「乗艦協力プログラム」である。
乗艦協力プログラムは、乗組員が中心となって企画したお祭りイベントや、グループに分かれて母国語を教え合う講座などを通じた「国際親善の時間」でもあった。約450人の『いずも』乗組員たちと乗艦協力プログラム参加者(シップライダー)の交流の模様をお届けしよう。
最高潮の盛り上がり!「いずも餅フェス」
「よいしょ!」という掛け声とともに、きねで思いきりもちをつくシップライダー。最初から上手な人もいれば、へっぴり腰でうまくできない人も。皆笑いながら楽しそうに体験していた
親善交流の輪は、約450人の『いずも』乗組員たちとシップライダーの間にも広がった。乗組員たちが企画・立案したイベントも含め、多様な催しを通じた交流が図られた。
一番の盛り上がりを見せたのが、航海終盤に行われた「いずも餅フェス」と銘打たれた艦内でのお祭りだ。艦内食堂を会場に、臼ときねを使った餅つきの実演、体験に始まり、綿あめ、かき氷、焼きそば、ホットドッグなどが提供され、まるで祭りの屋台が『いずも』に現れたかのよう。
シップライダーたちは慣れない手つき、腰つきできねを振るいもちをついたり、初めて見る綿あめに目を丸くしたりと大はしゃぎ。会場には石寺艦長以下主要幹部も顔を見せ、この日ばかりは階級の上下も国籍もなく、皆が一緒になって楽しい時間を過ごしていた。
『いずも』の給養員が作る、手作りスイーツが絶品!

イベントを通じて仲良くなった隊員とシップライダーが自撮りで記念撮影。艦から下りた後、データを交換するため連絡先を教え合う人もいた
特派員がビックリしたのは、このフェス内で提供されていた手の込んだクオリティーの高いさまざまな種類のひと口大スイーツと、“玄人はだし”のおいしいコーヒーだ。
スイーツは給養員たちが通常作業の合間に数日前から手作りしていたもので、ケーキにタルトにと、色とりどりのスイーツが用意され、ホテルのバイキングにも負けないレベル。
またコーヒーは、艦内でも有名なコーヒー好きの隊員が提供。豆の種類によって複数のメニューが供され、自称コーヒー通の隊員たちをうならせていた。
交流の場はそれ以外にも。隊員による立入検査の実演や装備の展示を見学したり、おにぎりやおはぎを手作りするイベントが行われたり、各国のシップライダーが自国語を『いずも』乗員たちに教える機会があったり……。中には、何度も顔を合わせるうちに仲良くなり、私的に連絡先の交換をした隊員もいたとか。
護衛艦『いずも』で開かれた各種交流イベント
防水訓練の模様の展示

船体に開いた穴をふさぐことを想定した防水訓練の模様を展示。緊急時の対応を学ぶという側面もあり、皆まなざしは真剣そのもの。
ロープの結索の体験

船乗りの基本といえばロープワークも欠かせない。『いずも』乗員と共に、ロープの結索を体験。シップライダーの中には船に関わらない仕事のためか、全くできない人もいて、別のメンバーが優しく教える姿も見られた。
艦長とシップライダーの交流

「うまく撮れました!」。艦長とシップライダーで記念撮影。撮影した写真を一緒に見る『いずも』艦長・石寺1佐。そのほかの催しでも艦長自ら積極的にシップライダーとの交流を図っていた。
お祭りフードを楽しむ様子

焼きそばやホットドッグなど、「お祭りフード」を楽しむシップライダーと防衛省のスタッフ。防衛省が通訳などのために派遣した自衛官や事務官たちも大活躍。
おにぎりの手作り体験

見よう見まねで握ったおにぎりを、皿にきれいに盛り付けて完成。手伝った隊員と記念撮影。このイベントでは、おにぎりのほか、日本伝統のお菓子として「おはぎ」の手作り体験も行ったが、あんこになじみがなく手をつけない人もいた。
西之島を見る様子

航海の終盤、火山活動でできた西之島を見る。「新しくできた島」が珍しいようで、シップライダーもわれ先にと見たり、写真に収めたりしていた。
艦載ヘリコプター見学会

艦載ヘリコプター見学会での1コマ。シップライダーたちに装備の説明をするヘリクルー。機能や性能に関する質問も多く飛ぶ。小声で「私の国にもほしいな」とつぶやくシップライダーも。
(MAMOR2024年11月号)
<文・写真/臼井総理>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです