国民の自衛隊に対する理解を深めてもらうことを目的に、1963年に初開催された「自衛隊音楽まつり」。主に音楽隊が脚光を浴びるイベントだが、舞台裏で運営を担うのも自衛隊員だ。イベントの企画や演出、写真や映像の撮影、舞台上での補佐役など、あらゆるサポートを隊員たちが実施している。
2020年と21年は新型コロナウイルスの影響で中止となり、22年は観客数が制限されたなかでの開催となった。
4年ぶりに制限なし、東京・九段にある日本武道館で11月16~18日の3日間・全7回(リハーサル公演含む)にわたる公演となった23年の音楽まつり。その舞台裏で全力を注ぐ隊員たち、本記事では特殊武器防護班にスポットライトを当ててみた。
特殊武器防護班:CBRNテロに備えて万全の態勢で待機
音楽まつりには2日間で約3万人が来場する。多くの観客や来賓が集まり、注目されるイベントで懸念されるのは、テロの攻撃対象とされることだ。
そこで、最悪の事態の発生に備え、万全の体制で演奏会に臨むため、特殊武器防護班が編成されている。どのように備えているのか紹介しよう。
安全なイベント開催のため特殊武器防護班を編成
イベント開催時に想定されるテロのなかで最も危険なのが、CBRN(生物・化学・放射性物質・核)による攻撃だ。
音楽まつりの開催にあたってはそれらへの対策のため、陸自の中央特殊武器防護隊から特殊武器防護班を編成。
万が一の事態に対処するため、公演が開催される期間中、会場の内外で同班の隊員たちが待機している。除染を担当する熊田周作1等陸曹はこう話す。
「1日3回の公演が2日間ありますが、その全ての回の開演前に観客席を回り、検知器材・測定器材を使って危険な物質が会場にないかチェックします。とくに今回のような閉鎖空間では、危険な物質が流動する可能性がある場所を重点的にチェックします」
会場の皆さんに安心して公演を満喫してほしい
公演中は、館内の控室、会場の内外で隊員が待機している。
「CBRNに関わる状況発生時には、できるだけ早く対処しなければなりません。現場の被害状況を確認し、それに基づいて除染要領を決め、除染に取りかかります。どのような物質で、どのくらいの規模で汚染されているのかを班長が把握し、必要な薬剤などを決めて除染をするわけです」
同時に、汚染された人がいる場合には近くの安全な区域に誘導し、汚染された着衣の除去などの除染も行うという。
「CBRNという目に見えないものへの対応は私たちに任せてもらって、会場の皆さんには安心して公演を満喫してほしいですね」
(MAMOR2024年3月号)
<文/魚本拓 写真/江西伸之>