日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?
ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は北海道八雲分屯基地の「八雲スパ」を紹介します。
パスタソースが2種類なので食べ進めるうちに味変すると評判!基地がある渡島半島を表現した盛り付けにも注目です。
太平洋と日本海の両方に面した基地「八雲分屯基地」
航空自衛隊八雲分屯基地がある八雲町は、北海道南西部の渡島半島の北部に位置し、「日本で唯一、2つの海を持つ町」で、太平洋と日本海の両方に面しています。
空自三沢基地(青森県)の分屯基地として、ペトリオットによる防空を主任務とする第20高射隊、第23高射隊が配置されています。敷地面積は東京ドーム36個分という広大さで、今年で創立47周年を迎えます。
2つの海をイメージした「八雲スパ」
今回紹介するメニュー「八雲スパ」は、10年ほど前に分屯基地司令が給養員にオリジナルメニューの作成を命じたことから考案されたもの。
2つの海を持つ八雲町にあることから、太平洋をイメージしたイカ入りブラウンソース、日本海をイメージした鮭フレーク入りホワイトソースの2種類のソースが特徴のパスタ料理です。
さらに盛り付けにも工夫を凝らし、ホウレンソウで渡島半島を、炒めたひき肉、みじん切りのらっきょう漬けで残雪を表現。
そして中央に当基地に見立てた地元特産のホタテ貝柱バターじょうゆソテーをのせて完成です。紹介レシピは簡略にしていますが、隊員食堂ではブラウンソースには炒めたマッシュルーム、ホワイトソースには生クリームまで入るのだとか。
労力を惜しまない手間のかかる調理、盛り付けのため、ひんぱんに提供することはできませんが、心を込めて1皿ずつ作るそうです。2種類のパスタソースの混ぜ具合で味も変わるため、最後までおいしく食べられると、楽しみにしている隊員も多いのだとか。
隊員たちに食べた感想を聞いてみた
「2種類あるソースを最初は1種類ずつ味わって、最後は全部を混ぜて味の変化を楽しみます。ホタテも肉厚でおいしい!」【2曹/男性・40代】
「刻んだらっきょう漬けがのっているのも、ほかでは味わえないパスタだと思うので、とても楽しみにしているメニューです」【3曹/女性・20代】
「最後まで飽きずに食べられるパスタ。味の異なるソースは単品でも混ぜてもおいしいです。次の提供が待ち遠しい!」【士長/男性・20代】
食品ロスのないよう、栄養バランスのとれた献立を
【航空自衛隊 八雲分屯基地 第20高射隊基地 業務小隊 1等空曹 栄養士 多田祐也】
岩手県出身で、2002年に入隊しました。10年間調理の仕事に就いていたのですが、栄養士の資格を取得できる空自の制度を活用し、現在は給養係長兼栄養士として勤務しています。
当分屯基地に配属されて7年目、若い人が多く、笑いの絶えない職場ですが、任務に関しては全員手を抜くことはありません。
1回の食事で食堂を利用する隊員は平均130人ほどですが、ほかの基地の高射部隊が定期的に訓練に訪れるため、人数の変動があり、その際も円滑に対処し、食品ロスのないよう、栄養バランスのとれた献立を考えています。
「八雲スパ」のレシピを紹介
<材料>
フェットチーネ:200g
合いびき肉:80g
タマネギ(みじん切り):小1/4個
ホタテ貝柱:2個
バター:10g
しょうゆ:適量
ホウレンソウ(ゆでて細かく切り、少したたく):30g
らっきょう漬け(みじん切り):3個
サラダ油、塩、コショウ:各適量
[ブラウンソース]
イカそうめん(刺身):40g
ドミグラスソース:60g
トマトケチャップ:大さじ2
おろしニンニク:小さじ1/2
[ホワイトソース]
鮭フレーク:30g
粉チーズ:大さじ2
牛乳:1カップ
クリームシチューの素(顆粒):30g
<作り方>
1:フライパンにサラダ油を熱し、合いびき肉とタマネギを入れて炒め、塩、コショウし、取り出す。
2:1のフライパンにバターを溶かし、ホタテ貝柱を入れて両面焼き、しょうゆを回しかけて取り出す。
3:ブラウンソースを作る。小鍋にイカそうめん以外の材料を入れて温め、最後にイカそうめんを加えてさっと煮る。
4:ホワイトソースを作る。別の小鍋に全ての材料を入れて温める。
5:フェットチーネを表示どおりにゆで、湯をきって器の中央に縦長に盛る。中央手前にホウレンソウをのせ、中央奥に(1)とらっきょう漬けを散らし、(2)を真ん中にのせる。両サイドに(3)と(4)を別々に注ぐ。
注目食材「ホタテ貝柱」
刺し身やソテー、煮込み料理などさまざまな食べ方で楽しめるホタテ。貝殻、ヒモ、エラなどの部分を取り除いたものが「ホタテ貝柱」として出回っている。
ミネラルやビタミン類が豊富で、肝機能を高め、高血圧、高コレステロール、高血糖値を抑える効果が期待できる。漁業と酪農が盛んな北海道八雲町を代表する食材で、町の年間漁獲金額の7割以上を占める。
(MAMOR2024年3月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山田耕司(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです