日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?
ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は目黒基地の「東京おでん」を紹介します。
カツオ節と昆布で丁寧にとったおでんだしがおでん種にしみて美味。滋味深いやさしい味わいです。
歴史の始まりは徳川幕府の時代までさかのぼる「航空自衛隊目黒基地」
航空自衛隊目黒基地は、東京都目黒区にあり、統合幕僚学校、陸上自衛隊教育訓練研究本部、海上自衛隊幹部学校、航空自衛隊幹部学校のほか、防衛装備庁艦艇装備研究所などが所在。
1857年に徳川幕府が砲薬製造所を設立したのが始まりという古い歴史があります。陸・海・空各自衛隊のさまざまなユニフォーム姿の隊員および職員が各任務に取り組んでいます。
地産地消メニューとして誕生した「東京おでん」
今回紹介する「東京おでん」は、地産地消メニューとして隊員食堂で考案されたもの。おでん種として人気の高いダイコンは、東京世田谷産の「大蔵大根」を使います。
栽培しやすい青首ダイコンの登場で、一時衰退したのですが、2002年ごろから本格的な栽培が復活したそう。
先端まで同じ太さの円筒形のため、輪切りにしたときに大きさがそろうとのこと。葉の付け根まで白いのも特徴です。そのほか江戸川区や墨田区のおでん種専門店の自家製カレーボール、紅ショウガ天など、東京のおでんらしい練りものを入れています。
おでんの起源は田楽がルーツといわれていますが、現在のような煮込み式おでんを始めたのは明治時代の文京区本郷の店という説があります。1984年ごろまでは下町の駄菓子店に子どものおやつとして、もんじゃ焼きとおでんがあったのだとか。
隊員食堂のおでんつゆはカツオ節と昆布できちんと丁寧にとっただしを使用したしょうゆ風味です。多彩な具材はそれぞれ食感や味わいが異なり、つゆも残さず最後まで楽しく食べられます。
隊員たちの感想は?
「初めて食べたカレーボールがホクホクで、ご飯が進みました!ダイコンもやわらかくておいしかったです」(2曹/男性・30代)
「しょうゆベースの味わいに、大蔵大根、カレーボール、紅ショウガ天などの多彩な具材が楽しめるのが東京おでんの魅力!」(1曹/男性・40代)
「ダイコンは大きくカットされていましたが、中までしっかり味が染み込んでいておいしかったです。具材も豊富で楽しめました!」(事務官/女性・40代)
「食べる側の気持ちに立って」心を込めて料理する
【航空自衛隊 目黒基地 幹部学校業務部 業務課給食班栄養担当官 防衛技官吉田貴子】
東京の下町生まれ。自衛隊の食堂の献立作りをしてみたくて、栄養士の資格を取得し、1995年に入隊しました。当基地は航空自衛隊で唯一、陸・海・空各自衛隊の調理員による共同提供であることが特色です。多いときで500人が利用します。
入隊当時の上司の指導により「給食はサービス業、食べる側の気持ちに立って」をモットーに、「地球が終わってしまう最後の日の食事だとしても満足してもらえるように!」と大きな目標を持って研さん、精進の日々。
女性隊員も増えてきたので、さっぱり味のラーメンなども開発しています。
「東京おでん」のレシピを紹介
<材料(2人分)>
ダイコン(2㎝厚さの半月切りまたは輪切り):1/4本(300g)
コンニャク(アク抜き済み・三角に切る):1/2枚
チクワブ(斜め切り):1/2本
結び昆布:4本
<A>
ハンペン(三角に切る):1枚
ゲソ巻き:2本
カレーボール:2個
紅ショウガ天:4個
焼きチクワ(斜め切り):1/2本
ゆで卵:2個
練りがらし(好みで):適量
[おでんつゆ]
水:6カップ
カツオ節:ひとつかみ(20g)
だし昆布:1枚(10㎝)
和風顆粒だしの素、昆布顆粒だしの素:各小さじ1
しょうゆ、酒:各大さじ1
塩:小さじ1/2
<作り方>
1:ダイコンは米のとぎ汁で30分ほど下ゆでする。
2:おでんつゆを作る。鍋に水、カツオ節、だし昆布を入れて沸騰させ、火を止めてカツオ節が沈んだらザルでこし、だしをとる。そのほかの調味料を加えて温め、味見をして薄いようなら塩を足して味を調える。
3:(2)に(1)のダイコンとコンニャク、チクワブ、結び昆布を入れて煮る。
4:ダイコンがやわらかくなったら、Aの材料を加えて少し煮、温まったら器に盛り、好みで練りがらしを添える。
注目食材:チクワブ、カレーボール
どちらも東京ならではのおでん種で、明治時代に登場したと考えられる。チクワブは小麦粉を水または塩水で練り、棒に巻きつけてゆでたもの。おでんのだしがしみ込み、もちもち、じゅわっとしたおいしさが楽しめる。
カレーボールは魚のすり身にカレー粉を混ぜて団子状にし、油で揚げた、子どもにも人気の練りもの。主に東京の下町エリアで親しまれている。
(MAMOR2023年12月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/星 亘(扶桑社) 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです