自衛隊には数多くの部隊があり、中には自隊のテーマソング「隊歌」を持つ部隊もあります。
その歌詞を読むと、国を、地元を愛する気持ち、家族、仲間を想う気持ちが表されて、各隊員の心意気が伝わってきます。そんな隊歌にあなたも触れてみてください。
今回は、神奈川県横須賀市の陸上自衛隊武山駐屯地に所在する「陸上自衛隊高等工科学校」の校歌をご紹介します。
陸上自衛隊高等工科学校とは…
神奈川県横須賀市の陸上自衛隊武山駐屯地に所在する、防衛大臣直轄の教育機関で、中学校を卒業した10代の男子を対象に、将来陸上自衛官となるべき者を養成する学校。
3年制で、高等学校卒業資格の取得が可能。全寮制だが、寮費や学費は無償で、所定の手当が支給される。2010年に陸上自衛隊少年工科学校から改編された。
「高等工科学校校歌」の歌詞を紹介
一
希望に燃えて溌剌と 高鳴る血潮胸に秘め
ここ武山に集い来て 心と技を鍛えつつ
いざ諸共に励まなむ 我等は少年自衛隊
二
仰げば遥か富士の嶺 洋々寄する黒潮の
波静かなる相模湾 陽光燦と輝きて
意気高らかに健男児 我等は少年自衛隊
三
鎌倉武士の功績を しのぶ衣笠大楠(1)の
山頂望み若人の 理想は高く道嶮し
友よ手を取り歩まなむ 我等は少年自衛隊
四
風雨に耐えて健やかに 伸び育ちたる若桜
咲き出る色は変るとも(2) 心は一つ日本の
御国の護りゆるぎなく 我等は少年自衛隊
「高等工科学校校歌」の歌詞を解説
(1) 三浦半島最高峰(標高241メートル)の大楠山のことで、高等工科学校から山頂まで見渡すことができる。
(2) 将来の進路(任地や職種)はバラバラになるけれど、の意味。武山の地で3年間を共に生活してきた同期生が全国に散らばっていく様を描写。
伝統を継承したい思いから歌い継がれる校歌
「学校史に1959年に作詞という記載が残るため、当歌が作られたのも同じころと推測されます」と答えてくれたのは、現在、高等工科学校職員の簑田祥二郎3等陸佐だ。
2010年に少年工科学校から高等工科学校に改編されたが、「伝統を継承したい」と望む声が大きく、変わらず歌い継がれているという。
作詞、作曲者はともに陸自OB。「武山周辺の景観と青年の描く理想と現実との相克、純粋な心情、同期生愛などを表現した」と語るのは作詞者の原田氏。
「若い生徒たちが元気に歌いやすいようにピッチを高くした」とは作曲者の米本氏の言葉だ。
高等工科学校の新入生は、4月1日に着校すると、約1週間後の入校式に校歌を歌えるようさっそく練習をするのだとか。
在校生は、月1回の生徒会朝礼や卒業式で歌い、卒業生もまた、OB会などで、老若問わず肩を組んで歌うそう。
自身も少年工科学校の卒業生という簑田3佐いわく、現役生徒にとっては、将来に思いをはせる励みとなる歌、OBにとっては、3年間の思い出を振り返り、今の自分を奮い立たせてくれるという歌を、ぜひ聴いてみて!
(MAMOR2023年11月号)
<写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです