日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今月は佐賀県背振山分屯基地の「だぶ汁」を紹介します。地元で伝承されている郷土料理で、鶏肉と野菜のあっさり汁物。古里を思わせる、おふくろの味です。料理名の由来も必見!
玄界灘の領空を守る背振山分屯基地

背振山分屯基地は、周辺空域を警戒監視するレーダーサイト。写真は佐賀平野をバックに隊員が撮影した夜の風景
航空自衛隊背振山分屯基地は、佐賀県と福岡県にまたがる脊振山系に位置し、最も高い山である脊振山の山頂にレーダー基地を有しています。
標高は1055メートルで、九州とはいえ、冬の気候は厳しく、例年積雪が観測されます。西部航空方面隊司令部などが配置されている空自春日基地(福岡県)の分屯基地として、開設68周年を迎えます。
主な任務は警戒監視、弾道ミサイルの追尾などで、昼夜を問わず、玄界灘の領空を守り続けています。
じんわり優しい味わい「だぶ汁」
今回紹介するメニューは地元の郷土料理である「だぶ汁」。地域や家庭、慶弔によっても材料、切り方、調味料などに違いがあるそうですが、隊員食堂風はいたってシンプル。
具材は全て1センチメートルの角切りにし、昆布と和風顆粒だしの素でだしをとり、しょうゆ、みりん、塩で味付けします。色を付けずに仕上げたいので、しょうゆは薄口しょうゆを使ってほしいとのこと。名前の由来どおり、汁気は“だぶだぶ”とした感じがよいので多めで大丈夫です。
具材はほかにダイコン、コンニャク、焼き豆腐、カマボコを使っても。だしは九州で一般的なあごだしに、花麩はかわいらしい手まり麩に、長ネギは万能ネギに変えてもOK。また、水溶き片栗粉を加えて少しとろみをつけたりするなど、飽きのこないよう、変化をつけているのだとか。
季節に関係なく提供されていますが、寒くなると頻度は高くなります。合わせるメイン料理は魚の照り焼き、鶏の唐揚げ、サンマの塩焼きなどだそうです。
隊員たちの感想は?

隊員食堂で、和気あいあいと食事をする隊員たち。隊員食堂一面の大きな窓からは、佐賀平野を一望でき、季節によってさまざまな景色を眺めることができる
「具材が細かく切られていて、食べやすいです。冬の寒さが厳しい当基地にぴったりのメニューで、心も体も温まります」【2尉/男性・40代】
「だしの効いた懐かしい味付けで、野菜もたっぷり取れてうれしい1品。ほっこりする「母の味」のような汁物です」【2曹/女性・40代】
「がっつりとした肉料理がメインのときに、添えられていることが多く、野菜のうまみがとりわけおいしく感じられます」【士長/男性・20代】
「おいしかったよ」と直接言われるとうれしい
【航空自衛隊 背振山分屯基地 第43警戒隊給養係 空士長 松下真尋】
2022年の入隊ですので、まだまだ勉強の日々ですが、自分が調理したご飯を食べた隊員から「おいしかったよ」と直接言われることがとてもうれしいです。
現在、3人のシフト勤務で調理を行っており、月数回、栄養士から提案される新メニューに奮闘中です。今後、数カ月に1度は、われわれ給養員がランチメニューを考えて提供することになりましたので、1人でも多くの隊員に笑顔になってもらえるよう頑張ります。
調理とは関係ありませんが、憧れのブルーインパルスをいつか間近で見てみたいです!
「だぶ汁」のレシピを紹介

※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました
<材料(2人分)>
鶏もも肉または鶏こま切れ肉:50g
サトイモ:1個
ゴボウ:1/5本
レンコン:中1/4個
ニンジン:2〜3㎝
厚揚げ:1/4丁
花麩:8個
[A]
だし昆布(5×5㎝):1枚
和風顆粒だしの素:小さじ1/2
[B]
薄口しょうゆ、みりん:各小さじ1/2
塩:少々
長ネギ(小口切り):適量
<作り方>
1:鶏肉(こま切れ肉の場合はそのまま)、サトイモ、ゴボウ、レンコン、ニンジン、厚揚げは全て1cmの角切りにする。
2:花麩は表示どおりに戻し、水気を絞る。
3:鍋に水3カップ(分量外)とAを入れて火にかけ、だし汁を作る。
4:昆布を取り除いた3に1を入れ、材料がやわらかくなるまで煮込み、Bを加えて味付けする。味見をしながら塩を少しずつ加えるとよい。
5:4に2を加えて器に入れ、長ネギをのせる。
だぶ汁とは?
佐賀、福岡県の郷土料理で、鶏肉と旬の野菜を使った具だくさんの汁物。
煮くずれしやすい食材は使わず、水をたくさん入れて“ざぶざぶ”に仕上げることから、“ざぶ”がなまって、“だぶ”と呼ばれるようになったとされる。にごりのない澄んだ汁が特徴。
冠婚葬祭など人が集まるときに作ることが多い。地域、家庭によって味付けは異なり、慶事では具材を四角や短冊に切り、弔事では三角に切るなどの風習も残る。
(MAMOR2024年6月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/星 亘(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです