現在、日本の領空・領海を守っている各自衛隊機も、制式採用される前には試作機という段階があり、テストパイロットによって、さまざまなテストフライトが行われてきた。その試作機は現在も、機体の能力向上や、装備する武器の更新のために使用され続けている。
今回は、自衛隊機のプロトタイプを、現在運用されている量産機と比較しながら紹介しよう。
XF-2(開発当時)<航空自衛隊>
試作機

<SPEC> 約15m 全幅:約11m全高:約5m 重量:約10t 最大速度:約2448km/h 開発会社:三菱重工業
1990年開発開始、95年試作機初飛行、2000年運用開始。領空に迫る敵航空機に対処するために作られた戦闘機。アメリカのF-16をベースに日米の技術を結集し、日本の運用や地理的特性に合わせて開発。写真は試作2号機で、この機だけの白地にブルー、オレンジが塗り分けられた塗装が特徴。
量産機(F-2)

XC-1(開発当時)<航空自衛隊>
試作機

<SPEC> 全長:約29m 全幅:約30m 全高:約10m 重量:約39t 最大速度:約930km/h
航続距離:約1700km 開発会社:川崎重工業
1966年開発開始、70年試作機初飛行、73年運用開始。国産の中型輸送機で31機生産され、徐々に退役して数は減っている。試作機は銀色塗装が施されて、機首に長いピトー管(気体の流速を計測する装置)を装着できる。
量産機C-1

XC-2(開発当時)<航空自衛隊>
試作機

<SPEC> 全長:約44m 全幅:約44m 全高:約14m 重量:約70t 最大速度:約1000km/h
航続距離:約7600km 開発会社:川崎重工業
2001年開発開始、10年試作機初飛行、16年運用開始。C-1の後継としてXP-1と同時期に開発された国産輸送機。主翼の一部などをXP-1と共通化し、コストの削減や開発期間の短縮が図られている。
量産機C-2

XOH-1(開発当時)<陸上自衛隊>
試作機

試作機

(写真/花井健朗)
<SPEC> 全長:約13m 全幅:約12m(寸法はローター回転時) 全高:約4m 重量:約3.5t 最大速度:約280km/h 開発会社:川崎重工業
敵潜水艦の捜索などを任務とする海上自衛隊の哨戒ヘリコプター。1997年開発開始、2001年試作機(写真および現在の名称はUSH-60K)初飛行、05年運用開始。試作機は搭載する新装備の評価やテストパイロットの教育に用いられている。
量産機OH-1

XSH-60K(開発当時)<海上自衛隊>
試作機

<SPEC> 全長:約20m 全幅:約16m(寸法はローター回転時) 全高:約5m 重量:約1t 最大速度:約255km/h 開発会社:三菱重工業
敵潜水艦の捜索などを任務とする海上自衛隊の哨戒ヘリコプター。1997年開発開始、2001年試作機(写真および現在の名称はUSH-60K)初飛行、05年運用開始。試作機は搭載する新装備の評価やテストパイロットの教育に用いられている。
量産機SH-60K


機体後部のラックに固定された各種機器によってデータを一括管理している。
XSH-60L(開発当時)<海上自衛隊>
運用機・試作機

<SPEC> 全長:約20m 全幅:約16m(寸法はローター回転時) 全高:約5m 重量:約1t 最大速度:約255km/h 開発会社:三菱重工業
SH-60Kをベースに開発された、新型の哨戒ヘリコプター。2015年開発開始、21年試作機初飛行、23年試作機(写真および現在の名称はSH-60L)にて運用開始。

後部座席にはソナー操作などに使用するディスプレーが増設され、コックピットの計器類がタッチパネル化されるなど大幅にアップデートされている。

機体側面には、ミサイルにロックオンされた際のレーザー警報装置が新たに設置された。
XP-1(開発当時)<海上自衛隊>
試作機

<SPEC> 全長:約38m 全幅:約35m 全高:約12m 重量:約80t 最大速度:約996km/h
開発会社:川崎重工業
XC-2と同時期に開発され、機体構造の一部に共有化が図られている国産哨戒機。2001年開発開始、07年試作機(写真および現在の名称はUP-1)初飛行、13年運用開始。
量産機P-1


フロントガラス前には、矢羽根を用いて機体の横滑りを測定できる器具を設置。

機内には試験用の各種計測機器を搭載している。
試作機以外にこんな機体もある!
搭載機器や装備、武器などの試験を行うため、量産機とは異なる運用がなされている航空機もある。その1つが海上自衛隊の多用機UP-3Cだ。
UP-3C 多用機<海上自衛隊>

<SPEC> 全長:約36m 全幅:約30m 全高:約10m 重量:約56t 最大速度:約765km/h
開発会社:現ロッキード・マーティン社
UP-3Cは、潜水艦の捜索・追尾といった、日本周辺海域における警戒監視を行うP-3Cの機体が使用されている。搭載機器などの試験用に、機内外の各所に改修が施されている。
操縦かんにはパイロットの操作を記録・データ化する装置が付加。

機首には長く伸びたピトー管が設置されている。
哨戒機P-3C

(MAMOR2024年9月号)
<文/臼井総理 写真/山田耕司(扶桑社、試作機)、星亘(扶桑社、試作機・多用機) 写真提供/防衛省(量産機・XOH-1試作機・哨戒機)>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです