今年のパリオリンピックに焦点を当て、毎日練習に励む自衛隊体育学校所属のアスリートを紹介します。
日本の活躍を祈り、みんなで応援しましょう!
【カヌー(スプリントカヤック) 青木瑞樹 3等陸曹(福島県出身)】
2002年生まれ、福島県出身。3人兄弟の長男で、兄弟全員がカヌーに取り組んでいる。オフの日は、寝て過ごすことが多い。会ってみたい人は、漫画『ONE PIECE』が大好きなので、その作者の尾田栄一郎。カヌーをしていなかったら理学療法士を目指していたかも
種目解説「カヌー」
1936年のベルリン大会より、オリンピックの正式種目として採用。流れのないコースで横一線に並んでスタートを切り、着順を競う「スプリント」と、流れのあるコースに設置されたゲートを順番通りに通過しながらタイムを競う「スラローム」がある。
さらに、両端にブレード(水かき)の付いたパドル(かい)を用い、座ってこぐ「カヤック」と、片端のみにブレードが付いたパドルで、片膝をついてこぐ「カナディアン」に分かれる。なお、スプリントは200m、500m、1000mの3つの距離で実施。設置されたレーンからはみ出すと、失格となる。
ターニングポイントとなった日本選手権大会
9つのレーンに横一線に並んでスタートを切り、ゴールまでの着順・タイムを競うカヌースプリント。
勝利をつかむには、体力だけでなくレースでの駆け引きや天候への対応も重要な要素となる。屋外スポーツ特有の難しさもあるが、青木3曹は競技の魅力を「自然の中で楽しみながらこげる。それがカヌーの醍醐味です」と話す。
その言葉どおり、青木3曹は福島県の自然に恵まれた環境で育った。友だちに誘われ、カヌーを始めたのは小学2年生のころ。幼いうちから身近にカヌーができる環境があり、中学からは本格的に競技に取り組み出した。するとすぐに頭角を現し、年代別では全国大会決勝で戦えるレベルにまで急成長する。
ターニングポイントとなったのは、高校2年生のときに出場した日本選手権大会だ。
「シニアの大会で日本代表入りを果たし、結果を残すことができました。それまではオリンピックを意識したことはありませんでしたが、東京2020オリンピックを目指そうと思えたんです。自分の未来が見えて、大きな自信になりました」
高校卒業後はスーパー高校生枠(注)で、競技に専念できる自衛隊体育学校への入校を決める。
「設備も整っていますし、コーチも手厚くサポートしてくれて、入校して本当に良かったです。また、レベルの高い選手がそろっていて、刺激を受けながら練習ができています」
(注)基礎教育や部隊配属など約1年間の課程が免除され、直接体育学校に入れる制度は従来20歳以上が対象だったが、選手の早期発掘、育成のために、18歳以上に変更され、2015年より高卒アスリートが1年目から競技に専念できるようになった
成長すれば五輪で勝つ自信はある。パリ五輪はロス大会への布石
その後は、毎年自己ベストを更新し、1年ごとに着実に成長。2023年9月に行われた日本選手権大会では、1000メートルシングルにおいて、2年連続優勝を飾った。
「実力が出せれば優勝できると思っていましたし、連覇できて良かったです」
次なる目標は、4月のアジア選手権でパリオリンピック出場内定を得ること。強みとする“持久力”を生かせる1000メートルには、絶対的な自信がある。
「1000メートルはしっかり実力を出せれば勝てると思います。平常心を忘れず、冬場のトレーニングの成果を生かせるようなレースがしたいです」
その先に見据えるのは、まだ経験したことがない、五輪の大舞台である。
「最大の目標は、28年のロサンゼルス大会です。ロスで勝てるように、まずは24年のパリ大会に出場して、五輪の雰囲気を感じ取りたいです。今のままの成長を続けていけば、五輪で勝てるタイムは出せると信じています」
自信を胸に力強く宣言した青木3曹。その未来に、大きな期待がかかる。
(MAMOR2024年4月号)
<文/ナノ・クリエイト 撮影/星 亘(扶桑社)>