•  近年の不穏な国際情勢の中、一層、必要性を感じる自衛隊だが、私たち国民の理解なくしては本来の実力を発揮できない。

     そこで、多くの方に自衛隊について知ってもらいたく、マモルではクイズを用意した。特別教練に参加して楽しみながら脳を鍛え、自衛隊の知識を増やしてくれ!

    脳トレ特別教練「難読自衛隊用語を解読せよ!」

     自衛官の会話を聞いていると意味が分からないことがあるはずだ。昔から使われている軍事用語や専門用語、または自衛官だけが使う業界用語を知って、自衛隊をより深く知ってほしい。“難読自衛隊用語ノック”40本、受けてみよ!

    難読自衛隊用語:1問目~24問目

    解答はこちら!

    正しい読み方とともに、用語の意味も学ベ!

    【軍】旧日本軍から使われる用語

    【専】各界で専門的に使われる用語

    【自】自衛隊だけで使われる隠語・符(ふ)丁

    (1)いっせんばつ(一選抜)【自】

    同期の自衛官の中で最も早く昇任する自衛官を指す。

    (2)がいげん(外舷)【専】

    これは船舶用語で、船の外面を指す。自衛隊の艦艇の外舷色といえば、日本周辺海域の海水の色に合わせた灰色と定められている。

    (3)たてつつ(立て銃)【軍】

    銃尾部末端を地面に立てた際の不動の姿勢を「立て銃」という。銃を持った右手首をやや前に出し、足の指先端の外側にくるように、銃尾部の末端を地面に立てる。

    (4)なかぼう(中帽)【軍】

    自衛隊で使用されているヘルメットのこと。 内側に衝撃を吸収するライナーが付いているので、通称「ライナー」。軽作業用ヘルメット(安全帽)として使われている。

    (5)はいのう(背嚢)【軍】

    野外活動などで使用される大容量のバックパック。野外での行動時に必要な装備や食料の持ち運びなどに用いる。

    (6)しゅき(主機)【専】

    艦艇の推力用原動機の総称であり、特にメインエンジンを指す。海上自衛隊の中では「もとき」と言っても通じる。

    (7)しゅほ(酒保)【軍】

    旧日本軍の兵営、艦艇内に設けられた「売店」を指し、物品販売所であるとともに、将兵の士気を維持する存在であった。

    (8)うちがらやっきょう(撃殻薬莢)【軍】

    「薬莢」は「弾丸」、「発射薬」、「雷管」を納めるケース。発射後には不要となり銃から排出されるが、この排出された空の薬きょうを「撃殻薬莢」と呼ぶ。

    (9)まいる(海里)【専】

    海で用いる長さの単位で1海里は1.852キロメートル。陸上で用いる「マイル(約1.6キロメートル)」とは距離が異なるので、区別するために「シーマイル/ノーティカルマイル」と言うことも。

    (10)さばん(砂盤)【軍】

    地面や机の上に、砂やおがくずを使って特定の地形を模して作った立体的なジオラマのこと。戦場をリアルに表現し、戦闘計画を練ったり演習を行う際に使われる。

    (11)そうかえん(総火演)【軍】

    富士総合火力演習の略称。陸上自衛隊が東富士演習場(静岡県)において行う国内最大規模の実弾射撃演習。

    (12)だほ(拿捕)【軍】

    軍艦や軍用航空機などが、外国の船舶を支配下に置き占有することを広く「拿捕」という。拿捕すべき船舶に士官を乗り込ませ、船長以下の乗組員を命令に従わせる。

    (13)はんちょうか(半長靴)【軍】

    膝とくるぶしの中間くらいの長さの編み上げ式のコンバットブーツで、各隊員が保有している。

    (14)ぎじょうたい(儀仗隊)【軍】

    自衛隊を公式訪問する賓客を迎える際に、相手に敬意を表すために行う儀礼を「儀仗」といい、警護や儀じょうを行う部隊を「儀仗隊」という。

    (15)じゅんえつ(巡閲)【専】

    一般には巡回して検閲することを「巡閲」というが、自衛隊では式典に出席した内閣総理大臣や国賓などが、整列した隊員の目の前を歩いたりオープンカーで移動したりすることをいう。

    (16)いんけんてき(隠顕的)【軍】

    射撃訓練のときに使用する、出たり入ったりする的のこと。

    (17)しょうかい(哨戒)【軍】

    敵の侵入や襲撃に備え、水上艦艇や航空機、潜水艦、レーダーなどで、周辺や特定の区域を警戒することをいう。

    (18)ていたい(梯隊)【専】

    縦長の行進隊形を「梯隊」といい、陸上自衛隊では一般道で見られるような縦に長く形成された車列のことを「梯隊」と呼ぶ。

    (19)そうふ(掃布)【軍】

    海上自衛隊では、甲板掃除などに使用するモップ状の清掃用具を「掃布」と呼ぶ。旧海軍からの伝統で、陸上での掃除の際にも使われる。

    (20)えいこうだん(曳光弾)【軍】

    発光体を内蔵した特殊な弾丸で、射撃後に発光することで軌跡が分かる。射撃中に軌跡をチェックし方向を修正することができるため、対空射撃などにも使用される。

    (21)きりゅうしんごう(旗流信号)【専】

    旗(国際信号旗)の組み合わせで、船と船、船と陸上信号所などの間にかわされる信号。26旗のアルファベット文字旗、10旗の数字旗など合計40旗で構成され、特定の意味を表す。

    (22)しょうしゃ(廠舎)【軍】

    本来は四方に壁のない仮設の建物を指すが、陸上自衛隊では演習場に設けられた宿泊施設を「廠舎」と呼ぶ。ベッド、マットレスなどの寝具のほか、トイレや炊事場所など、最低限の設備が備わっている。

    (23)ふきょう(浮橋)【軍】

    河川などに橋を架け、戦車やトラックなどの車両が渡河できるようにする装備。橋となる橋節、橋節を支える動力ボート、それらを積載する運搬車などから構成される。陸上自衛隊施設科は92式浮橋を保有している。

    (24)ようそろ(宜候)【軍】

    艦の針路を指示する号令

    難読自衛隊用語:25問目~40問目

    解答:難読自衛隊用語はこう読む 

    (25)ざんごう(塹壕)【軍】

    戦場で、敵からの火砲や機関銃の射撃から身を守るために造る防御施設。溝を掘り、兵士の前方に掘った土や土のうを積み上げて造る。自衛隊では演習でざんごうを堀り、陣地を構築する。

    (26)えんかん(煙缶)【自】

    たばこの吸い殻を入れる缶のこと。演習場などで、灰皿の代わりとして使用。

    (27)くうてい(空挺)【軍】

    「空中挺進」の略語で、航空機によって敵地に深く侵入し、奇襲をかけたり、敵軍の後方をかく乱したりして、自軍の作戦を有利に導くように動くこと。

    (28)しょくちょ(飾緒)【軍】

    武官の正装において肩から胸につるすひも状の飾りのこと。自衛隊では、指揮官のスケジュール管理などを主な任務とする「副官」が外国出張の際などに着用することがある。

    (29)てきだん(擲弾)【軍】

    英語では「グレネード」。人員、資材、装甲車両などを攻撃するため、弾頭に火薬や化学剤を充てんした弾。もともとは手で投げるりゅう弾のことをそう呼んだが、現在は小銃などで発射するものを呼ぶようになった。

    (30)ぶっかんば(物干場)【自】

    営内隊舎などに備え付けられた乾燥室のこと。「ものほしば」と訓読みはしない。

    (31)えんがい(掩蓋)【軍】

    物の上を覆うもの。特に、敵弾を防ぐため塹壕(項目参照)などの上部を覆ったものを指す。

    (32)でぶね(出船)【軍】

    一般に「出船」は船が港を出ることを指すが、自衛隊において「出船」は、艦船が港に停泊するときに、船首を港の出口に向けている状態をいう。「出船」の状態であれば、いざというときには直ちに出港し任務に対応できる。

