• 画像: 写真提供/防衛省

    写真提供/防衛省

     自衛隊には、指揮官を補佐する「副官」という任務があるが、一般的にはあまり知られていないのではないか?

    「副官」とは、軍隊において司令官などの指揮官を補佐する将校(自衛隊でいう幹部)のことを指し、主に事務的な仕事を担うとされている。副官の具体的な業務は規定されておらず、部隊の本部、総務部署などに属する形をとっていることが多いが、直接の上司は指揮官本人のみであり、指揮官の指揮統制に従って動く。

     副官という任務の重要性ややりがい、指揮官のポジションによって変わる任務内容に加え、副官は何を学び、この先の自衛官人生でどう生かせるのか。詳しく「副官」を掘り下げるために、司令官と副官の双方から話を伺った。

    指揮官「副官を極めるのではなく経験を今後に生かしてほしい」

    【指揮官 鈴木康彦 空将】
    第50代航空総隊司令官。F-4のパイロットとして活躍。第83航空隊司令兼那覇基地司令、南西航空方面隊司令官、統合幕僚副長などを歴任、2023年3月より現職

     副官は自衛官としての特技・職種ではないため、副官のプロになる必要はなく、この配置で得た経験を生かして自己の成長に結びつけてくれれば十分だと考えています。私にとって副官は、あくまで指揮官を支えてくれるいろいろなスタッフの1人であり、特別な存在ではありません。とはいえ、将来的にも関係性が続くことの多い間柄でもあります。

     これまで、私自身いろいろな立場で、計10人ほど副官についてもらいましたが、総じて事務処理能力の高い人材が副官に充てられると感じています。重松3佐については、真面目で、常に真剣に物事を捉えている点を評価しています。副官は「勉強の配置」。幹部自衛官といえども、日ごろから将官と話ができ、部隊視察などに同行できるポジションはほかにありません。

     自衛官として見聞を広められるチャンスです。将来は自衛隊を引っ張っていける人材になってほしいですね。

    副官「副官の役得は見聞を広められること。先んじて行える副官になりたい」

    【副官 重松 紀 3等空佐】
    特技は航空管制で、千歳(北海道)・入間(埼玉県)両基地の管制隊防衛大学校の教官、府中基地(東京都)の航空保安管制群本部などで勤務。2023年4月より現職

     貴重な経験ができ、自分の視野を広げられるチャンスだと考えて副官を拝命しました。実際に副官になってみると、部外者の訪問やほかの基地への出張が想像よりも多く、準備や調整が大変でした。しかし、いろいろな場所に随行でき、これまでに見られなかった場所を見ることができるのは、副官の役得かもしれません。

     日ごろ心がけているのは、司令官の思考が断絶しないようにすること。司令官の判断は、国防に大きく影響します。副官は、司令官が雑事に時間と労力を割かれないよう、サポートをするのが仕事です。

     例えば幕僚から多数上がってくる報告の処理です。幕僚は皆、一刻も早く報告したいと考えていますが、司令官にそのまま上げてしまうと、司令官の思考を中断させてしまいます。副官が交通整理をすることで、各幕僚と協調して任務が果たせるようにしています。

     私の理想の副官像は、司令官の思考を先読みし、言われる前に先んじて行える副官。そのためにも、もっと航空総隊司令部のことを知らなければならないと考えています。鈴木司令官は、懐が深く、とても仕えがいのある上司です。身近で司令官のスタンスを学べることが喜びの1つです。

    (MAMOR2024年2月号)

    指揮官を支える自衛隊・副官という任務

    <文/臼井総理 撮影/村上淳 写真提供/防衛省>

    ※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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