•  自衛隊初の国連平和維持活動で、カンボジアの内戦で荒廃した道路の補修作業などを行い、その完成度の高さが世界で話題になった日本。

     作業を担ったのは陸上自衛隊の施設科部隊だ。施設科とは軍隊における工兵部隊を指す。陣地の構築、地雷などの障害の構成・処理、道路や橋の構築などを行う技術者集団だ。

     そのエンジニアたちを養成する、伝統的技術とデジタル化に対応する陸上自衛隊施設学校を見学しよう。

    年間約1000人を教えるエンジニア養成機関

    画像: 2013年に建て直された施設学校の庁舎。1952年の創立以来、確かな技術と知識を教えている

    2013年に建て直された施設学校の庁舎。1952年の創立以来、確かな技術と知識を教えている

     勝田駐屯地(茨城県)にある施設学校は、施設科部隊の任務に必要な技術、知識を習得するための教育訓練と部隊運用のための調査・研究を行う唯一の専門教育機関として、年間約1000人が入校。

     教育は幹部陸曹に分かれ、部隊指揮、測量、地質調査、クレーン、木工などの専門技術を学ぶ。こうしたバラエティーに富んだ教育により、優れた施設科隊員を数多く輩出してきた施設学校だが、現場ではAIやドローンなどハイテク化の波が押し寄せているという。

    陸上自衛隊施設学校で行われる教育の一部を紹介

    画像: 基礎作業の1つ「重材料の取り扱い」。複数の隊員が呼吸を合わせ、木材など重量のある資材の運び方を学ぶ

    基礎作業の1つ「重材料の取り扱い」。複数の隊員が呼吸を合わせ、木材など重量のある資材の運び方を学ぶ

     基礎作業の1つ「重材料の取り扱い」。複数の隊員が呼吸を合わせ、木材など重量のある資材の運び方を学ぶ。

    画像1: 陸上自衛隊施設学校で行われる教育の一部を紹介

     橋の架設や陣地構築に欠かせない「木工」の教育。のこぎりやおのを使い、木材を加工して杭を作る。

    画像2: 陸上自衛隊施設学校で行われる教育の一部を紹介

    「爆破」の教育。固い岩盤の掘削や障害物の排除に爆破は必須の技術で、安全確認をしながら行う。

    画像3: 陸上自衛隊施設学校で行われる教育の一部を紹介

     測量器具を使った実習。ドローンを使った測量も導入されているが、アナログでの訓練も重要だ。

    画像4: 陸上自衛隊施設学校で行われる教育の一部を紹介

     無人地上車両で地雷などの障害物を処理。施設学校はハイテク機器の研究、教育にも取り組んでいる。

    デジタルからアナログまでどう組み合わせるかが課題

    「今後の装備品運用などを決めるのが施設学校研究部です。全国の施設科から意見を集め最適解を探します」と安部1佐

     施設科の将来装備などに携わる研究部長の安部1等陸佐は「無人機による地雷処理、赤外線などの各種センサーから身を隠せる『偽装網』の研究などを進めています。無人化、省人化の研究を実施する一方で、ロシアのウクライナ侵略で注目を浴びる塹壕戦など、デジタル・ハイテクからアナログまでどう組み合わせるかが今後の課題です」と話す。

    圓林陸将補は学生や職員に対して3つの視点を掲げている。「生き残り任務を果たすためには、冷静であること、選択肢を持つこと、柔軟であることです」

     施設学校長であり勝田駐屯地司令も務める圓林(えんりん)陸将補は「最新の技術を追求してリスクマネジメントをするとともに、基本的なことが改めて重要になってきています。その両者をバランスよく取り入れることが、われわれが生き残るために必要になってくるでしょう」と語っている。

    <文/古里学 撮影/村上淳  写真提供/防衛省>

    (MAMOR2024年9月号)

    陸上自衛隊施設学校オープンキャンパス!

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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