•  日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?

     ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は青森県大湊地方隊大湊警備隊の多用途支援艦『すおう』より艦メシ「サンドイッチセット」を紹介します。

     サンドイッチ2種、ミニトースト2種、ホタテスープにウインナーソテーやサラダなど、おいしさ、楽しさ、栄養がいっぱいの満足メニューです。

    青森県大湊地方隊 大湊警備隊の多用途支援艦『すおう』

    画像: 母港である青森県の大湊基地に係留している『すおう』。さまざまな任務に対応できるよう即応態勢を維持している

    母港である青森県の大湊基地に係留している『すおう』。さまざまな任務に対応できるよう即応態勢を維持している

    『すおう』は海上自衛隊の保有する『ひうち』型多用途支援艦の2番艦として2004年に就役しました。全長65メートル、全幅12メートル、乗員約40人。現在は青森県大湊地方隊大湊警備隊に属し、むつ市大湊を母港としています。

     主な任務は護衛艦が射撃や魚雷の発射訓練を行う際の支援ですが、大型クレーンやえい航装置などが搭載されており、比較的広い甲板を活用することで消火、救難、救助のための物資や器材などの輸送に当たることもあります。

    「サンドイッチセット」は“艦メシならでは”のメニュー。その理由とは

     今回紹介する「サンドイッチセット」は艦メシならではのメニュー。というのも、『すおう』は主な航路である津軽海峡や北海道周辺海域の気象状況が悪いことが多く、艦の特徴でもある「重心が高い」ことから非常に揺れやすいのだそう。

     さらに交代制の当直勤務が重なると乗員の食欲減衰は否めません。そこで考案されたのがサンドイッチやハンバーガーなど取り置きができ、好きな時間に食べられるメニュー。食中毒が心配な季節を除き、部屋に持っていって船酔いが治ったらガブリ!

     メインの1つ、卵サンドは事前に作りますが、もう1つのベーコンサンドはトーストするため作りたてを提供。どちらも船酔いがひどくならないようにマーガリン、バターなどは塗らず、トマトケチャップ、粒マスタード、タマネギ、レタスなどさまざまな食材、調味料を使って目も舌も飽きのこない工夫を凝らしています。地元特産品のホタテのスープまで付いた給養員の愛情が溢れるセットです。

    船酔いが治った後に食べられるのが魅力!

    画像: 取材時『すおう』は函館ドックで定期検査に入っていたため、隊員はドックハウスで食事をしている(写真)。艦内の食堂は最大16席のため、乗員約40人は交代しながら食事をとるそう

    取材時『すおう』は函館ドックで定期検査に入っていたため、隊員はドックハウスで食事をしている(写真)。艦内の食堂は最大16席のため、乗員約40人は交代しながら食事をとるそう

    「船酔いで食欲が湧かず食事時間に食べられなかったときに取り置いておき、船酔いが治った後に食べられるのが何より魅力!」(3曹/男性・30代)

    「サンドイッチにすることで、普段あまり意識していない野菜も手軽に取ることができ、栄養バランス的にも満足のプレート」(3曹/男性・20代)

    「ベーコンサンドはソースの酸味がベーコンのうまみを引き立て、甘みがパンにマッチ。1度に5個くらい食べられそう」(1曹/男性・50代)

    あっさりと食べやすい献立を考えるように努める

    【海上自衛隊 多用途支援艦『すおう』 1等海曹 栄養士 新谷尚之】

     青森県黒石市の出身で、父は元航空自衛官です。専門学校で栄養士の資格を取得してから2001年に入隊。

     途中、3年半ほど地上勤務がありましたが、それ以外は護衛艦『はまぎり』をはじめ、さまざまな艦艇を経て、『すおう』に着任して2年になります。

     航海中は揺れによって用意していた料理を作れなくなる場合もありますが、臨機応変に対処できるように心がけ、またあっさりと食べやすい献立を考えるように努めています。大きな声では言えませんが私も揺れに強くなく、酔い止めを服用することもあるんですよ(笑)。

    「サンドイッチセット」の作り方を紹介

    画像: ※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました

    ※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました

    <材料(全て2人分)>

    [卵サンド]

    食パン(8枚切り):2枚

    <A>
    ゆで卵(粗みじん切り):1個
    マヨネーズ:大さじ2と1/2
    練りがらし:小さじ1〜2
    パセリ(ドライ)、黒コショウ:各少々

    [ベーコンサンド]

    食パン(8枚切り):2枚
    スライスベーコン:2枚

    <B>
    マヨネーズ、トマトケチャップ、粗びきマスタード:各大さじ1

    レタス(適当にちぎる):適量
    トマトスライス(半月切り):4枚

    [ピザトースト]

    ライ麦パン(横半分に切る):1個

    <C>
    トマトケチャップまたはトマトソース:大さじ1
    サラミ(みじん切り):10g
    タマネギ(スライス):10g

    ピザ用チーズ:20g

    [ガーリックトースト]

    ライ麦パン(横半分に切る):1個

    <D>
    ニンニク(みじん切り):小さじ1/2
    オリーブ油:大さじ1弱
    パセリ(ドライ):少々

    [ホタテのスープ]

    <E>
    水:2カップ
    ベビーホタテ:4個
    ニンジン、ダイコン(各1㎝の角切り):各20g

    洋風顆粒スープの素:小さじ1
    塩、コショウ、白ワイン:各少々

    [付け合わせ]

    ウインナーソーセージに切り込みを入れ、オリーブ油で炒め、黒コショウをふったもの、季節の野菜サラダ、プレーンヨーグルトに好みのジャムをのせたもの

    <作り方>

    1:卵サンドを作る。ボウルに(A)の材料を入れて混ぜ、食パン2枚で挟み、半分に切る。

    2:ベーコンサンドを作る。オーブントースターで食パンをトーストし、1枚にレタス、トマトと、フライパンで素焼きして焼き色をつけたベーコンを順にのせ、混ぜ合わせたBをかけてもう1枚で挟み、半分に切る。

    3:ピザトーストを作る。ライ麦パンの断面に(C)のトマトケチャップ半量を塗り、サラミ、タマネギ各半量をのせる。同様にもう1つ作り、オーブントースターで焼く。焼けたらピザ用チーズをのせ、再度焼く。

    4:ガーリックトーストを作る。フライパンに(D)を入れて火にかけ、ライ麦パンの断面に半量ずつ塗り、オーブントースターで焼き、パセリをふる。

    5:ホタテのスープを作る。鍋に(E)を入れて煮、野菜に火が通ったら、洋風顆粒スープの素と塩、コショウを加え、仕上げに白ワインを入れる。

    6:(1)から(5)と付け合わせをワンプレートとし、サンドイッチセットのでき上がり。

    注目食材:ベビーホタテ

    画像: 注目食材:ベビーホタテ

     青森県のホタテ生産量は全国トップクラスでその多くは陸奥湾産。湾内に白神山地のブナ林や八甲田山系からミネラルたっぷりの水が流れ込み、そこで育つ良質なプランクトンを食べているため、養殖とはいえ自然に近い形で育ち、やわらかく甘みがある。

     水揚げされる段階が早いベビーホタテは加熱加工後に販売されることがほとんどで手軽に調理ができて便利。高タンパク低脂質でビタミンB1、アミノ酸も豊富。

    (MAMOR2024年8月号)

    <調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山川修一(扶桑社) 写真提供/防衛省>

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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