    (33)ほうるい(堡塁)【軍】

    敵の攻撃を防ぐために、石や土砂、コンクリートなどで構築された陣地。

    (34)えんぴ(円匙)【軍】

    シャベルのこと。戦場で身を守るための穴を掘るときなどに使用する。

    (35)こだしこ(小出庫)【軍】

    小さな倉庫の呼称。塗料を収めれば「塗具小出庫」など、用途で区別される。

    (36)しんめんもく(真面目)【自】

    本腰を入れて何かを行うさま。訓読みの「まじめ」ではなく音読みをする。

    (37)とうげんれい(登舷礼)【軍】

    世界の海軍に共通する艦艇礼式の一種。貴賓の送迎や外国艦艇への礼式、また特別な出入港に際し行われ、乗組員が水上艦艇や潜水艦の甲板上で整列し、礼式を行う。

    (38)ほふくぜんしん(匍匐前進)【軍】

    腕や足を使いながら腹ばいで前進すること。陸上自衛隊には、計7種類の「匍匐前進」がある。

    (39)りゅうだん(榴弾)【軍】

    放物線軌道を描いて飛ぶ、炸薬が仕込まれた弾丸。着弾時に爆発させることができる。

    (40)そうてん(装填)【軍】

    一般用語だが、自衛隊では弾薬を銃の薬室に入れ、発射が可能な状態にすることをいう。薬室とは、銃身や砲身内の末端部にある、発射薬が収まる空間。

    自衛隊用語はなぜ難読なの? 専門家に聞いた

     自衛隊が使う言葉にはなぜ難読のものが多いのか。自衛隊用語に関する著書もある、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏に話を聞いた。

     まずは脳トレで取り上げた用語を見てもらったところ、「『背嚢』の『嚢』、『儀仗隊』の『仗』、『擲弾』の『擲』などは、常用漢字ではないので、なじみがないですよね」と菊池氏。

     一方で、「主機」(しゅき)を自衛隊では「もとき」と言っても通じるのは、聞き間違いが起きにくいようにするためではないか、という。これは数字に関してもいえるそう。

    「数字の1(いち)と7(ひち)は聞き間違えやすいので、自衛隊では1(ひと)、7(なな)と読みます。例えば時刻を伝える際、17時40分ならば、1740(ひとななよんまる)と4桁の数字で表し、それぞれの数字を決まった読み方で読むのです。戦闘作戦に関わる隊員が時刻を聞き間違えたりしては一大事ですからね」
     
     自衛隊で使われている言葉には、旧軍時代から受け継がれている言葉も多いが、なぜ、旧軍時代の言葉は難しいものが多いのだろうか。

    「当時、英語(カタカナ)は敵対国で使われている『敵性語』であったため、これを漢字に置き換えて表現したのです。例えばエクササイズは『演習』、ミサイルは『誘導弾』、タンクは『戦車』というふうに。この置き換える課程で難しくなった言葉があって、クルーザー=『巡洋艦』、デストロイヤー=『駆逐艦』などの艦種がその一例ですね」
     
     そして第2次世界大戦終戦後、国防組織として自衛隊が発足すると、自衛隊は軍隊ではないことから、表現を変更した言葉もあるという。

    「歩兵は『普通科』、砲兵は『特科』、戦車は『特車』、軍艦は『護衛艦』になりました。ただ、終戦から時間もたった1960年代ごろには、『戦車』のように元の呼び方に戻ったものもあります。おそらく国民の理解を得たからでしょう」
     
     現在、自衛隊で使われている言葉には、時代の変遷の中で変わったもの、変わらないもの、元に戻ったものがあり、それらが混在しているから読みにくいのだ。

    菊池雅之氏

    【菊池雅之氏】
    軍事フォトジャーナリスト。危機管理をテーマに警察や海上保安庁、消防士も取材。著書に『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)などがある

    <文/真嶋夏歩(用語解説)> 

    (MAMOR2024年6月号)

    自衛隊de脳トレ!国防知識を増やせ

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

    This article is a sponsored article by
    ''.